第52回 NAT 成熟

 

第52回 成熟

文・植松久隆 Text: Taka Uematsu


試合後のミッチ・ニコルズ。ブリスベン時代からの久々の対面だったが、充実感に満ちあふれていた(筆者撮影)

11月18日、大阪のヤンマースタジアム長居(長居陸上競技場)での日豪戦。ほぼ満員の46,312人が詰めかけたスタジアムは、アジアのサッカー界で互いをライバルと認め合う日豪両国が真剣にぶつかり合う好試合に沸いた。

日豪のサッカー関係を発信することを生業にする身として、第3国で開催されるものを除く日豪戦のすべてを現地で観戦することを自らに課してきた。そのこだわりもあったので、長居のスタジアムの記者席で試合を見守った。

今回は、地上波ABCの試合中継で観戦したという人も多いだろうし、試合内容の詳細には、ここでは触れずに簡単な試合の経緯だけに留めよう。

ホンジュラス戦で6得点を上げた日本の鮮やかな攻撃シーンの残像が強くあった豪州にしてみれば、「日豪戦での一方的な展開は避けたい」という思いがあった。しかし、試合を通じて、予想以上に均衡したゲームとなった。

前半、日本の良さを消すことに成功した豪州。あらかたの予想を覆して同等かそれ以上の戦いぶりで前半を終えた。後半に入って、日本のアギーレ監督が動いた。前半の推移を見た上で遠藤保仁(ガンバ大阪)に代えて、今野泰幸(同)を投入。この采配がハマって、後半15分・今野、同23分・岡崎慎司(マインツ)の連続ゴールへと繋がる。

これには、サッカルーズのアンジ・ポスタコグルー監督も黙ってはいられない。温存していたエースFWティム・ケーヒルを投入。そのケーヒルが、試合終了間際に得意の滞空時間の長いヘディングで一矢を報いた。結果的に2-1で終了した今回の試合、ピッチ上の選手の動き、そしてテクニカル・ゾーンでの監督同士の駆け引き、そのいずれをとっても、非常に見応えがある好試合だった。

「日豪戦」というフレーズを頻繁に使用して、ある程度人口に膾炙(かいしゃ)させてきたとの自負がある。そして、今回の試合では、この「日豪戦」で見られる健全なライバル関係が、成熟の域に入ったなと強く感じた。日韓戦のような無用な緊張や遠慮、相手の無益なラフプレーは存在しない。純粋培養のライバル関係が、しかもアジア最高のレベルで育っている。

その日豪戦のたびに感じることがある。それは、両国が1年おきに交互にホームで開催する「日豪定期戦」の実現の必要性。成熟したライバル関係をより発展させるためにも、そろそろ真剣に考えるべきとの思いを改めて強く持った。


【うえまつの独り言】
日豪戦の夜の大阪・長居。寒かった。でもスタンドは熱かった。20代の頃、国立競技場のゴール裏で歌ったチャントがまだ歌われているのには驚いた。豪州の選手紹介、先発を外れたケーヒルと、セレッソに籍が残るニコルズへの声援がひときわ大きかったのが印象的。

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