日豪サッカー新時代(NAT)第97回「主役」

第97回 主役
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

試合当夜と翌朝は、ちょっとした「Tasuku Sekiya」のメディア・ジャックだった(画像作成:筆者)
試合当夜と翌朝は、ちょっとした「Tasuku Sekiya」のメディア・ジャックだった(画像作成:筆者)

“Who’s Honda? We have Sekiya!!”

8月21日の夜、FFA杯(日本の天皇杯に相当)での番狂わせの後、APIAライカート(NSW州1部、豪州2部相当)のフェイスブック・ポストに書き込まれたコメントだ。間違いなく、その夜の主役は「Keisuke Honda」ではない方の日本人だった。

8月号で、「本田圭佑、豪州降臨!?」なんて書いてから1カ月。既に日本のレジェンドはメルボルン・ビクトリーの一員となっている。今回のAPIAライカート対メルボルン・ビクトリー戦は、そのデビュー戦かと注目されたが、合流間もない本田は遠征に帯同せず、デビューは持ち越された。レジェンドの不在もあって、その夜の主役の座に躍り出たのがAPIAライカートの関谷祐(25)だった。

試合前日、「注目が集まる1戦で、チームのために活躍して個人としてもアピールしたい」と意気込みを語っていた関谷。自らの2得点で、3-2と強敵を下したチームの文句なしのMVP級の活躍を見せて、本人も驚くほどの好結果を引き寄せた。

本田来豪後、一部メディアが今回のFFA杯の試合が本田のデビュー戦となり、そこで「日本人対決」が実現する可能性があると報じた。それもあり、関谷の元には試合前から多くの反響が届いていた。そして、その注目の1戦で2得点の大活躍を見せたことで、試合後にも更なる反響があった。これもまた目に見えぬ「本田効果」なのだろう。

番狂わせの主役を演じた直後にもかかわらず、試合後に再び話を聞いた関谷に驕(おご)りはなかった。ただ、試合前のインタビューと違って「Aリーグのチャンピオンと肌を合わせて、さすがと感じるところもあったけど、十分に通用すると思うところも多かった。チームメイトや関係者も『お前なら、Aリーグでやっていける』と言ってくれているし、その選択肢も考えたい」とAリーグへの“色気”を隠さず、はっきりと自信をのぞかせた。

今回は、本田が遠征に帯同しなかったことで、ピッチ上での顔合わせは実現しなかった。お預けとなってしまった対戦は、もしや、10月に迫るAリーグの舞台に持ち越されたのかもしれない。そんな夢を見るには十分すぎるほどの実力を発揮する絶好調の関谷なら、Aリーグ・クラブへの練習参加のチャンスをつかんだとしても驚かない。少なくとも、話題の某陸上選手なんかより、余程、リアリティーがある話だと思うのだが。


【うえまつのひとり言】
Aリーグが軽んじられているようで、この話題には正直触れたくない。ゴスフォード界隈で繰り広げられる「ボルト劇場」だ。育成クラブとして有名なCCMがやったのもショックだが、慢性的財政不安の小クラブでは抗えない誘惑だったのか。あとは、きっちり「実力不足」で後腐れなく騒動に幕引きを図って欲しい。

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