インテリジェント・オートメーションに必要なものとは?(後編)

税務&会計 REVIEW

インテリジェント・オートメーションに必要なものとは?(後編)

EYジャパン・ビジネス・サービス・ディレクター
篠崎純也

プロフィル◎オーストラリア勅許会計士。2002年EYシドニー事務所入所。日系企業や現地の企業の豊富な監査・税務経験を経て、現在NSW州ジャパン・ビジネス・サービス代表として日系企業へのサービスを全般的にサポート。さまざまなチームと連携しサービスを提供すると共に、セミナーや広報活動なども幅広く行っている

自動化はいまやデジタル変革プログラムの主軸として欠かせないものとなっています。しかし、どのプロセスや業務を最初に自動化すれば良いのでしょうか? また、自動化によって不要となるのは「ヒト」ではなく、「役割」であることをどうすれば確実にすることができるのでしょうか?本稿では、ロボットやAIなどあらゆるテクノロジーを活用した、業務自動化の戦略策定から導入・実行までの包括的なアプローチであるインテリジェント・オートメーションに関するリポートの概要(後編)をご紹介します。

インテリジェント・オートメーションは、組織変革を推し進めようとしているリーダーにとって大きな可能性を秘めています。コスト削減に始まり、納期の短縮、新たなオペレーティング・モデルの導入、更には従業員がより価値の高いアクティビティーに専念できることなどが挙げられます。本稿では先月、「貴重な社内リソースで最大の長期効果を生み出すインテリジェント・オートメーションを実現するための3つの重要ステップ」のうち、2つを紹介しました。今月は3つ目のステップ、「Build/Buy/Partnerプランの策定」、について解説します。

Build/Buy/Partnerプランの策定

持続可能な自動化プログラムを導入するためには、ここで説明するBuild/Buy/Partnerのどのアプローチを採るかを検討する必要があります。この分野におけるテクノロジーの急速な進化を考えると、この点は限られた人材プールで変革を推し進めようとするリーダーにとって特に重要です。

Build:自社の人材を活用して自動化プログラムを開発する

自動化プログラムを開発し導入することができる人材へのアクセスは、リーダーが常に頭を悩ませている問題です。企業幹部200人を対象にEYが行った調査では、2018年時点で、AIをビジネス・オペレーションに導入する際の最大の障壁として56%が人材不足を挙げています。

大半の企業において、自動化を実施する人材の不足は深刻なものになるでしょう。人材獲得競争が激しさを極め、自動化の専門知識(例:機械学習、自然言語生成、チャットボットなどの知識)を持つ技術者に対する給与水準が急上昇しているため、技術分野の人材を採用し、引き留めることは難題です。

未来を見据えた優れたリーダーの多くが、成熟人材市場を迂回(うかい)して、能力が未開発の人材や専門分野外の出身者を雇用してきました。それでもなお、自動化に関わる人材は雇用市場に出る機会が少なく、企業の大半は自動化人材が不足している状況を受け入れる必要があります。ただしこれが現実となった場合には、効果的な人材管理と企業文化プログラムによって乗り越えることも可能です。

また、既存の人材のスキル・アップを試みる企業もあります。一般的に技術分野でのスキル・アップは、段階的にスキルを引き上げるオプションであり、全く新しいスキルを習得するためではないことを理解すべきです。

例えば、統計学者がデータ・サイエンティストになる可能性はありますが、データ入力だけを担当する人材がそのような役割に移行することは多くの場合、難しいでしょう。適切な人材に対し適切なスキル分析を行えば、スキル・アップ・プログラムを通じてどれだけ技術の向上が期待できるかをデータに基づいて推定することは可能です。これらの課題を考慮し、多くの企業は派遣労働者や一時的な技術者チームの雇用に頼っていますが、これには代償もあります。

Buy:人材と彼らが持つ自動化テクノロジーを買収する

取締役会でディスラプションと急速な技術変革が常に懸念材料として取り上げられる中で、人材及びテクノロジーの買収が選択肢としてよく選ばれることは、EYが実施した調査で明らかとなりました。

買収は独自のテクノロジー、そして人材能力の飛躍的な変化をもたらす可能性がありますが、リスクがないわけではありません。買収側の企業は、買収する人材が長期的な解決策になると考えますが、雇用契約が終了すると人材は流出し、再び人材不足に陥ることがしばしば起こります。

EYが最近行った調査では、買収後に人材を維持し、新しい企業文化に引き込むことに対して強い自信があると答えたのは、回答者のわずか24%でした。起業家や創業メンバーにはリスクを取ることを厭わない気質があるため、買収後に流出する確率が高いものの、まさにその気質を効果的に管理できれば、新規採用した従業員をトレーニングすることで、企業にイノベーションと変革の文化を定着させることが可能です。才能ある起業家のスピリットは、彼らが去った後にも残ることになります。

これらのリスクにもかかわらず、テクノロジー・イノベーション進化のペースが加速し研究開発の推進を求める圧力が高まる中で、コーポレート・ベンチャー・キャピタルの活用が増加しています。

Partner:戦略的な連携を通してオートメーション・エコシステムを開発する

効果的な自動化戦略を実施するためには、最先端のテクノロジーに投資する一方で、高度に専門化された人材を育成するか、または社外で供給源を見つける必要があります。テクノロジーは急速に進化しているため、自社開発はリスクと無縁ではありません。しかし、社外からテクノロジーを購入するアプローチには、当たり外れがあります。以上の課題やリスクを考慮した結果、戦略的パートナーシップのアプローチを追求する企業が増えています。

マネージド・サービス(Managed Services:運用、管理等のオペレーションのアウトソーシング)を通じてテクノロジーや人材を一元化することにより、個々の企業では不可能な水準とコストで成果を収めることが可能になります。

まとめ

インテリジェント・オートメーションは企業及び従業員に大変革をもたらす可能性を秘めています。明確な市場優位性を確立し、自社、顧客、社会に対する価値を生み出す自動化プロジェクトを見極めて優先する厳しいアプローチを採用することで、競合他社から一歩抜きん出る可能性が広がります。十分なエネルギーと勇気があれば、一度限りのプロジェクトは達成できるものです。

しかし、持続的かつ大規模にプロジェクトを実施するためには、企業の自動化戦略と人材戦略を結び付ける必要があります。業務、イノベーション、IT、人材の各分野のリーダーは、選択されたプロジェクト、裏付けとなる分析評価、Build/Buy/Partnerプランの決定を合致させることが必要です。複数の業務にまたがる、分析結果主導型のアプローチを採ることで、自社が自動化を活用する未来の職場となる可能性を高めることができるのです。

コンタクト

篠崎純也(シドニー)
Tel: (02)9248-5739
Email: junya.shinozaki@au.ey.com
Web: https://www.ey.com/en_au/japan-business-services

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