日常の隙間の時間を使って

Heritage Language  継承日本語教育を考える

 

日常の隙間の時間を使って

2012年も後半へと突入し、日本語学校での取り組みもいよいよ充実期を迎えています。JCS3校では今年も日本語スピーチ発表会を実施し、子どもたちの発表力の向上を目指してきました。校内発表会が終わり、このコラムが発表になるころに3校合同のコンテストが開かれる予定です。

このスピーチへの取り組みでは、共通テーマに沿って時間制限のある中で、いかに自分の言いたいことを日本語でまとめていくかが鍵となります。豊かな経験を基に言いたいことがあふれるほどある子、焦点を絞りぐんぐんと内容を深めていける子、ユニークな発想で構成を楽しんでいる子、日本語で考えるか、英語で考えるかに関係なく、十分に創造力と想像力を駆使し、楽しく充実した活動ができました。苦労して生み出したスピーチを全員の前で発表した達成感は、これからの日本語学習の大きな原動力になることでしょう。

こういったスピーチの取り組みは、実は毎日の生活の中にも取り入れることができます。そしてその積み重ねによって、言語感覚を磨き、自分の考えをどうしたら相手に伝えることができるかを敏感にキャッチできるようになるのです。毎日の生活では子どもとゆっくり話す時間がないほどさまざまなことに追い立てられますが、「子どもと過ごす時間を楽しむのは今しかない」ことを忘れずに、ちょっとした隙間の時間を見つけて親子で楽しい時間を過ごしながら言葉の学習ができればと思います。

語彙の広がりが認識力・思考力を高め、ひいては相手を理解する思いやりにも繋がります。リラックスした環境の中で、言葉のキャッチ・ボールを楽しむことができれば、いつか多くの人の前で堂々と自分の意見を発表できるようになるでしょう。「誰が・いつ・どこで・なぜ・何を・どうした」という5W1Hを押さえて話し合い、考えさせ、豊かな日本語での会話を親子で楽しめたら子どもたちの学習意欲もきっと高まることでしょう。また、毎日の学校での出来事を具体的に聞いてあげることによって話のポイントをつかんで話すことができるようになります。質問攻めにしないことも大切です。決して急がさず、話したい気分を高める雰囲気作りも必要です。一緒に言葉を探すこと、ほかの言い方を考えることも子どもたちが安心して日本語で話すための環境として重要です。

日本にいれば当たり前のように吸収していける日本語ですが、シドニーに暮らす子どもたちは親の努力なしに語彙を広げることは望めません。日本語学校に通わせるばかりでなく、日常のこんな取り組みも子どもを豊かに育てる上で必須なのではないでしょうか。


継承日本語教育を考えよう

JCS教育支援委員会
シドニー日本クラブ(JCS)会長、担当理事、日本語学校代 表者により構成され、JCS日本語学校3校の運営支援、継承 日本語教育の研究・普及に努めている。日本語スピーチコ ンテストや「継承日本語」に関するワークショップを開催
 
シーハン宏子(しーはんひろこ)
プロフィル◎文部省の派遣でシドニー日本人学校教師を3年間経験。その後、地元の小学校、ハイスクールで日本語指導。現在、JCS日本語学校NB校で継承語としての日本語を指導。IHシドニー日本人コンサルタント・講師

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