ひな鳥を保護しないで

オージー・ワイルドライフ診療日記 第82回
ひな鳥を保護しないで

保護されて持ち込まれたひな鳥
保護されて持ち込まれたひな鳥

 春から夏にかけては、巣立ちを迎える前のひな鳥がたくさん保護されてきます。卵から孵かえったひなは、巣の中で親鳥が与えてくれる餌を食べて成長し、自分の体重を支えられる脚力が付くと巣から出始めます。羽は生えそろっていないため、木の上から飛び降りてしまうと巣には戻れず、1~2週間は地面で過ごすことになります。

 カランビン・ワイルドライフ病院で診察を受ける鳥のひなのほとんどが、「飛べない」という理由で保護されたもの。鳥は飛ぶものという概念からか、地面にいるひな鳥を見つけると「けがをしているのかも」と思うようです。しかし健康なひな鳥を保護し連れ去る行為は、飛ぶ練習中のひな鳥や、それを木の上から見守る親鳥たちからしてみれば、全く大きなお世話といったところでしょう。

 もちろん、庭 先で飼い犬や猫がひな鳥を傷付けたり、道 路の脇で車に轢ひかれるのが心配で、場所を移 動させてやりたくなる気 持ちは分かります。特にズグロトサカゲリ(Maskedlapwing)は道路沿いの芝地に巣を作ることが多く、車で通り過ぎる度にヒヤヒヤさせられるものです。かと言って、どんどん少なくなっている野生動物が生息できる環境の中から親鳥が選んだ場所ですから、そこから勝手にひな鳥を移動させたらどうなるでしょうか。親鳥はひな鳥は死んでしまったものとして、再び私たち人間の目から見たら非常に危険と思われるような場所で、次の巣作りと子育てに励むだけです。

 地面にいるヒナ鳥を見つけたら、明らかにけがを負っている場合を除き、しばらく様子を見るのが賢明です。親鳥は日中のほとんどは餌を集めに出掛けているので、親鳥の姿が見られなくても心配はいりません。それでも心配なら、野生動物保護団体や野生動物病院に連絡して、アドバイスに従ってください。またヤブツカツクリ(Australian brush turkey)のように、卵から孵った瞬間から一切親鳥の手を借りずに成長する鳥がいることも知っておいてください。

このコラムの著者

床次史江(とこなみ ふみえ)

床次史江(とこなみ ふみえ)

クイーンズランド大学獣医学部卒業。小動物病院での勤務や数々のボランティア活動を経て、現在はカランビン・ワイルドライフ病院で年間1万以上の野生動物の保護、診察、治療に携わっている。シドニー大学大学院でコアラにおける鎮痛剤の薬理作用を研究し修士号を取得。

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