カルチャー・アイ「Anime Festival In Sydney」

カルチャー・アイ

もっと知りたいオーストラリアの歴史や楽しみ方を、気になるイベントや、この国にまつわる文化作品を通してご紹介。毎日見る景色とは違った視点から、今まで知らなかったオーストラリアの魅力や奥深さに出合えるかも。

(取材・文=大山芙佳、写真=鈴木杏梨)

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「Anime Festival In Sydney」

オーストラリア国内最大手の日本のアニメーション流通・配給会社、マッドマン・エンターテインメントが主催する漫画・アニメの祭典「Anime Festival(アニメ・フェスティバル=通称AnimeFest)」が3月7日・8日、シドニー市内中心部のインターナショナル・コンベンション・センター(ICC)・シドニーで開催された。2016年にメルボルンで始まった同祭典は、今ではブリスベンやパース、メルボルンの4都市にて開催され、毎年多くの人びとが参加している。新型コロナウイルスの影響でゲストの変更もあったが、新たなゲストを迎え2日間を通じて大いににぎわった。

会場内展示会場では、漫画・アニメのグッズ、コスプレ用品を始め、クリエイターが創作するファン・アートなどを販売するブースや、販売前のゲーム・ソフトを楽しめるブースが設置され人気を集めた。また、特設ステージ上ではコスプレ・コンペティション、アイドルやアニメ・ソング歌手によるコンサートなどが行われた。他にも、コスプレを楽しんでいる来場者同士での写真撮影など、新たな友好の輪が広がる様子も見られた。

今回、日本からもゲストとして、有名なアニメーターやコスプレイヤー、J-POPアイドルなどが多数来豪。サイン会やトーク・ショー、ライブ・イベントなどに参加し、オーストラリアの日本の漫画・アニメファンを沸かせた。

今回のAnimeFest開催に当たり、来豪された人気アニメーター、キャラクター・デザイナーの足立慎吾さんのインタビューを敢行。キャラクター・デザイナーとして10年間、どのようにして活動を続けてこられたのか話を伺った。

アニメーター、足立慎吾さん

――オーストラリアには以前も来られたことがありますか?

今回の参加で、AnimeFestは4回目になりますね。ブリスベンとパース、メルボルンに行ったことがあります。シドニーは今回が初めてで、これで4開催都市の全て制覇したことになりますね。

――オーストラリアにも多くのファンをお持ちだと、登壇されてよくわかりました。

オーストラリアのファンは良い匙加減です。アメリカだとハイテンション、ロシアと日本人はシャイという感じで、国によってテンションの違いがありますね。
 画集をたくさん買ってくれたのもうれしかったです。

――足立さんが手掛けた作品は国内、海外を問わず人気がありますね。

自分が担当したからヒットしたという実感はあまりないですね。もちろん一生懸命やりましたが、それはどのキャラクター・デザイナーも同じです。すごくうまい人でも結果を得られないこともありますしね。
 アニメーターは、どの作品を手掛けるか選べないんです。僕は幸いなことに、『WORKING!!』、『ソードアート・オンライン』というヒット作2本も担当させてもらえました。アニメがヒットしたのは自分だけの力ではなく、さまざまな要素、例えば原作が人気だったとか、監督や会社の事情が合わさって、結果的にヒット作品に恵まれましたね。

――アニメーター、キャラクター・デザイナーの仕事を続けていく上で、一番大切だと思うことは何ですか?

選ばれる人になるためにはどういう仕事をしていけばいいのかなってずっと考えています。
 初めて手掛けた作品『ロックマン』から10年経ちますが、10年間キャラクター・デザイナーを続けていられる人は珍しいし、容易ではないのでぎりぎりやってこられて良かったと思っています。仕事をする上で、何か1つだけを大切にしているということはないですが、運が良かったとていうのもありますね。

――様々なアニメのキャラクター・デザイナーを務めていらっしゃいますが、制作する際に心掛けていることはありますか?

『ソードアート・オンライン』を2012年に最初に担当してから、シーズンごとに設定を何度も書き換えています。アニメの放映時期に合わせて、手法を変えたり流行に対応していく必要があります。
 プログラマーと似ていて、最新のソフトウェアについていくためにずっと勉強を続けなくてはならない。アニメ業界も同じで、「このソフトを使えるから」と立ち止まってしまうと他の人たちと差ができてしまう。周りと自分を比べながら常に更新できるように気を配っていますね。

――これまでデザインしたキャラクターで、特に印象に残っているキャラクターはいますか?

印象に残っているというか、恐らく1番好きなキャラクターは『WORKING!!』の山田ですね。サインの左下に小さなイラストを描くんですが、いつも山田を描いています。今日のサイン会でもずっと山田を描いていました(笑)。
 原作があるので、自分で一からキャラクターを作ったわけではないですが、唯一何も見ず、楽に描けるキャラクターですね。元々、原作の山田の性格も好きで、アニメだと13話あるうちの第7話、中盤から登場するんですが、山田が登場してからより面白くなりました。第2、3シーズンまであるんですが、第1話から山田が登場するのでいっぱい山田を描けて楽しかったですね。

――アニメはどのように作られているのでしょうか?

制作会社によって、制作スタイル、教育システムが違います。私が所属していたスタジオでは、制作現場はピラミッド状になっていて、1番多くいるのが今年入った新人なども含めて、習熟度の浅い人たちですね。その人たちが描いた原画が第1段階にあります。次のセクションで作画監督たちがいて、絵がうまかったりフィルムの経験がある人を配置し、その人たちが原画の顔や体を修正します。何人か作画監督がいる上に、各作品に1~2人、私のポジションである総作画監督がいます。
 総作画監督として、アニメ全話を通して安定したクオリティー、全体のバランスを守るために、場合によっては一から原画を描き直すこともあります。

――アニメーター、キャラクター・デザイナーの仕事で、1番難しいことは何でしょうか?

アニメの場合、キャラクター・デザインだけをすることはまれで、キャラクター・デザイナーと総作画監督がセットとなっていることが多いです。総作画監督はフィルムの制作作業として絵を描くのですが、これが1番難しくて体力を使いますね。何百枚も何千枚も原画を修正し、絵を描く必要があります。
また、デザイン設定をフィルムとして実現することも大変ですね。デザイン設定がどれだけ良くても、アニメとして見たときに実現されていないと意味がありません。絵のうまさや、流行を追いかけているデザイナーとしての要素も必要だし、絵を描くスピードとのバランスが大事ですね。絵を描くのが遅いと、制作のスケジュールにブレーキをかけてしまうことになります。

――海外のアニメで好きなものはありますか?

アメリカの3Dアニメの『RWBY(ルビー)』が好きですね。レッド、ホワイト、ブラック、イエローという色に因(ちな)んだキャラクターが登場し、魔物から人びとを守る「ハンター」になるために修行する学園ストーリーです。特にアクションが素晴らしいですね。
 この作品の主製作者、監督のモンティ・オウムをアマチュア時代から好きだったのですが、若くして亡くなってしまい、そのあとは残されたメンバーによって作られています。

――海外のアニメは制作のヒントになりますか?

海外のアニメは基本的にカートゥーンが多いので、マーベルの映画などかっこいい演出を参考にすることが多いですね。最近は3Dの作品が多いように感じます。近頃見たのでは、3Dアニメのフランス映画『レディー・バグ』が良かったです。
 手描きの作品では、去年見た映画で『ロング・ウェイ・ノース』というアニメが印象深かったです。ロシアが舞台で、北極で行方不明になっちゃったおじいちゃんを孫娘が探しに行くお話です。見ていてわくわくしましたね。近頃は3Dが主流だけど、手描きアニメもまだまだいけるんだと感じました。

――手描きと3Dだと、どちらのアニメのほうが好きですか。

あまりこだわりはないですね。両方好きです。制作の手法として、『スパイダーマン:スパイダーバース』みたいな、びっくりするような3Dと作画コラボも出てきましたしね。日本のアニメーターでもショックを受けた人はかなりいたと思いますよ。
 アニメ技術は日々進化していきますが、物語の内容の充実にも目を向けていきたいです。アニメは、話が面白ければ人気になると思っています。

――本日は貴重なお時間をありがとうございました。

あだちしんご
アニメーター、キャラクター・デザイナー。大阪芸術大学卒業後、XEBECからフリーを経て現在はA-1 Picturesに所属。『ロックマンエグゼBEAST+』で初めてキャラクター・デザインを担当し、『WORKING!!』シリーズ、『ソードアート・オンライン』シリーズ、『ガリレイドンナ』といった人気作でキャラクター・デザイン、総作画監督を務め大きな話題を呼ぶ。現在、年内公開予定『映画大好きポンポさん』の制作にも尽力している。

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