vol.16 Toteの終焉

メルボルン・ロック・シティ

メルボルン・ロック・シティ
vol.16

Toteの終焉

 隔月連載のため少し季節外れですが、謹賀新年。本年もよろしくお願いします。
 さて筆者の2010年は、 自身のプロジェクトToys of Noiseの6年ぶりのメルボルンでのライブでスタート。見に来てくださった100人余りの方々、ありがとうございました。また前回お知らせした日本のVampilliaのツアーも、メインのToteでのギグが300人余りを集めて満員となるなど大好評でした。
 さて、新年早々幸先がいいと思っていたのも束の間、とても悲しいニュースが飛び込んできました。メルボルンを代表するライブ・ベニューで名実ともに30年間メルボルンのライブ・ミュージック・シーンを牽引してきたToteが、1月16日をもって営業終了を宣言したのです。
 背景にあるのは、ここ数年メルボルンの市当局が行ってきた繁華街での暴力事件取り締まり強化です。この取り締まり強化のために、夜遅くまで営業するナイトクラブにはHigh Risk Conditionという特別な営業許可税のようなものが課されることになったのです。これはキング・ストリートなどに多い、いわゆるダンス・フロアを中心とするクラブが主な対象なのですが、なぜか警察官をして“最も静かな(事件の少ない)パブ”とまで言われたToteもその対象とされてしまったのです。Toteの客層は、あくまでも音楽ファン。暴力沙汰もほとんどない代わりに営業規模も小さく、とても前述の特別許可税のようなものを支払えないということで、経営者のブルース・ミルン氏は、何度も当局に抗議したり裁判所に訴えたりしたのですが、結局その決定は覆ることなく、ブルース氏は、精神的にも経済的にも追い詰められて今回の営業終了という苦渋の決断になったということです。
 30年の歴史を誇るオージー・ロック・シーンのアイコンともいえるベニューへのとてもフェアとはいえない扱いに対して、閉店翌日の日曜日には1,000人近くが抗議のためにTote前に集まりました。エイジやヘラルド・サンといった主要新聞も、当局の恣意的ともいえるHigh Risk Conditionの運用に疑問を投げかけています。今後当局が方針を改めない限り、2010年は、ロック・シティ・メルボルンにとって試練の年になるかもしれません。
Vampillia Web: www.myspace.com/vampilliaofficial
Tote Web: www.thetotehotel.com


NAOプロフィル
本名は安齋直宗。キーボーディスト、アレンジャーとしてTHE BOOM、坂田おさむなど数多くのミュージシャンのツアーやレコーディングに参加。テレビ・コマーシャルやベネッセの「しまじろう」シリーズなどの子ども向けの楽曲も多く制作している。2003年メルボルンに移り、バンドLAURAのプロデュースで「Beat Magazine Single of the year 2004」を受賞するなど、地元のインディーズ・シーンに欠かせないエンジニア・プロデューサーとして多忙な日々を送る。
■NAOウェブサイト:web.mac.com/nao24db

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