トップに聞く豪州進出企業のストラテジー 第1回 食品メーカー編

トップに聞く 豪州進出企業のストラテジー

ビジネス特集
日系企業プロファイル
トップに聞く豪州進出企業のストラテジー
第1回 食品メーカー編

グローバル市場を視野に 資源争奪の世紀を生き抜く
 日本とオーストラリアの経済関係が新たな時代を迎えている。世界的な資源争奪戦の加速を背景に、2国間の相互補完関係が重要性を増しているのだ。在豪日系企業トップに戦略を聞くシリーズ第1回目は、激動の時代を生き抜く食品メーカーを取り上げる。

 中国やインドなど新興国の経済成長を背景に、覇権を賭けて資源獲得に走る各国。投機マネーが金融市場から比較的規模の小さな先物市場に一気に流れ込み、国際商品価格は空前の高値を記録している。
 その影響は、史上最高値圏にある原油など資源・エネルギーだけにとどまらない。穀物の商品価格はコメが約3倍、小麦が約2倍などと軒並み急騰、乳製品も高騰している。ヒトが生きていくのに欠かせない基礎的な食糧までもがマネー・ゲームの対象となり、先進国では物価高が進み、途上国では約1億人(世界保健機構=WHO)が飢餓に追い込まれた。
 切迫した状況の中で、日豪関係は改めて重要性を増している。食糧自給率が4割に満たない(農水省)日本の食糧安保にとって、食糧輸出国である豪州は大切な食糧供給源であり、水不足に悩む豪州農業にとっても日本は重要な輸出市場だからだ。
 一方、日本の食品産業にとって人口の少ない豪州はこれまでそれほど重要な消費市場ではなかった。ところが、豪ドル高や国内経済の成長、多文化主義の浸透などによって、付加価値の高い日本食材のニッチ需要が国内で拡大しているほか、世界を視野に入れた新たなビジネス・チャンスも拡大している。
 日系企業による酒造大手への大型投資、豪州産小麦を使った日本麺の現地生産、VIC州での緑茶の栽培、日系食品メーカーが冷凍食品のテスト市場と捉えていることなどもその一例だ。また、日本の食肉大手や総合商社が長年にわたって投資してきた豪州の牛肉生産拠点も重要性を増している。さらに、寿司をはじめ日本食ブームで、しょうゆなどの食材は日本の食文化の裾野を広げる役割を果たす。
 豪州の拠点からグローバル市場に焦点を合わせて活動する日系食品メーカー6社のトップに戦略を語ってもらった。


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キリン海外戦略の中核を担う巨人企業

ライオン・ネイサン(キリン)/三木文生 エクゼクティブ・ダイレクター
 トゥーヒーズ・ニューやハーン・プレミアムといったビール銘柄でお馴染みのライオン・ネイサンは、ニュージーランド(NZ)で生まれ、オーストラリアで育った歴史のある総合酒造メーカーです。キリン・グループが1998年に1,000億円で株式の46%を取得して傘下に収めました。
 なぜ日本のビール会社がわざわざそんな大金を豪・NZのライオンに投じたのでしょうか。それは、競合のアサヒ・ビールが「スーパー・ドライ」を大ヒットさせた「ドライ・ショック」の影響があまりにも大きかったのです。これを機にキリンの日本国内シェアは頭打ちになり、ついに98年にはトップ・シェアの座をアサヒに奪われてしまいました。
 しかも日本は人口が減少に転じ、お酒を飲まない高齢者が増える一方です。国内だけでなく海外に活路を見出す必要がある――。今思えば、そう考えた当時のトップの考えは正解だったと思います。ライオンの2007年の営業利益は470億円とキリン・グループ全体の実に4分の1に達しています。
 日本の人口の1/6しかない豪州で、どうしてそんなに利益が出せるのか不思議に思うかもしれませんが、実はオーストラリアの1人当たりのビール消費量は日本人の1.5~1.6倍もあるのです。
 また、日本のビール市場は4社が熾烈な販売競争を繰り広げていますが、豪州はライオンとフォスターズの2社がシェアを分け合う寡占市場ですから、ある程度合理的な価格で販売できるという部分もあります。だからと言って儲けすぎということはありません。今でも豪州のビールの価格は日本より安いです。
 日本では毎年、4社がビールやビール系飲料の新商品を多数投入します。競争がどんどん激化して、各社が莫大な広告宣伝費や営業経費を投じて利益を磨り減らすという構図です。日本は新商品への依存度が2割近くもありますが、豪州はわずか1%です。日本から新商品の販売戦略の切り口やコンセプトをこちらに移植することで市場を活性化することが可能かと思います。競争の激しい日本の市場から学べる部分は多いでしょう。

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喉越しが爽やかなハーン・スーパー・ドライ。炭水化物成分を通常のビールの3分の1に抑えた。アルコール度数4.6% ボーグ・クラシック・ブロンド。苦味を抑えた、流行りのロー・カーブ(低炭水化物)のラガー。アルコール度数4.5% ベアフット・ラドラー。カーボン・ニュートラルに認定されたレモン&ライム味のドイツ風ラガー


付加価値のキーワードは健康と環境

 直近の見通しですが、景気後退の影響はNZ市場でより顕著に現れています。豪州とNZのビール消費量は過去10年間ほとんど変わりませんが、高級ビールの販売増で売上が伸びてきました。ところが、NZ経済が減速すると販売の主軸が低価格ビールに振れる可能性があります。また、NZドル安で連結決算に悪影響が出て、ダブルパンチを受けるかもしれません。NZの売上比率は低いですが、懸念材料ではあります。
 一方、豪州経済は陰りが見えてきたとはいえ、成長率が鈍化しただけで、まだまだ力強さを維持しています。現在のところ、豪州の顧客はより付加価値の高いビールを求めていて、ロー・カーブ(低炭水化物)やカーボン・ニュートラル(温室ガス排出量相殺)の商品が伸びています。豪州については、景気がまだまだ力強いですし、こうした新ジャンルが伸びているのでそれほど心配していません。
「健康」と「環境」は、これからもマーケティングの目玉になるでしょう。従来は、こうした価値観はどちらかというとお酒と対極の位置にありましたが、最近はビールを飲むにしても健康や環境に優しい方が良いというのがトレンドです。
 大麦やホップなど原材料価格の高騰で、世界中のビール・メーカーが苦悩しています。豪州でも既に1年間に2回値上げしていますが、それだけではコスト上昇分はカバーできません。価格が高くても、こうした付加価値を付けた商品がお客様に受け入れてもらえるかどうかが、勝敗のカギを握ることになるでしょう。

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Lion Nathan (Kirin)
■所在地:Level 7, 68 York St., Sydney NSW 2000 
■Tel: (02)9320-2200 
■Web: lion-nathan.com 
■従業員数:豪1,800人、NZ1,400人 
■事業規模:豪NZにビール醸造所10カ所、豪NZ米にワイナリー9カ所など 
■沿革:もともとニュージーランド拠点の酒類メーカーが豪各都市のビール会社を買収して成長。キリンが1998年に約1,000億円を出資して株式の46%を取得。2000年以降、ワイン事業へも展開 
■事業内容:ビール・ワイン・飲料の製造販売

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三木文生 エクゼクティブ・ダイレクター
1985年一橋大学卒、同年キリン・ビール入社。横浜支社営業部に配属。キリン全体の経営企画を経て、主にキリンの多角化事業部門を担当(米国ボストンのコカコーラ事業、欧州のアグリバイオ事業、キリンビバレッジ)。2006年より現職。
趣味:読書と映画、セレブのゴシップ。
今読んでいる本:ゴルゴ13


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はくばくがオーストラリアで生産するオーガニック商品。そば、そうめん、うどん、らーめん

豪産小麦から日本麺製造、ブランド育成図る

はくばくオーストラリア/玉川浩二 最高経営責任者(CEO)
 1941年創業のはくばく(本社・山梨県)は、大麦を中心とした穀物加工販売会社です。人と穀物を健康とおいしさで結び、日本の主食を豊かにすることで社会貢献を目指すことを企業理念としています。
 そのはくばくの在豪現地法人であるはくばくオーストラリアは「日本麺に世界一適した小麦だけから、おいしい日本麺を作る」ことを目的に、98年2月よりVIC州バララットで日本の麺類の加工・販売を始めました。現在では米国を中心に15カ国以上に輸出し、オーストラリアや日本だけではなく世界の消費者にオーストラリア産小麦を使った日本麺を親しんでいただいています。
 グループの中でオーストラリア拠点の重要性は年々高まっています。
 進出当初の豪州法人の使命は、世界で最も日本麺の原料に適した豪州産小麦の調達と、日本以外に和麺の市場を開拓することにありました。
 しかし、近年、食糧資源争奪の動きが世界的に加速していること、経済発展を背景とした中国の食糧需要拡大、いわゆる「チャイナ・ショック」が巻き起こっていることなどから、食品企業にとっては一次生産者とのパイプを持つことの重要性が格段に増しています。そうした中で、環境保全に熱心でクリーンなイメージがある農業大国、オーストラリアに根をおろす当社には、食品原材料の調達拠点としての期待が高まっているのです。

豪州の多様な食文化の発展に貢献

 ところで、国土が広い割に人口が少なく、主要産業が寡占化されているオーストラリアは、製造業がスケール・メリットを生かして収益を追求するには困難な市場であることは否めません。
 この一方で、移民国家として育んできた多様な価値観を受け入れる考えが食文化にも反映されており、地理的、経済的にアジアに近いことから、アジア料理は既に一般家庭に広く浸透しています。今後もオーストラリアはアジアからの移住者を積極的に受け入れ、アジア料理はさらに発展していくと予想されます。日本食材の需要もますます拡大していくでしょう。
 そこで、アジアからの安価な輸入品との差別化を図るには、付加価値の創造とブランド育成が不可欠となります。
 当社はこれまで豪州国内市場にうどんやそばなどの乾麺を投入してきました。当初は、日本食材といえば寿司関連のコメや海苔、ワサビなどが売れ筋で、小麦麺は中国産のシェアが圧倒的でした。しかし、家庭で本格アジア料理の食材の需要が高まっていることに着目し、本物の味を手軽に楽しめることをコンセプトとした日本麺のシリーズをリリースしました。日本人にとっておいしい麺であることはもちろん、パッケージのデザインも日本らしさを強調しましたが、オージーが親しみやすい簡単料理のレシピを当地向けに紹介しました。
 また、アジアの原材料に対する漠然とした不安感を取り除くためにも、安心できるオーガニック食品であることもアピールしました。そうしたマーケティングが功を奏し、日本食人気の波にも乗り、全豪の小売店で取り扱ってもらえるようになりました。
 豪州国内のアジア食材の市場規模は、過去5年で約2倍に急拡大しています。オーストラリア人にとって、グルメ向けの特別な食べ物という位置付けから、より日常的な身近な存在になっています。
 しかし、それは、例えばパスタやパンといった現地のメイン食材との競合が始まっていることの証でもあります。当社にとっては、本物の味を大切にしながら、親しみやすさや使いやすさを強化していくことが直近の課題です。また、うどんやそばの普及だけではなく、「Hakubaku」ブランドの認知度を向上させていくことも重要です。
 そして、豪州の文化とマルチカルチャーを尊重しながら、日本文化との融合を図り、この国の食文化をさらに豊かにするために尽力していきたいと考えています。

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Hakubaku Australia
■所在地:7 Waringa Dr., Wendouree VIC 3355 
■Tel: (03)5339-5489 
■Email:info@hakubaku.com.au 
■Web: www.hakubaku.com
■従業員数:25人 
■沿革:1995年設立。98年VIC州バララットで日本の麺類の加工・販売を開始。商品は世界15カ国に輸出
■事業内容:乾麺の加工・販売

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玉川浩二 最高経営責任者(CEO)

山梨大学卒業後、1985年にはくばく入社後、大麦を主原料とした商品開発及びマーケティングに携わる。
2003年より、業務用販売部部長に就任し、大麦商品の拡販に尽力する。
2008年9月より、はくばくオーストラリアCEOに就任し現在に至る。
趣味:ゴルフ。
座右の銘:「初心忘るべからず」。
今読んでいる本:「会社の品格」


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茶園で行われている生葉摘採作業の風景

緑茶供給基地としてグローバル市場に照準

伊藤園オーストラリア/田浦良昭 代表取締役
 伊藤園は緑茶原料を将来にわたって安定的に確保するため、茶産地育成事業を推進しています。伊藤園オーストラリアは、海外市場で需要拡大が予想される緑茶原料供給の重要拠点として産地事業を展開しています。
 緑茶の産地を新たに育成するというのは、本当に息の長い事業です。南半球のオーストラリアに進出したのは、産地事業展開の構想が現実化しつつあった約15年前、マクナマラ政権時代のVIC州政府から茶園事業の誘致を受けたのが直接のきっかけでした。
 それから現地調査、苗の導入、現地試験栽培、苗の増殖などのプロセスを経て、ようやく苗の定植を開始したのが2001年です。豪州の輸入検疫は厳しく、苗を日本から導入するのに3年、それから現地で苗を大量増殖して商業ベースで定植できるだけの苗の数を確保するまでにさらに3年の年月を要しました。
 また、定植後には山火事や干ばつなど日本では経験しない障害も発生しました。茶栽培に初めて従事する現地生産者と一歩一歩問題を解決し、困難を乗り越えてきました。
 現在では、契約している9軒の生産者と自社管理茶園の合計72ヘクタールの茶園で生葉を摘採し、2004年に稼動を開始したワンガラッタ工場で加工して100%豪州産の日本緑茶を生産していますが、茶園は定植から成園になるまで約7年かかりますので、まだほとんどの茶園は成園まで育っていません。生産量もやっと年間200トン(今年度計画)という水準です。
 工場の設備や茶園の機械などはほとんど日本から輸入して使用していますが、代理店があるわけではないので、機械の改良や現地法制への対応を進めたり、現地オペレーターを育成したりしながら、ノウハウを日々蓄積し、勉強させてもらっています。まだまだ完全に満足していませんが、それでも豪州の一般的な輸入緑茶と比較すれば、私たちの緑茶が一番おいしいと自負しています。

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VIC州ワンガラッタにある荒茶工場の全景 日本文化を世界に広める豪州産の緑茶

第2ライン稼動、生産規模拡大へ
   私たちのプロジェクトはまだ始まったばかりです。今後も世界に向けた日本緑茶の供給基地を創造するという目標に注力していきます。
 この9月に工場の第2ラインを導入し、据付工事が完工します。10月には第2ラインの稼動が開始し、合計最大日産処理能力は生茶18トン、合計年間生産能力は荒茶260~360トンに増強します。現在の敷地規模で年産1,000トンまで対応が可能ですので、今後も米国や欧州連合(EU)、豪州国内の市場を視野に入れ、需要に合わせて生産拡大を進めていきます。
 現在、豪州で生産しているのは、緑茶が原料の「荒茶」です。最終製品を製造しているわけではありませんので、豪州国内での販売展開は限定的にならざるを得ません。現時点では製造業の基本である「ものづくり」に注力することが最も重要と考えています。
 ただ、現地事業所として豪州での直接販売も視野には入れています。原料工場としての供給なら可能ですし、工場稼動以来、販売の問い合わせも来ています。今シーズンからはようやく十分な量が確保できる予定なので、可能な範囲で対応していきます。
 実は、昨シーズンの製品を現在保有する限られた設備で再加工して、サンプル商品を作ってみました。まだまだ外見は荒茶で日本の最終商品のようにはいきませんが、正真正銘100%豪州産の日本緑茶です。もしご希望があればE-mailでご連絡ください。
 小中学校で開催される日本語スピーチ・コンテストなど地域で日本関連のイベントがあれば協力させてもらっています。これからも、地に足を付けて、地域社会に貢献できるように地道な活動を続けていくつもりです。できれば、緑茶に関連した文化交流を通して社会貢献の機会を増やしていければと考えています。

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Ito En Australia
■所在地:VIC州 North Wangaratta 
■Tel: (03)5721-3999(代表) 
■Email: itoenaus@itoen.com.au 
■従業員数:7人(ほか臨時従業員数人) 
■沿革:1993年VIC州政府の誘致を受け現地候補地調査実施。94年現地法人設立。現地試験場での試験開始。2000年現地生産者と契約。04年工場稼動開始。08年年10月荒茶生産第2ライン稼動開始 
■事業内容:緑茶製造加工販売

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田浦良昭 代表取締役
1986年伊藤園入社。
94年中国合弁工場立ち上げ支援業務に従事(茶園・工場)。
96年オーストラリア試験茶園技術支援業務に従事。
2000年伊藤園オーストラリア出向。技術担当者として現地で苗育成および生産家栽培支援に従事。
01年伊藤園オーストラリア副社長。
02年より現職。
趣味:映画鑑賞、ゴルフ、料理。
座右の銘:「ケ・セラ・セラ」。
今読んでいる本:ハリー・ポッターの最終巻


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日本料理「エビ天」は豪州で人気商品

世界展開にらみ豪州をテスト市場に活用
ニチレイ・オーストラリア/鳥原正 代表取締役
 1984年に設立されたニチレイ・オーストラリアは現在、2年前に本社が分社化されたのに伴い、ニチレイ・フーズ(ニチレイ・グループ内の冷凍食品の事業会社)が管轄する在豪現地法人となりました。業務のほとんどが、タイの合弁工場で生産したエビを中心とした魚介類のフライの冷凍食品の輸入・販売となっています。
 ニチレイが豪州に初めて進出したのは、前身の駐在員事務所を設立した70年代にさかのぼります。当時は水産・畜産品の原料買い付けが目的で、冷凍食品の輸入・販売という現在の業態とは異なっていました。当時は、新たにタイ工場の製品を豪州で販売するために現地法人を立ち上げたわけですが、現在では原料買付からは撤退して、冷凍食品の輸入・販売事業に特化しています。

主力の冷凍エビフライでシェア2割

 現在の商品構成は、揚げ物約15種類と最近始めた冷凍寿司3種類で、原料は養殖エビがほとんどですが、白身魚やホタテ、カニ爪のフライなどもあります。特に冷凍エビはニチレイの「レッド・ボックス」のブランドで親しまれています。年商はほぼ1,000万ドル前後で推移しています。
 販路としては、レストランや退役軍人会(RSL)などのクラブ、パーティーやファンクションでのケータリングといった外食や業者向けに卸しています。一般向けの販売は基本的に行っていませんが、シドニー・フィッシュ・マーケットではニチレイのロゴが入った冷凍食品が並んでいますので、店頭で購入することができます。
  オーストラリアの冷凍食品産業の市場規模は年間およそ2億ドルとそれほど大きくはありません。そのうちエビフライのセグメントでは約20%のシェアを占めています。当社の顧客の90%はオーストラリアの現地業者で、日本食レストランにも卸していますが取扱量はそれほど多くありません。ビジネスの主眼はオーストラリアの現地マーケットです。
 エビの冷凍寿司以外は、特に日本企業のカラーを出しているわけでないので、「ニチレイ」が日本ブランドであることを知らずに購入している顧客も多いでしょうし、外食やパーティーのフィンガー・フードなどで知らないうちに食べていただいている読者の方も多いかもしれません。

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新展開商品として期待をかける「冷凍寿司」 レストランからの需要が高い「シーフード・コンボ・バスケット」 ニチレイの人気商品、冷凍エビの「レッド・ボックス」



食糧資源の供給基地としても注目
 さて、少子高齢化による人口減少を受けて、日本の食品業界は業界の再編や住み分けが進んでいます。国内市場が収縮していく中で、ニチレイも成長を続けるためには海外に活路を見出す必要があります。そこで、古くから唯一海外販売の拠点だったオーストラリアをテスト・マーケットとして活用していく戦略を採っています。オーストラリアは人口約2,000万人と比較的規模は小さいですが、ほかの欧米などの海外市場の攻略を視野に入れて、試験的な新商品をどんどん投入していこうという考え方です。
 そうした戦略に沿って、今後は現在の品ぞろえに限らず寿司をはじめニッチな商品もいろいろ手がけていきたいと考えていますし、焼きおにぎりやコメの加工品も紹介してテストしてみたいと思っています。冷凍加工品市場の潜在性は高いと見ています。
 また、水産品や畜産品、農産品などの原料供給拠点としても、将来的には重要性が増す可能性はあると見ています。豪州経済は伸びていますし、食糧資源は豊富です。食糧危機と呼ばれる状況の中で、原材料の供給源を確保することが以前にも増して重要性を増しています。当社も現在の加工食品の輸入・販売にとどまらず、原材料の日本への供給のビジネスも視野に入れていきたいと考えています。 

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Nichirei Australia
■所在地:Suite 1, Level 2, 189 Kent St., Sydney NSW 2000 
■Tel: (02) 9241 3433 
■Web: www.nichirei.com.au 
■従業員数:5人 
■沿革:1970年代にメルボルンに駐在員事務所を設立。84年現地法人化。91年にシドニーへ拠点を移動。90年代までは水産や畜産の買付も行っていたが現在は冷凍食品の輸入・販売に特化 
■事業内容:冷凍水産加工品の輸入・販売

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鳥原正 代表取締役
1983年日本冷蔵(現在のニチレイ)入社。
85年から6年間米国駐在後帰国。食品部で4年営業を経験した後、本社海外冷凍食品部で商品開発に携わる。
2001年から関西、九州支社を経て06年より現職。
趣味:サッカー観戦。
座右の銘:「神は愛なり」。
今読んでいる本:「ザ・プロフェッショナル」(大前研一著)、聖書


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QLD州にある食肉加工工場「オーキー・アバトゥア」

クリーンな豪産牛肉を日本に安定供給
オーストラリア日本ハム/井上勝美 代表取締役
 日本ハムの基本テーマは、「食べる喜び」です。ハムやソーセージの製造から始まった日本ハムは、現在では食肉だけにとどまらず多くの加工食品や水産品、乳製品、野菜などバラエティー豊かな食材や商品へと領域を拡大してきました。その事業地域も、オセアニアをはじめ北米、南米、欧州、中国、東南アジアとグローバルな広がりを見せています。
 特に、数多くの子会社を展開するオーストラリアは、日本ハムの海外戦略の中で最も重要な食肉供給基地となっています。オーストラリア日本ハムはその中核企業であり、食を通して楽しく健やかな暮らしに貢献したいと願う日本ハム・グループの一員として、食糧の多くを輸入に頼る日本に向け、「高品質・安全・健康」をキーワードとしたオーストラリア産牛肉とその副産物を安定的に届けることを主な事業として展開しています。
 オーストラリア産牛肉は、カロリーベースの食糧自給率が4割に満たない日本にとって、動物性タンパク質の供給源としてとても大切な食材です。
 近年、食の安全に対する消費者の意識が高まる中で、「オージー・ビーフ」のブランドは日本人にとって近年ますます重要性を増しています。牛海綿状脳症(BSE)感染の心配がなく、生産・流通の履歴が追跡できるトレーサビリティーが確立されていて、安全でクリーンだからです。
 特に日本国内のシェア1位だった米国産牛肉の輸入がBSE問題で2003年に禁止されてからは、豪州産牛肉は日本人の食にとってなくてはならない存在となっています。
 さらに、中国やインドなど新興国の経済発展を背景に国際的な食肉の需要が急拡大する中で、オーストラリアで食肉の生産から処理、輸出にいたるまで大規模なシステムを構築している当社は、安全な食肉を安定的に供給するという重大な社会的責務を担っていると認識しています。

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繁殖した肉牛を集めて飼料で肥育して出荷する自社所有の肥育場(フィードロット) 子牛からフィードロットに出荷するまで育てる繁殖農場

  川上から川下まで一貫した自社体制
    当社は1978年に輸出販売事業を行う現地法人を設立して以来、今年で30年になります。豪州進出から10年後の88年には、自社の牧場と工場を取得し、生産事業に乗り出しました。さらに、2000年には皮革工場を買収、牛副産物の製造事業も本格的に展開しています。
 現在では、定着した当社ブランドを多くのお客様に提供するに至っております。また、日本市場だけではなく、豪州国内や米国、欧州、アジア各国などへも商品を輸出し、世界中で当社の豪州産牛肉を食べていただいています。
 生産から販売までインテグレーション(一貫体制)を確立することによって、当社基本テーマとキーワードの役割を果たすと考えています。当社グループは、肉牛の繁殖・肥育事業(4牧場)、牛肉製造事業(3工場)、皮革事業(3工場)、販売(輸出1事業所、国内3事業所、海外1事業所)を展開し、合計10社の子会社を運営しています。
 肉牛の繁殖・肥育事業に関しては、NSW州とQLD州に自社牧場を保有し、牛生体の供給を賄っており、自社ブランド確立の大きな役目を果たしています。牛肉製造事業に関しては、QLD州北東部、同州南東部、NSW州に工場を保有し、牛生体の品種と地域性に合わせた商品の供給を行っています。
 また、牛肉処理の副産物である皮革事業では、QLD州とNSW州、VIC州に生産拠点を持ち、当社独自の処理を施した皮革商品を、シドニーの販売事務所からアジアや欧州など世界40カ国以上の市場に輸出しています。
 各関係子会社は地方に位置しており、地域に根を張って地元経済と地域社会の活性化に貢献しています。また、近年は、次世代を担う若者に第一次産業を経験し理解してもらうことを目的に、国籍を問わず、短期就労者の受け入れも積極的に行っています。


Nippon Meat Packers Australia
■所在地:Level 10, 76 Berry St., North Sydney NSW
■Tel: (02)8918-0000 
■Email:info@nmpa.com.au 
■Web: www.nmpa.com.au 
■従業員数:1,700人 
■事業規模:牧場4カ所、牛肉加工工場3カ所、皮革工場3カ所、販売6事業所(海外1事業所) 
■沿革:1978年オーストラリア日本ハムを輸出販売事業として設立。88年自社牧場/工場買収。製造事業本格展開。2000年皮革工場買収。副産物製造事業本格展開。
■事業内容:食肉・副産物生産・輸出・国内販売

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井上勝美 代表取締役
神戸大卒。
趣味:ゴルフ。
座右の銘:「いつも明るく、元気よく」

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日豪プレス 配布場所   日豪プレス 新刊発行    Oishii Japanese Restaurant Guide Covid-19 最新情報

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