「花王アタック」編 第2回

ニッポンの競創力

飽くなき努力と探求心で優れた製品・サービスを創出する 日本企業をクローズアップ 「花王アタック」編 第2回

豪州版アタック「BIOZET Attack」
開発までの道のりを聞く

驚異的な洗浄力で洗濯洗剤の常識を変えた「アタック」は、1987年の登場以来、コンパクト洗剤の日本のトップ・ブランドとしてその地位を守り続けています。オーストラリアでは日本でお馴染みの高性能そのままに豪州版「BIOZET Attack」が販売され、独自の洗浄技術を支持するユーザーが着実に増えているといいます。第2回目の今回は、豪州版アタック開発にまつわるエピソードなどについて、花王オーストラリア・青木薫社長にお話を伺います。

トップローダー用「BIOZET Attack」

創業以来の精神〜豊かな生活文化の実現〜—
——初代「アタック」はどのような経緯で誕生したのですか ?「
アタック」と言えば、「スプーン1杯で驚きの白さに」というフレーズでご存知の方も多いと思います。“少量の洗剤で洗濯物を驚くほどキレイに洗い上げる”というこのコンセプトは、当時の合成洗剤市場ではとても画期的で、全国の多くの家庭からの支持をいただきました。
 当時は、4キロ以上もある「お徳用」洗剤が売り場に並んでいるのが一般的でした。家庭の主婦が、買い物では大きくて重い洗剤の持ち運びに苦労し、家庭では置き場所にも困っていた時代です。そんな合成洗剤の常識を覆したのが「アタック」でした。パッケージは4分の1以上に小型化され、驚くほどの少量、すなわちスプーン1杯の洗剤でそれまで以上の洗浄力を発揮したのです。

 その誕生の背景にあったのが、「運びづらく置き場所を取る洗剤の箱をコンパクト化できないか」「そのために少量の洗剤で驚くような洗浄能力を実現できないか」という開発者たちの情熱でした。当時の研究・開発者たちは、洗剤粒子を極限まで小さくする小型濃縮化技術と、洗剤に配合することで洗浄力を高めるアルカリ・セルラーゼ酵素の大量培養技術の確立に凄まじい力を注ぎ、ついには成功させるわけですが、それらはすべて、消費者が本当に必要としているものを理解し創造するという、花王創業以来の商品開発の精神に突き動かされていたわけです。
 私たちは常に、消費者の立場に立って心を込めた“よきモノづくり”を行い、世界の人々の“豊かな生活文化の実現”に貢献すること使命としています。当社は2004年、この創業以来の使命を企業理念として明文化した、「花王ウェイ」を策定しました。この理念は、花王グループの全企業活動の拠り所であるとともに、社員1人ひとりの働きがい・生きがいを得る上での欠かせない指針となっています。

花王オーストラリア・青木薫社長

SEEDSとNEEDSを融合し技術を実用化する商品開発研究
———この企業理念に基づき、さまざまな商品開発を行っているわけですね。

 私たちはその使命を達成するため、「消費者・顧客を最もよく知る企業となること」を企業ビジョンとし、消費者のニーズをいかに捉えるかに常に注力しています。
 例えば、新たな海外市場に進出するとなれば、まずは商品開発の市場調査チームが現地に飛び、当地の人々の生活習慣や嗜好など、消費者の生活やニーズの探索を徹底的に行います。洗濯洗剤を例にすれば、通常は家庭訪問をして現地の洗濯習慣を調査しますが、洗濯に関わるあらゆる生活習慣を調査するため、場合によってはその家庭に寝泊まりさせてもらうこともあります。
 そして、市場調査で得られた現地の消費者ニーズを元に商品を設計し、独自に蓄積した科学技術を駆使して商品として実用化していくのです。
 この開発部門R & D ( R e s e a r c h a n dDevelopment)の基盤技術研究所では、「物質科学」「生命科学」「生産技術」「人間科学」「環境」の各分野で、さまざまな領域の先端の科学技術を深く掘り下げ、物質や現象の仕組みを解き明かす基盤技術研究を行っています。ここで生まれた独自技術を、私たちは“商品の種”という意味を込めて「シーズ(SEEDS)」と呼んでいます。
 そして、そのシーズを生かすのが同じR&Dにある商品開発研究所です。「ビューティー・ケア」「ヒューマン・ヘルス・ケア」「ファブリック&ホーム・ケア」「ケミカル」の4つの研究所があり、各研究所では市場の消費者ニーズとその基盤技術(シーズ)を融合させながら、革新的で価値の高い商品を生み出すための研究開発活動に日々取り組んでいます。

革新的で価値の高い商品を生み出す
ための研究開発に日々取り組む花王の研究チーム

オーストラリア人の生活習慣を徹底調査———オーストラリアでも市場調査を行っているのですか ?
 私たちは、オーストラリアの人たちがどのように洗濯をしているのか、1992年の豪州市場進出以来、その洗濯習慣を徹底的に研究しています。「家庭訪問調査」では一般家庭にお邪魔し、実際に主婦に洗濯をしていただき、何から何までつぶさに観察します。まずは洗濯物の分別。汚れ具合でするのか、色物でするのか、素材でするのか、そもそも分別しないのか等々。
 次に洗濯の方法です。汚れ物をどうやって洗濯機に入れ、洗剤は何を使い、洗剤をどのように投入するのか。そして洗う時間や水の温度を調べ、すすぎの仕方を観察します。
 さらには干すところまでやってもらいます。どのように干して、どうやって取り込み、どうたたんでしまうのか…、というような訪問調査を行っています。
 ただし、この訪問調査では定量不足。その後に行うのが「グループ・インタビュー」です。約8人を1グループとした数グループの消費者にご参加いただき、洗濯習慣のさらなるデータ収集と、訪問調査を元に我々が立てた商品開発のための仮説を検証していきます。
 また、試作商品を消費者にお渡しし、家庭で実際に使っていただく「モニター調査」も行います。
 これらの徹底的な消費者調査からオーストラリアの洗濯習慣を知るとともに、洗濯について持っている要望を明らかにし、我々の商品の中でどれが市場に合うのか、または何を付加すればいいのかを模索しながら、商品を開発していきます。

水道水を使って洗剤の水溶け具合を実験。大きなシェアを占める豪州競合ブランド2社(左・中央)と比べ、「BIOZET
Attack」(右)は瞬時に水に溶解した

豪州版アタックが“溶け残り”問題をズバリ解決———09年に投入した「BIOZET Attack」は、どのように開発されたのですか ?
 実は毎年の市場調査で、とてもおもしろいことが分かったのです。もちろん、消費者が洗剤に求めるものは、汚れ落ちの程度、仕上がりのふわふわ感、香りの良さや生成りが良さなどいろいろあります。しかし、その中で突出して目を引いた意見が“溶け残り”についての不満でした。
 その意見は「洗濯で洗剤の溶け残りがあると、そのまま服に洗剤が残ってしまう」というもの。そうなるともう1度洗うしかなく、「それがどれほど癪に障るか」「着ていて見つけると、もう1日憂鬱」などという意見が結構あったのです。
 私どものR&D和歌山研究所には、オーストラリアで販売されている洗濯機が集められています。商品開発のメンバーは、オーストラリアの水と同じ硬度の水、それらの洗濯機を使って、洗剤の溶け具合や洗浄成分の機能の具合を調べていくわけですが、オーストラリア人の悩みの種であるこの溶け残りの問題を、いかに解消するかを突き詰め完成したのが、「BIOZETAttack」でした。
 従来品に比べ、洗剤の水溶けが4倍も速いのが特徴で、素速く溶けることで洗浄成分が衣類のすみずみまで染み渡り、洗浄力もアップしました。発売後の評判は上々で、現在ではさらに、洗濯機のタイプ別に「トップローダー用」「フロントローダー用」を展開しているほか、それぞれに柔軟成分を配合したものも併せ、4つのラインナップでスーパーマーケットなどで販売しています。
 昨年は豪州進出以来最高の売上げを記録するなど、おかげさまでオーストラリアの多くの皆さんにご愛用いただけているようです。

トップローダー用・柔軟成分配合
フロントローダー用
フロントローダー用・柔軟成分配合

新着記事

新着記事をもっと見る

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る