冬の訪れはファガスの黄葉と共に/タスマニア巡り

第6回 タスマニア巡り
冬の訪れはファガスの黄葉と共に

クレイドル・マウンテンを鮮やかに染めるファガス
クレイドル・マウンテンを鮮やかに染めるファガス

 4月、街路樹や農園の木々が赤黄に色付き葉を落とし始めると他州よりも足早に、駆け足で秋が過ぎていきます。秋の風物詩でもある紅葉・黄葉ですが、実は豪州原産の樹木ではほとんどありません。温暖で厳しい冬を越す必要のないこの大陸の樹木は常緑樹のみ。プラナスやニレ、ポプラなどに代表される街路樹は、全て外から持ち込まれた外来種です。ところがタスマニアには、豪州で唯一の落葉樹があるのです。

 ファガス、和名では南極ブナと呼ばれる落葉樹で、タスマニアでも標高800メートル以上の冷涼で雨が多く山火事のないごく限られた地域でのみ自生する貴重な植物です。地元では、低く曲がりくねった樹形からタングルフット、落葉することからデシデュオスビーチとも呼ばれています。南極ブナの名は同じ葉の化石が南極で発見されたことに由来していて、同じナンキョクブナ科の植物がある南極、豪州、南米などが大昔は1つだったゴンドワナ大陸から分裂した大陸移動説の証拠として知られています。

 タスマニアにはもう1つマートルビーチと呼ばれる南極ブナがありますが、こちらは標高の低い場所にもあり常緑高木。「ブナ」とは言え、どちらも現在はナンキョクブナ科ナンキョクブナ属に属し北半球のブナとは異なります。ちなみに学名である“Nothofagus”は「偽のブナ」という意味。もともとは「南のブナ」を意味する”Notofagus”のはずが、発表時の誤植で大きく意味が変わってしまったという逸話も。

 ファガスが色付くのは4月後半から5月上旬にかけての短い期間。クレイドル・マウンテンやマウント・フィールド上部、セントラル・ハイランドの一部などが群生地として知られていますが、この時期に訪れれば山間を夕日のように黄色に染めるファガスを見ることができます。

 日本の紅葉のような艶やかさ、鮮烈さはありませんが、地元の人びとは緑の中に映える黄色に秋の到来を、そして葉が落ちるころに振る初雪に冬の訪れを強く感じるのです。

このコラムの著者

稲田 正人

稲田 正人

タスマニアのツアー・ガイド/コーディネーター。タスマニア大学で動物学・環境学を学んだ後、のんびりゆったりした生活感に魅せられ、そのままタスマニアに在住。現在は現地旅行会社AJPR(Web: www.ajpr.com.au)に勤務する傍ら、多過ぎる趣味に追われる日々を満喫中

 Happy Rich Harding legal 幌北学園 Japanaroo  kidsphoto
日豪プレス 配布場所   日豪プレス 新刊発行    Oishii Japanese Restaurant Guide Covid-19 最新情報

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL


新着イベント情報

新着イベントをもっと見る