地方ごとに異なる多様な食文化

出倉秀男の日本料理と歩んだ豪州滞在記

出倉秀男の日本料理と歩んだ豪州滞在記
~オーストラリアでの日本食の変遷を辿る~

其の四拾伍
地方ごとに異なる多様な食文化

 初期の海外での日本料理といえば、「スキヤキ」「てんぷら」でした。しかし、近年、世界の食の言葉として、「すし」「さしみ」という新しいトレンドへの認知が進み、更には「会席/懐石料理」のスタイルが西洋料理へも影響を及ぼすと共に、日本料理が幅広く取り上げられるようになりました。また、近頃は「OMAKASE=お任せ料理」という言葉をよく耳にするようになりましたね。

 日本料理を楽しむ人たちが国内外で増える中、日本の地方の多様な食文化に魅了される人が増えつつあります。オーストラリアと比べると、土地のサイズが極めて小さい日本ですが、北は北海道から、南は九州、沖縄に至るまで、地域ごとに食文化が根付き、継承され、日本の食文化を多彩なものにしてくれています。

 この地方の多様性を、実際、自分の目で見て、感じ、私なりに日本食文化の魅力を読者の方々へ伝えたいと、長く付き合いのあったNew Holland Publishersの編集長に伝えたところ、興味を示してくれました。そして1年半の構想と現地での取材を経て、「Essentially Japanese, Cooking & Cuisine」(2008年)という本をまとめ上げました。

 日本を離れて半世紀近く、その間、日本の食生活スタイルも大きく変わりました。私の育った戦後の日本は、食べること、食べさせることが生活の中心でした。また、東京でさえ、漬物などといったさまざまな保存食を各家庭で作っていました。

 その後、50年ほどで、日本は豊かになり、食べるもの、スタイルはずいぶん変わりました。この本をまとめるに際し、改めて、どのように日本の食生活が変わったのかを考えながら、またそれを支える生産者の思いを聞く、貴重な旅をすることができました。

 また、日本の食文化を考える際、日本の四季を意識しました。春、桜が咲き始めるとニュースで桜の咲き始めを伝えるのに使われる「桜前線」、面白い言葉ですね。南北に延びる日本、桜が南から咲き始め、北へ北へと遂行していく情景を想像するだけでワクワクするのは私だけでしょうか。長くて厳しい冬がある地域、夏の暑さが長く続く地域、それぞれの地域での食生活の工夫、気候が違うと食文化も微妙に異なるという点も、日本の地域の食文化の楽しみ方でしょう。また、山に囲まれた地域、海岸線にある地域など、地形によっても変わります。更に、年齢層、都市と田舎での食の捉え方も違います。

 日本の国内の流通は整っており、食材の行き来がスムーズで、各家庭での食卓がとても豊かになっているのを目にし、日本を訪れるたび、感心させられます。また、その楽しみ方も、多彩で、飽きることがありません。エネルギッシュな、日本の食の産業には、目を見張るものがあります。しかし、その中で、日本の伝統を継承する人たちの努力、また、未来につながる農作物を育てることに懸命に取り組む姿など、地方で根付く、熱いエネルギーは、私自身を、未来へと押し上げてくれます。

 次回から「Essentially Japanese, Cooking & Cuisine」の取材の旅先で出会った人びとを紹介させていただきます。お楽しみに。

このコラムの著者

出倉秀男(憲秀)

出倉秀男(憲秀)

料理研究家。英文による日本料理の著者、Fine Arts of Japanese Cooking、Encyclopaedia of Japanese cuisine、Japanese cooking at home, Essentially Japanese他著書多数 。Japanese Functions of Sydney代表。Culinary Studio Dekura代表。外務省大臣賞、農林水産大臣賞受賞。シドニー四条真流師範、四條司家師範、全国技能士連盟師範、日本食普及親善大使。2021年春の叙勲で日本国より旭日双光章を受章。

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