日本電子株式会社豪州法人 電子顕微鏡市場でトップシェア

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日本電子株式会社豪州法人
電子顕微鏡市場でトップシェアを誇る理化学機器メーカー

 JEOL(日本電子株式会社)は、独自の技術開発力を生かし、電子顕微鏡をはじめとする研究・開発用理化学機器事業のほか、半導体関連機器、医用機器、産業機器などを手がける世界トップ・レベルの理化学機器メーカーだ。その製品は基礎科学から先端産業分野まで幅広く利用され、主力商品である電子顕微鏡はトップシェアを誇り、日本国内だけでなく世界60カ国以上の国に輸出されている。同社の豪州現地法人であるJEOLオーストラレーシア社に竹内千尋社長を訪ね、豪州市場での活動内容について話を聞いた。


物質の構造を元素の単位で解明
「説明がとても難しいので、会社の事業内容を尋ねられた時は、電子顕微鏡のメーカーですと説明しています」と竹内氏。確かに理化学機器と聞いてもピンと来ない。同社が手がけるのは分析機器。小さいモノを大きく見せる電子顕微鏡以外にも、物質の構造や質量を元素の単位で計測するさまざまな装置を開発・製造している。「分かりやすい例では、運動競技のドーピング・テストや麻薬の使用判定などに使われる質量分析計。空気や血液、髪の毛などがほんの少しあれば元素単位で検出でき、白黒の判定ができます。また、同様にゴルフ場でまかれている農薬の種類や量を検出する機器や水質検査にも使われています。つまりミクロの世界を我々人間の目に見えるようにして、さまざまな分野で活用するための道具ですね」(竹内氏)
 それら分析機器の代表が同社の主力製品である電子顕微鏡だ。
 電子顕微鏡は、通常の顕微鏡(光学顕微鏡)が観察対象に光を当てて拡大するのに対し、電子線を当てて拡大する顕微鏡。電子線の持つ波長は可視光線の波長より極めて短く、理論的には分解能(2つの点が「2つの点」として分離して観察される最短の距離)は光学顕微鏡の3,000分の1程度にもなる(透過型電子顕微鏡の場合)。倍率で言うと100万倍以上。光学顕微鏡では見ることのできない微細な対象を観察(観測)できるのが利点で、今日では原子レベルの大きさのものも観測ができ、ナノテクノロジーの研究に不可欠なナノオーダーによる観察や、これまで以上に高分解能像観察、微小領域分析が可能になっているという。
 同社の持つ電子工学技術は基礎研究から半導体分析、超伝導物質の最先端材料の開発までさまざまな産業分野で利用され、さらにこの技術を生かして物質の構成元素の分析や極表面層を分析する装置などを開発、商品化しているという。
 その1つが、同社のもう1つの主力製品である核磁気共鳴装置(NMR)。これは人体の大部分を占める水を構成する水素原子の、密度や結合状態などを磁気共鳴という方法で検出して人体の断面画像を撮影する医療装置MRI(磁気共鳴画像診断装置)と同様の原理で、分子を構成する原子同士のつながりが観測できる。薬品メーカーがその製造過程で薬品の分子の立体的構造を解析するのに使用したり、大学の化学研究所が研究用に活用しており、2001年に不斉触媒による水素化反応の研究でノーベル化学賞を受賞した野依良治氏は大口ユーザーだという。
 そのほか、電子スピン共鳴装置(ESR)、質量分析計(MS)などの分析機器以外にも、電子ビーム描画装置などの半導体製造関連機器、電子銃・電源やプラズマ銃・電源などの工学薄膜・成膜関連機器、血液の自動分析装置や臨床検査システムなどの医用機器を手がけている。
 事業規模は年商1,000億。日本の理化学機器業界ではトップ・クラスを誇る。
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(写真)DVD溝の拡大画像。楕円形のスポットと長楕円形のスポットで0と1を表しているのが分かる
先端の研究活動に対応する製品を提供
 同社は現在、米国、フランス、UK、オランダ、スウェーデン、ロシア、イタリア、シンガポールなど15カ国に現地法人を置く。豪州に現地法人を設立したのは1965年で、62年の米国、64年のフランスについで3番目に古く、42年の歴史を誇る。事業規模は約5億円(2006年度)。豪州で約5割というトップシェアを誇る電子顕微鏡の輸入・販売とメンテナンスが主な業務となっている。
 スタッフは竹内氏を含め8人と少数精鋭の体制。1人のセールス・エンジニアと4人のエンジニアとともに年間約10台の電子顕微鏡を、国や大学の研究機関に納入している。1台5,000万円から1億円、最高で10億円もする電子顕微鏡は、研究機関が予算を申請してから受注に至るまでに平均して2年ほどかかり、息の長い地道な営業活動を必要とする。
 ただ、竹内氏は豪州を「大学の数は決まっているし研究所の数もそう増えるわけでなく、マーケットとしては非常に小さい。しかし、オーストラリアは研究分野では先進国なので、研究機器にほかの研究所よりも少しでも高レベルのもの、優れたものを要求する傾向が強いという特徴があり、興味深い市場」と評価する。また、昨今の好景気とそれを背景とする国の研究投資に支えられ市場は拡大基調にあるという。ナノテクノロジーなどに関わる最先端の電子顕微鏡が好調で、資源大国であることも分析電子顕微鏡の需要が増す要因とも分析している。
 今後の発展が期待できるのは、現在まで開拓していない核磁気共鳴装置、質量分析計などの化学分析装置分野と竹内氏は言う。同氏は将来的に、電子顕微鏡と同程度の規模と考えられる同市場で、電子顕微鏡の知名度を生かしながら積極的な拡販活動に乗り出す考えだ。
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(写真左)世界最高磁場を誇るJNM-ECA920型核磁気共鳴装置(NMR)。筑波物資材料研究機構、岡崎国立研究機構などで稼働中
(写真右)最新のJEM-3100F型電子顕微鏡。旧モデルがシドニー大学で稼働中


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1980年立教大学卒、JEOL入社。10年の名古屋支店勤務後、東京本社に勤務。アジア・中近東への販売促進担当を経て、2005年1月より現職。
<竹内千尋社長に聞く10の質問>
1. 座右の銘:「人間万事塞翁が馬」
2. 今読んでいる本:「国家の品格」
3. オーストラリアの好きなところ:気候が良く安全、差別を感じたこともなく住みやすい
4. 外から見た日本の印象:経済力の面でも相対的に地位が低下し孤立しつつある印象
5. 好きな音楽:モーツアルトをはじめとしたクラシック
6. 尊敬する人:秀でた才能を持つ人
7. 有名人3人を夕食に招待するなら誰:小澤征爾、田中角栄、山本五十六
8. 趣味:ゴルフ、テニス、スキー、映画鑑賞
9. 将来の夢:日豪の半々の生活
10.カラオケの十八番:なし

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