知っておきたいフリンジ・ベネフィット税(前編)

BUSINESS REVIEW

会計監査や税務だけでなくコンサルティングなどのプロフェッショナル・サービスを世界で提供する4大会計事務所の1つ、EYから気になるトピックをご紹介します。

知っておきたいフリンジ・ベネフィット税(前編)

 2020年は世界的に勤務形態が大幅に変化した年となり、労働者の大多数が在宅勤務を余儀なくされました。これらの変化に伴いフリンジ・ベネフィット税(FBT)に対しても幾つかの変更があり、21年FBT課税年度(20年4月1日から21年3月31日)より適用となります。その中には、例えば従業員がコロナ禍によって支障を受けている(またはそのリスクがある)場合、宿泊施設、食事、または輸送など各種支援の提供に対してFBTを免除とする緊急支援規定があります。今月は、まずFBTの概要についてご紹介し、来月号では具体的な変更点について解説します。

FBTとは?

 FBTを計算するには、課税対象となるベネフィット額にグロス・アップ率を適用し、その後FBTの税率を適用します。21年FBT課税年度(20年4月1日から21年3月31日)のグロス・アップ率及び税率は下表の通りです。フリンジ・ベネフィットには、さまざまな免除規定や優遇措置、評価法・計算方法が設定されているため、FBT課税規定の理解が不十分であると、法令違反やFBTの過少払い、過剰払いといった問題につながりかねません。

FBT申告における課題

■少額ベネフィット免除の適用

少額ベネフィット免除(MinorBenefitsExemption)は、1度につき支給されるベネフィットが300豪ドル未満、かつ支給がまれで不規則な場合に適用することができます。この免除適用について留意すべき点は、例えば、従業員が取引先と1人当たり300豪ドル未満の会食に参加したとしても(注1)、免除を適用するには会食が「まれで不規則(infrequencyandirregularity)」であるという条件も満たす必要であるということです。そのため、FBT年度内に同従業員がその他の会食に何回参加したかを確認する必要があります。また、この「まれで不規則」であるかという判断には、明確なルールはありませんので、各納税者による適切な判断が求められます。

(注1)少額ベネフィット免除は、事業主が実費用方式で会食費を評価している場合のみ適用可能で、50/50分割方式が使用された場合は適用されないので留意してください。

■記録の保管

他の税務申告と違い、FBT申告書の作成にはさまざまなソースからデータを収集する必要があります。給与関連情報以外にも従業員の社用車使用記録、出向契約書、請求書の詳細などを精査し、従業員の宣誓書、雇用主の計算方法選択書が必要な場合もあります。必要書類がそろわなければ、FBT課税額が大幅に増えることもあります。またデータは、課税対象となる行為または取引日から起算して5年間の保管義務があります。

■申告期限

申告期限の短さも大きな負担となります。雇用主は、FBT年度末である3月末から2カ月未満という極めて短期間でFBT申告を完了する必要があります。21年度のFBTに関しては、21年5月21日が申告及び納付の期限です。EYのようなタックス・エージェントを利用する場合は、納付期日を21年5月28日、そして申告期日を21年6月25日まで延長することが可能となります。

データの重要性

 FBT申告において、全ての基本となるのがデータです。申告課題のほとんどは関連のデータが効率良く管理できていれば解決できるものです。

■ATOによる監視強化

近年、ATOはシングル・タッチ・ペイロールを始め、プロセスのデジタル化を推進しており、これによりFBT申告書内容をATOが保有する各種データや、同業他社のデータとの比較を行うことで、簡単に異常値を特定することが可能となっています。この分析次第では税務調査につながることもありますので、可能な限りFBT申告書作成の基となる情報を適切に記録、保管しておく必要があります。

FBTの税務データ管理について

チェック・リストの作成・レビュー:

FBT申告書作成に必要な情報源のチェック・リストを作成し、全ての情報がそろっていることを確認しましょう。前年度のFBT申告データは、とても参考になりますが、新しいフリンジ・ベネフィットの支給や新たなFBT規定の導入など年度ごとに状況は変わるので、前年度の申告データだけを参照するのは避けましょう。例えば、昨年「CarParkingBenefit」が申告されていなかったからといって、適切な確認なしに今年度も申告が必要ないと結論付けることは避けましょう。

関連書類の保管:

FBT申告書作成時に使用したデータの情報源、FBT申告に関して重要な記録、計算方法選択書や宣誓書を保管しましょう。これにより、税務調査の際ATOへの対応を迅速に行うことが可能となり、またFBT申告の担当者が退職した際に後任者が準備を円滑に行うことが可能となります。データ管理と整理のスパンを短縮:FBT関連データの収集を年度末にまとめて行うのではなく、年間を通して(例:四半期ごと)行うことを推奨します。これにより、年度末の業務量が軽減され、問題点の早期発見が可能となります。

来月号では、COVID-19がFBTに与える影響や優遇措置についてご紹介します。


EYジャパン・ビジネス・サービス・雇用関連税務・個人所得税申告 新井泰弘
EYシドニーのピープル・アドバイザリー・チームでシニア・コンサルタントを務め、日系企業の窓口を担当。豪州の税務全般と法人会計管理業務の経験があり、特に個人所得税申告や雇用関連税務の知識、経験が豊富
Tel:(02)9694-5882
Email:hiro.arai@au.ey.com

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