第46回 NAT 引導

 

第46回 引導

文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

5月14日、アンジ・ポスタコグルー監督が6月のW杯ブラジル大会に向けてのサッカルーズ候補選手30人を発表した。

日本でのW杯の代表発表は、いつからか“サプライズ”の有無がお約束になって久しい。したがって、サッカルーズの発表もそういう観点から見てしまいがちだが、今回、特に大きなサプライズはなかった。いずれにしても、メンバー構成などの詳細は本紙のW杯特集に譲ろう。


失意のルーカス・ニール。グリーン&ゴールド姿も見納めか(FFA提供)

ここでは、今回不選出の2人のベテランについて書く。その2人とは、ポスタコグルー監督に特例で事前に不選出を通告された前主将のルーカス・ニール。そして、今季から豪州に戻り、シドニーFCで非常に良いパフォーマンスを見せたものの選ばれずに不満を露わにしていたサシャ・オグネノブスキ。

正直に言えば、ポスタコグルーは彼らを選ばないであろうと予想はしていた。しかし、ディフェンスの要と期待されたDFリース・ウィリアムズをケガで欠き、精神的な支柱となり得る経験豊かなベテランの必要性を唱える向きもあり、この2人のいずれかが選ばれる可能性はゼロではなかった。

しかし、ポスタコグルー監督に迷いはなかった。豪州復帰後、安定したパフォーマンスを見せるマシュー・スピラノヴィッチをDF陣の柱に据えようという意図を隠しはしない。25歳のスピラノヴィッチが引っ張る守備陣は、22歳のGKマット・ライアン、左右のサイドバックは22歳のジェイソン・デービッドソン、26歳のイヴァン・フラニッチ、センターバックにはスピラノヴィッチと24歳のライアン・マクゴーワン、といったかなり若い顔ぶれが予想される。

今年、35歳のオグネノブスキは言う。「代表には経験が必要だ。W杯のような舞台なら、なおさら。監督はその経験を重視しないリスクを取ったんだから、それを我々は受け入れないとね」と皮肉たっぷり。36歳のニールは、ポスタコグルー監督が言うところの「キャリアをリスペクトして」の事前通告だったが、未だに一切の反応を公にせず沈黙を守っている。

ポスタコグルー監督の大胆な世代交代策の波に呑みこまれ、事実上、代表引退の引導を渡された2人の経験豊かなベテラン。

彼らの願いむなしく、ブラジル行の夢は叶わなかった。自らに引導を渡した指揮官が率いるサッカルーズの戦いぶりを彼らは、いったいどんな気持ちで見守るのだろうか。


【うえまつの独り言】

女子W杯出場権を懸けた女子アジア杯で”日豪戦”が戦われた。前大会の覇者でもあるマチルダス(豪女子代表の愛称)となでしこジャパンの対戦は、2−2の痛み分け。男子同様、日豪両国間に健全なライバリー醸成の兆し。うん、良いことだ。

 

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