養殖サーモンとWAGYU BEEF

出倉秀男の日本料理と歩んだ豪州滞在記

出倉秀男の日本料理と歩んだ豪州滞在記
~オーストラリアでの日本食の変遷を辿る~

其の参拾九
養殖サーモンとWAGYU BEEF

 2021年を迎え、少しずつでも正常な生活を取り戻していけることを祈るばかりです。1993年、ミレニアム(2000年)という記念すべき年に、オリンピックの誘致が決まり、シドニーはオリンピックに向かって、街の風景を急速に変え始めました。シドニー郊外、オリンピック村周辺のホームブッシュ・ベイの開発で、スタジアム、そしてオリンピック・プール等が立ち並び、かつての東京オリンピック(1964年)、あの快晴の開会式の日を懐かしく回想し、ワクワクした事を思い出します。今年7月、東京オリンピックが無事開催され、オリンピック史に新たなページを付け加えるようになることを願ってやみません。

 当時、オーストラリアの料理界では日本料理への注目度が更に増し、店舗数も増え続けました。同時に、オーストラリアにおける養殖サーモンが日本のものとは異なり、寄生虫のコントロールが良くされており、刺し身やおすしなど生でも安全に食べられるという触れ込みがあり、更に脂ののったうまみも受け、大当たりしました。寿司種として、マグロにも勝る勢いでポピュラーになり、欠かせないものになり、今では日本料理以外でも多く使われています。

 この頃、オージー・ビーフが国外で知名度を高めつつあり、更にオーストラリア産のWagyuBeefと呼ばれる牛肉の国内での定着、及び日本への輸出拡大に向けてリサーチが活発になりました。私もフード・リサーチ会社からの依頼で、MLA(Meat&LivestockAustralia)と共にリサーチに協力しました。当時の日本における日本人の牛肉の嗜好と状況を知るため、日本から来られて間もない方、短期滞在者の日本人を対象に、学生や日本人学校のPTAの奥様方に協力して頂き、オージー・ビーフの試食、及び評価を頂きました。

 これらのステップを経てオージー・ビーフが日本へと進出する先駆けとなりました。オージー・ビーフは今日では立派な豪州の輸出品目の1つとなっております。ただその後、著書「Essentially Japanese, Cooking & Cuisine」(2008)という、日本食と文化のエッセイ本の取材で日本を旅して回った際、少々複雑な立場に立たされました。

 飛騨の和牛研究所を訪れたのですが、研究員の方から、日本の和牛についての歴史に加え、Wagyu Beefという言葉が世界で使用され、日本の和牛畜産業界が困惑しているという話を聞かされたのです。

 ただ、そのような厳しい状態でも日本の和牛への情熱と誇りを伺うことができ、本物の日本の和牛を世界に届けたいという情熱を感じました。2018年には、日本からオーストラリアに来られた和牛使節団の方々とご一緒し、日本の和牛プロモーションのお手伝いをさせて頂くことができ、たいへん光栄でした。

 これまでの生活の常識を覆すような2020年を経験した我々ですが、過去の経験などからの学び、そしてそれぞれの立場から生活を立て直す知恵を活用して、未来へとつなげていく活動をしていきたいと切に願っています。


出倉秀男(憲秀)
料理研究家。英文による日本料理の著者、Fine Arts of Japanese Cooking、Encyclopaedia of Japanese cuisine、Japanese cooking at home, Essentially Japanese他著書多数 。Japanese Functions of Sydney代表。Culinary Studio Dekura代表。外務省大臣賞、農林水産大臣賞受賞。シドニー四条真流文芸師範、四條司家師範、全国技能士連盟師範、日本食普及親善大使。2021年春の叙勲で日本国より旭日双光章を受章

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日豪プレス 配布場所   日豪プレス 新刊発行    Oishii Japanese Restaurant Guide

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