第58回 QLD こころ

 

第58回 こころ

文・植松久隆 Text: Taka Uematsu


浦和レッズ・ハートフルクラブのキャプテン落合弘(左)と現地日系コミュニティーとの橋渡しに尽力した三上隣一(右)(筆者撮影)

5月初旬、Jリーグ屈指のビッグ・クラブの浦和レッズが遠征してきた。それと時期を同じく、ブリスベンの地を“もうひとつの浦和レッズ”が駆け回っていたことを読者諸兄はご存知だろうか。

浦和レッズのホームタウン・普及活動の一環で、国内外を問わず、長年、草の根のサッカー普及に取り組んできたのが浦和レッズ・ハートフルクラブ。そんな彼らが、今回の来豪の機会を捉え、現地日系コミュニティーの子弟を対象にサッカー・クリニックを行った。訪れた会場のピッチを見渡すと、子どもたちにははつらつとした笑顔が弾け、セッション中は彼らの歓声が途絶えることがなかった。それを見守る保護者の顔もほころび、ある母親は「今まで一番楽しそうにサッカーしてるみたい」と満面の笑み。

そんな様子をピッチサイドで見守っていたのが、浦和レッズのホームタウン普及部長である近藤伸一。彼によれば、ハートフルクラブは「ほかのJリーグのクラブには例を見ないレッズ特有のもの」。さらには、「毎回、冒頭で落合キャプテンが行う講話こそがハートフルクラブのこころ」とのことだ。

ハートフルクラブの“キャプテン”落合弘は、1970年代の日本代表の中心選手でキャプテンも務めた往年の名選手。先約の都合で取材開始が遅れ、代表キャップ63を誇るレジェンドの講話を聞き逃したことを悔やんでいると、「明日の講話を聴きに来ればいい」との加藤部長からの福音。急遽、翌日のセッションの取材許可を得た。

翌日、講話を聴くのを主目的に会場の現地校に足を運んだ。現地校の生徒が対象で通訳が入ることもあり「正味、いつもの半分くらいの時間(落合)」というこの日の講話。それでも、つかみから子どもたちをとらえて離さない内容には惹きつけられた。講話の後のセッションでは「仲間を思いやるこころ」がそこかしこで実践され、ピッチ上の至るところでまぶしいくらいの子どもたちの笑顔があふれるのが、ファインダー越しに確認できた。

今回、ハートフルクラブは3日で計5回のセッションで約350人の少年少女にサッカーを通じての“こころ”の重要性を教えた。子どもたちがサッカーの素晴らしさを知り、学ぶ、貴重な時間を創出する彼らの活動。そこには、僕らが知る、あの強い浦和レッズとは違う、心温まる(ハートフル)ような姿があった。そして、それも紛れなく浦和レッズというクラブの大事な一要素なのだから、その懐の深さを感じずにはいられない。(文中敬称略)


【うえまつの独り言】
連載開始以来5年が経とうとしているが、ひらがなだけのタイトルは今までにない。最近は、2字の熟語(まれに3字)のタイトルにこだわってきたが、今回取り上げる内容を語る時、自分のささやかなこだわりを捨て去るにためらいはなかった。

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