第53回 NAT 迷走

 

第53回 迷走

文・植松久隆 Text: Taka Uematsu


昨季、2強としてAリーグをリードしたロアとWSWは共に低迷。写真は、昨年 のGFで勝利を喜ぶベサート・バリシャ(現・メルボルンⅤ)

昨年12月3日のウエスタン・シドニー・ワンダラーズ(WSW)対ブリスベン・ロア戦をテレビ観戦した。この両クラブは、言うまでも無く、昨季のリーグ戦、ファイナル・シリーズともにタイトルを激しく争った「2強」。しかし、今季は、ともに強かった昨季の面影は全く無い。今季初の2強の再戦を前にして、誰が、これほど低調な両軍の顔合わせを予想しただろうか。12月15日時点で、ロアが勝ち点10で6位。WSWは試合消化数が1試合少ないものの、9試合で3分け6敗と勝ちが無い最悪の状態で最下位に低迷している。

WSWの現況は、とにかく目を覆うばかりだ。ACLを制した「アジア王者」の貫録は完全に消え去った。ACLの影響で、3第節から9節までの7試合を1カ月で消化する(ほぼ4日に1回で試合するペース)過密日程をこなさなければならなかったことを差し引いても、内容に余りに見るべきものが無い。ACL制覇の“燃え尽き症候群”は、思いのほか重症と言わざるを得ない。

さらには、クラブの経営陣と選手の間に、ACL制覇で出場権を得たクラブW杯(モロッコにて現地時間12月10日に開幕)の参加賞金の配分を巡っての深刻な対立が表面化。一時は、選手側がクラブW杯出場をボイコットする姿勢を見せた。そのクラブW杯では、北中米カリブ海王者のクルス・アスル(メキシコ)に先制しながらも試合終了直前に追いつかれ、延長戦後半で2失点という悔しい負けを喫した。

ロアは、監督交代の劇薬が多少の効果を見せて、一時期の低空飛行から持ち直しつつある。しかし、シーズン真っただ中に、キャプテンのマット・スミスがタイに移籍するために退団。昨季のファイナル王者の監督とキャプテンのいずれもシーズン途中で退団するという異例の事態を招いた。監督交代での選手起用の変化、ケガの離脱などもあって、第10節のスターティング・メンバーで、昨季のグランド・ファイナルのキック・オフ時にピッチに立っていた選手は、わずか4人を残すのみ。これはまさに、昨季以来、クラブがどれだけの変化に直面してきたかの証左であろう。新任のフランス・タイスン監督代行の積極的な若手起用もあって、来季以降の光明は少しずつだが見えてきたのは明るい材料だ。

かつての「2強」の迷走で俄然、混戦模様の熱戦Aリーグだが、年明けはアジアカップで小休止。豪州サッカー界は、いよいよアジア・カップ・モードに突入する。


【うえまつの独り言】
アジア・カップが、もうすぐに迫っている。盛り上がり? うーん、どうだろう。サッカー関係者にはそれなりの高揚感はある。メディアでの露出も増えてきた。でも、一般レベルでの盛り上がりとなると、正直、微妙…。ということで。皆さん、張り切って盛り上げましょう!

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