女子ラグビー・小野選手、平田選手インタビュー

今年6月に行われた女子ラグビーのナショナル・チャンピオンシップでは、QLD州でプレーする2人の日本人選手が州代表に選出され、地元出身のプレーヤーたちとともに熱戦を繰り広げた。日本ではまだ認知度が高いとは言えない女子ラグビーだが、2016年夏のリオ五輪からはセブンス(7人制の試合形式)が正式種目に採用されるなど、世界ではその裾野が広がりつつある。ラグビー強豪国の1つであるオーストラリアで、同じポジションでプレーする小野麻子、平田彩寧両選手に、女子ラグビーの魅力と選手としての活躍の様子をうかがった。

インタビュー・文=関和マリエ
写真協力=Rugby Angels(Web: www.facebook.com/RugbyAngels


University of Queensland Rugby Football Club
小野麻子選手

“キャプテンとして、州代表として、ラグビーを盛り上げ楽しみたい”

俊敏さ、体力、パスの精度が求められるスクラム・ハーフの小野選手、Ⓒ mcrowley
俊敏さ、体力、パスの精度が求められるスクラム・ハーフの小野選手 Ⓒ mcrowley

中学1年の時、父の勧めもあり女子ラグビー・ユース第1期の選抜試験を受けた小野さん。その後、ユースの活動、新設のワセダクラブ(ラグビー・スクール)での練習や青山学院中等部のラグビー部員として男子とともに試合出場経験などを積んだという。試合中のケガのリハビリをきっかけに理学療法やスポーツ医学に興味を持ったこと、海外でのプレーに惹かれたことから、高校2年でオーストラリアの地を踏んだ。この国でのラグビー選手生活は今年で9年目を迎える。

――クラブ・チームUniversity of Queensland Rugby Football Club(UQRFC)で18歳からプレーしながら、進学もされたそうですね。

「こちらで高校卒業後はQLD大学の、コーチやトレーナー、エクササイズ・フィジオロジストなどを目指す人が学ぶ『エクササイズ&スポーツ・サイエンス学部』で勉強しました。その間もラグビーは続けていて、週2回のチーム練習、土曜は試合、そのほかに個人トレーニングをしたり。よく『どうしてラグビーをやっているの?』と聞かれますが、純粋に楽しいからなんです。こちらに来たのはラグビーと勉強のためだから、やり遂げたい。クラブ・チームでは仕事や学業との両立は当たり前なので、仕事後にスーツ姿で練習場に来る選手もいますよ」

――日豪のラグビー・スタイルの違いとは。

「日本では坂ダッシュを数百本などつらい練習が多いのに対し、こちらではクオリティー重視の練習や、ゲーム形式のフィットネスなど、きつくても楽しいトレーニングが多いです。またプレー人口の少ない日本と違い、女子も男子と同程度の試合数を経験できます。楽しくてホームシックは最初から全然なかったです(笑)。チームのほとんどを占めるオーストラリアやニュージーランドの選手の体格に始めは圧倒されましたが、体が大きければフロント、小さければフランカーやウィングをやるなど、個々の能力を生かせるのがラグビーの魅力だと再認識しました。私はチームメイトから『DigiはNo.1アジア人だよ!』と言ってもらっています(※編注:Digiは小野さんのニックネーム)」

――QLD州代表としてナショナル・チャンピオンシップ(州代表対抗戦)に出場もされていますね。

「州代表選出はセブンスと15人制合わせて今回で4回目。クラブ・チームでは今年キャプテンを務めており、ほかの選手に教えることも自分の役割ですが、州代表選手はレベルが高いので純粋にプレーの楽しさを味わえました。試合としてはQLDは3位に終わってしまいましたが、勝つことへの意識が高い選手とプレーをするのは本当に楽しかったです」

――同ポジションの平田彩寧選手とのプレーはいかがでしたか。

「彩ちゃんとはクラブ・チームの試合で敵同士として戦ったこともありますが、一緒に試合に出て改めて、大きく成長していく選手だと感じました。英語でラグビーをやる戸惑いはまだあるのかもしれませんが、それを感じさせないくらいのびのびとプレーしていたのが印象的。同じ道を歩む数少ない日本人としてすごく嬉しいです。『日本でも一緒にプレーしたいね』と話しています」

――今後のご予定は?

「チームとしては7月にQLD州のトーナメント戦があり、UQRFCは準々決勝敗退、まもなくシーズン・オフを迎えます。私は今年9月から日本でリハビリ・ストレングス&コンディショニング・コーチとしての仕事が決まっています。ゆくゆくはまたオーストラリアに帰って来たいですし、彩ちゃんとプレーするのも楽しみですね」

小野麻子
(おのあさこ)
プロフィル

1990年生まれ、東京都出身。2007年よりクラブ・チームUniversity of Queensland Rugby Football Clubに所属し、現在キャプテンを務める。ポジションはスクラム・ハーフ、フライ・ハーフ。QLD大学卒業。


Sunnybank Dragons
平田彩寧選手

“日豪の架け橋として、ラグビーの楽しさを伝えたい”

オーストラリアでのプレー歴半年で州代表の座を掴んだ平田選手、Ⓒ mcrowley
オーストラリアでのプレー歴半年で州代表の座を掴んだ平田選手 Ⓒ mcrowley

平田さんは兄とともに小学3年生から男子のチームでラグビーを始めて10年目。男子との体力差に行き詰まったという中学時代、女子で唯一静岡県選抜に出場したことや、ポジションをウィングからスクラム・ハーフに変更したことを契機に再びラグビーの楽しさに目覚める。2016年のリオ五輪に向けて設立された島根県の石見智翠館高校の女子ラグビー部に入部し、ニュージーランドへのラグビー留学などを経験。その後、日本の実業団チームに所属したが、昨年再び海外でプレーする道を選んだ。

――いつごろから海外でのプレーを考えていたのでしょうか。

「実業団では、初めてお金をもらってプレーするという経験をして、良いプレッシャーの中で楽しめたと思います。しかし、高校生のチームと試合をして負けてしまったこともあったり…。留学当時のようにまたレベルの高い海外でプレーしたいという思いはずっとありました」

――なぜオーストラリアを選んだのでしょうか。

「ラグビーを通じて日豪の架け橋になりたいと思い、QLD州政府主催の『Gap Year』というプログラムに応募し、観光大使に選ばれました。昨年9月の19歳の誕生日に日本を出発し、観光大使としての仕事をしながら今年からSunnybank Dragonsというクラブ・チームに所属しています。体格面でタックルなどでは差が出ますが、体力はチームでも上の方でパスも上手いと言ってもらっています。最初はサインも指示も分からなくて苦労しましたが、今季全勝中のチームでプレーできるのはありがたいことですね」

――6月に出場されたナショナル・チャンピオンシップはいかがでしたか。

「州を背負っているというモチベーションの高さと、目立ってやろうという気持ちもあり(笑)、良いプレーができて楽しめました。UQRFCの日本人選手、Digiさん(小野選手)と一緒にプレーできたこともすごく嬉しかったです」

――小野麻子選手とはクラブ・チームとしては敵同士ですね。

「初めて会ったのは5月の試合中。試合が始まりスクラムになった時、同じポジションだったので日本語で『こんにちは!』と挨拶したのを覚えています。日本人のDigiさんがキャプテンとしてチームを引っ張り、時にはメンバーを怒ったり、しっかりコミュニケーションを取ってプレーする姿はとにかく格好良かったです。身長は161センチの私とそんなに変わらないと思うのですが、タックルもパワフル。州代表の時も、Digiさんはスクラム・ハーフとして、きれいに出なかった死に球もダイビング・パスですぐ生き球に変えていたりして、彼女のようなプレーヤーになりたいと思いました。また一緒にプレーできるように、Digiさんがオーストラリアにいない間もちゃんとポジションを守っておきたいです」

――オーストラリアのラグビーの魅力とは。

「人とラグビーの距離が近いことですね。TVで放映されていたり、公園で子どもがラグビー・ボールで遊んでいたり。皆がラグビーを好きなのが嬉しいです。一方で日本は女子の競技人口も少なく16年の五輪出場もまだ分からない状態。海外でプレーする日本人女子選手は五輪代表に選ばれにくいという土壌もありますし、私はオーストラリアでラグビーを続けたいです。スポーツ・マネジメントやフィットネスについて勉強しながら、ラグビーでもっと上を目指したいと思っています。そして、ここでの経験を日本の女子ラグビーに還元できるようになるのが目標の1つです」

平田彩寧
(ひらたあやね)
プロフィル

1995年生まれ、静岡県出身。2014年、QLD州政府主催プログラム「Gap Year」にて、日本代表の観光大使として来豪。クラブ・チームSunnybank Dragons所属、ポジションはスクラム・ハーフ。

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