ヨコハマ・タイヤ・オーストラリア

企業研究

質の高い製品供給と
サービス提供で
顧客満足度向上を追求

「ヨコハマタイヤ」のブランド名で知られる横浜ゴム(株)は日本を代表する大手タイヤ・メーカー。1917年に神奈川県横浜市で創業し、各種タイヤ、工業用ゴム製品、工業用接着剤、ゴルフ用品を製造販売している。日本、米国、フィリピン、ベトナム、中国、タイに工場を持ち、従業員は1万5,423人、2007年度連結売上高は4,973億9,600万円を誇る。同社の豪州法人であるヨコハマ・タイヤ・オーストラリア社に石原明彦社長を訪ね、豪州市場での経営戦略などを聞いた。
(写真)
石原明彦マネジング・ダイレクター
1947年生まれの団塊世代。中学からの学習院児。70年学習院大卒。同年横浜ゴム入社


 ヨコハマ・タイヤ・オーストラリアは1976年、メーカー直接出資のタイヤ専門の販売子会社として設立された。「米国市場に次いで設立されたこの海外支社は、現地代理店を介した商品販売ではなく、本社から人を送り込むメーカー直販という形態に挑戦したもの。先進国市場でのタイヤ販売会社のあるべき姿を探るという目的もあった」と石原氏。
 現在は欧州や中国、アジアの国々に直販会社があるが、豪州法人の設立は海外進出の先陣を切った形と言える。
 

企業研究
新開発素材を用いた乗用車の高性能スポーツ・タイヤ「ADVAN」シリーズのほか、さまざまなラインナップで市場需要に対応

5事業を柱に展開
 同社は豪州市場で、①タイヤ小売店への卸事業、②自社ストアを介した消費者向け小売事業、③同社主宰の小売事業体の運営支援、④自動車メーカーへの直接納入事業、⑤鉱山への特殊タイヤの直接販売の5事業を展開している。
 その中で豪州市場での柱となっているのがタイヤ小売店への卸事業だ。総合カー用品店での小売が中心の日本とは異なり、豪州でのタイヤ販売は「タイヤ・ストア」と呼ばれるタイヤ専門店を通しての小売りが一般的。この専門店は1店舗、多くても数店舗程度の小規模経営店がほとんどだが、同社の事業はこれらの小規模タイヤ・ストア向けの卸事業の占めるウエイトが最も大きい。
 また、タイヤ・メーカーは豪州市場で運営する自社ストアを介して小売事業に進出しているケースが多いが、同社も全豪に12店舗を展開し小売事業に進出している。
 もう1つ、同社が主宰する小売事業体がある。これは同社製品をメイン商品とする販売店「Tyres & More(タイヤズ・アンド・モア)」で、同社は全豪に70店舗展開する同販売店に対し、マーケティング活動、宣伝活動、販促活動などの支援を通した統括事業を行っている。
 自動車メーカーへの直接納入事業も同社の主力事業だ。現在、豪州で現地生産するメーカーは、先日三菱が撤退を発表したのでトヨタ、GMホールデン、フォードの3社となった。合計で年間50万台近くを生産しており、そのうち10万台以上を主に中近東の湾岸諸国に輸出している。同社はこのうち、GMホールデンとトヨタの2社が中近東向けに輸出する車両のタイヤを請け負っており、規模は大きい。
 最後が、鉱山会社への特殊タイヤの直接納入。鉱山会社はタイヤに関するメンテナンスを独自に行うため、鉱山会社へ鉱山開発向け車両の特殊タイヤを直接販売している。
「この5事業をシドニー、メルボルン、ブリスベン、タウンズビル、アデレード、パース、ダーウィンの7事務所が直接・間接に倉庫機能を持ち対応。小売事業を含め100人を超える従業員が、顧客のニーズに即座に対応できる体制を整えている」(石原氏)
 

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行われた市販車12間耐久レースでは4位まですべてヨコハマ・タイヤ装着車が独占

輸入ブランドでトップ・シェア
 人口約2,000万人のオーストラリア。2人に1人の割合で自動車を所有しており、自動車保有台数は約1,000万台に上る。タイヤの履き替え需要は4年に1度と言われ、年間では自動車250万台分、自動車保有台数の数とほぼ同じ1,000万本のタイヤ履き替え需要がある。
 リサーチ会社が2005年に実施した市場調査によると、このタイヤ需要1,000万本のうち、乗用車および四輪駆動車のタイヤ市場では、ブランド別のトップはブリヂストンでシェア20%、続いてグッドイヤー、ダンロップと続く。この3ブランドはローカル・メーカーによる現地生産による供給だが、4位以下、6割以上のシェアを占めるのが輸入ブランドだ。ヨコハマ・タイヤはこの輸入ブランドの中でミシュランやピレリーを抑えてトップ・シェアを誇っている。
 石原氏は「豪州はタイヤや自動車に関して日本製品のシェアが非常に高い特異な市場。また、市場規模は小さいものの、リーズナブルな必要規模の事業展開で高いシェアを実現することができる」とし、豪州での事業展開の利点を挙げる。
 そして、人口約2,000万人というコンパクトな市場規模、しかも居住者の9割が白人の白人国家という、国民特性が比較的はっきりしている点で、マーケティング活動上のメリットが大きいという。「反応が早く、仮に失敗しても大きな痛手にならない規模。モデル市場として非常に存在感がある」。
 欧州から見て最南端の土地で、周辺の市場はNZしかない豪州は、周辺国の供給センターとして生産拠点を持つことは難しいが、モデル市場としてここで得たデータや経験が他国市場に有効に転用できるという。
 ただし石原氏は、この国は世界の中でも道路条件や気候条件においてほかに例がなく、先進国の中では特異な存在だとも指摘する。そのため、少雨・高温地帯が多く、路面状態が良くない上に、大型車が多いという、豪州ならではの市場環境に適合した品質の製品を提供することが大切だ。
 また、実際に商品を利用するエンドユーザーにベストなサービスを提供するための販路を持つことも、販売戦略の1つとして欠かせない。「重要なのは質の高いサービスと知識を持ち併せた小売ストアをどう選ぶか。一流品をそろえ国内随一の質を誇る『ボブ・ジェーン』を筆頭に、厳選した約300店舗の特約ストアを介して全国ネットで商品を提供している」(石原氏)
 豪州自動車産業への寄与も重要。中近東で販売した商品のアフターケア・サービスを提供するとともに、必要な品を必要なタイミングで提供する「ジャスト・イン・ファイン」をモットーに、カー・メーカーのタイヤ需要に応じて随時に提供できる体制を整えている。
「そして、タイヤを通じてお客様にモーター・スポーツの楽しさを提供することも私共の使命」と石原氏。豪州で行われるさまざまなモーター・スポーツ活動を協賛するほか、製品を供給している。同社が提供するのは年間8戦かけて行われる「V8ユート(荷台付きの小型トラック)」のほか「OZレーシング」「ツーリング・カー」などのレース・イベント。2月にバサーストで行われた市販車による12時間耐久レースでは、4位まですべてヨコハマ・タイヤを装着した車が占めた。


顧客満足度を追求
 主宰する「タイヤズ・アンド・モア」は運営支援を行っているにもかかわらず、ヨコハマ・タイヤ以外の製品も扱っている。経営上、一見不条理にも思える方針に、同社の経営戦略における芯がはっきりとうかがえる。「小売りは、質も価格帯もワイドに、できるだけ多くの品ぞろえを持ち、お客様がその中から自分に合った製品を選べるだけの選択肢を持つというスタンスが大切。もちろん自社タイヤで多くのニーズをカバーできる自負はあるが100%ではない」。最終的に大切なのは顧客の満足度。石原氏の言葉に同社の経営に対する真摯な姿勢を感じることができる。


<石原社長に聞く10の質問>
①座右の銘:自重互敬(安部能成が中学生の私たちにこの言葉の意味を講義してくれました)
②今読んでいる本:鬼平犯科帖(再々々読ですが)
③オーストラリアの好きなところ:明るさ、自然、清潔さ
④外から見た日本の印象:お金持ち、非ロジカル、農耕民族(繊細、着実な努力など)
⑤好きな音楽:謡以外では、ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第二番ハ短調作品18」、バッハ「マタイ受難曲BWV244」などのクラシック曲、オスカー・ピーターソンなどの古典ジャズ曲
⑥尊敬する人:安部能成(実際に接して子ども心に強烈なオーラを感じた)
⑦有名人3人を夕食に招待するなら誰:シーザー、世阿弥、楊貴妃
⑧趣味:謡(18歳の春から稽古を始め、ライフワークのようなものです)
⑨将来の夢:太鼓(おおつづみ)の稽古と独調(謡の独吟を鼓に合わせて謡う)
⑩カラオケの十八番:独吟では俊寛の「飲むからに」から望郷の心情を謳う場面、フォークソング

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