2019年11月 ニュース/総合

準優勝を果たした東海大の「トーカイ・チャレンジャー」
準優勝を果たした東海大の「トーカイ・チャレンジャー」

東海大が2位フィニッシュ

ソーラー・カーの国際レース

世界最大級のソーラー・カー・レース「ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ」(BWSC)が10月13~20日、ダーウィンからアデレードまで豪州大陸を縦断する約3,000キロのルートで行われた。1人乗り競技用車両で最速を競う「チャレンジャー・クラス」では、ベルギー「アゴリア・ソーラー・チーム」が17日午前11時52分、アデレード市内のゴール地点に一番乗りして初優勝を飾った。

日本の東海大学チームは同日午後12時4分に到着して2位と健闘した。3位は米ミシガン大学チームだった。この他の日本勢は、国学院大が5位、名古屋工業大が8位、呉港高校(広島県)が13位だった。

東海大は2011年、13年大会で連覇の経験がある強豪の一角。同チームのドライバーの1人を務めたシド・ビカナバーさんはゴール直後、「序盤戦は厳しい暑さに悩まされ、疲労とストレスは限界に達した。各チームが最高の車体を投入していて、競技の水準は非常に高かった。トップ・チームの多くが脱落していく中で、ゴールにたどり着き、表彰台に立てたのは非常にうれしい」と話した。

10月17日、アデレードでゴールを祝う東海大チームの皆さん
10月17日、アデレードでゴールを祝う東海大チームの皆さん

同レースは1987年に第1回大会が開かれた。99年以降は2年に一度開催されており、今回が15回目。自動車技術の革新と、従来型の内燃機関から太陽光エネルギーへの代替促進が目的だ。各国の大学などのチームが、先端技術を持つ企業の協力を得てレース車を開発している。13年大会からは日本の大手タイヤ・メーカーのブリヂストンがスポンサーを務めている。

過酷な自然との戦い

大陸中央部の砂漠を縦断するBWSCは、最先端技術の実験場であると同時に、人間と過酷な自然との戦いでもある。ソーラー・パネルやバッテリーの容量、充電方法、車体の設計などに厳しい規制がある。走行できる時間帯は、太陽光が利用できる午前8時から午後5時まで。ドライバーは灼熱の太陽の下でエアコンのない狭いコクピットに座り、時速80~100キロで1日当たり約10時間、交代でハンドルを握る。各チームはその日の到達地点にテントを張り、野営する。

今回は24カ国から過去最高となる53チームのエントリーがあり、約1,500人が参加した。チャレンジャー・クラスには、厳しい検査をパスした27チームがスタートしたが、高温と強風に悩まされ、アデレードまで自力でたどり着けたのは11チームだけだった。

最多優勝回数7回を誇る名門のオランダ・デルフト工科大学チームは、ゴール直前に車体の火災で離脱した。前回17年大会まで3連覇を果たした同チームは17日朝、2位と2分差の首位でスタートしたが、ダーウィンから2,761キロ地点を走行中、車内で原因不明の出火を起こした。運転手は無事だったものの車体は全焼し、4連覇の夢は絶たれた。

前回5位だった同じくオランダのトゥウェンテ大学チームも16日、強風に煽られて車体が転倒し、棄権を強いられた。


ヴァージン・オーストラリアが羽田線に就航させる「エアバスA330-200」の同型機
ヴァージン・オーストラリアが羽田線に就航させる「エアバスA330-200」の同型機

ヴァージンが日本初就航へ

来年3月からブリスベン―羽田線

ヴァージン・オーストラリアが来年3月、豪州と日本の直通路線に初めて参入する。2020年3月29日からブリスベンと東京国際空港(羽田空港)の間で、毎日1往復の定期便を運航する計画だ。連邦政府の国際航空サービス委員会(IASC)が10月21日、豪州の航空会社に新たに割り当てられる羽田の2発着枠をめぐり、最大手のカンタス航空とヴァージンに1枠ずつ配分することを仮決定した。

羽田空港は2020年東京五輪・パラリンピックに向け、北半球の夏ダイヤが始まる同年3月29日以降、都心上空を通る新経路の運用を始める。同空港の国際線の年間発着回数は約3万9,000回増え、約1.7倍の約9万9,000回に拡大する。このため、日本の国土交通省は9月、同空港の昼間国際線発着枠を日本と海外の航空会社にそれぞれ1日当たり25枠ずつ、合計50枠を配分することを決めた。

このうち豪州線には、日本と豪州の航空会社にそれぞれ2枠ずつ、合計4枠を割り当てた。日本の2枠は、国交省が日本航空(JAL)と全日空(ANA)に1枠ずつ配分した。豪航空会社の2枠を巡っては、カンタスが2枠、ヴァージンが1枠をそれぞれIASCに申請し、2社の争奪戦となっていた。

IASCは仮決定で「価格競争と市場の活性化が望める」との観点から、カンタスが2枠を独占するよりも2社に1枠ずつ配分するのが妥当との判断を示した。IASCは24日まで意見書を募集した上で、近く正式決定する。

IASCによると、カンタスは既存のシドニー―羽田線の増便と、メルボルン―成田線の羽田振り替えをによる2枠の獲得を目指した。一方、ヴァージンはブリスベン―羽田線に「エアバス330-200」(ビジネスクラス20席、エコノミークラス255席)を就航させる計画を示した。

日豪間に直行便を就航する航空会社は、ANA、JAL、カンタス、カンタス傘下の格安航空会社ジェットスターに、ヴァージンが加わり5社に増える。現在、豪州から羽田に就航しているのは、ANAとカンタスの2社(いずれもシドニー発)のみ。ヴァージン以外の新しい羽田線のルートなど詳細は、年内の早い段階で明らかになる見通しだ。

日豪間の各社の直行便


ACT、嗜好用マリファナを限定解禁
50グラムまで容認――連邦法は禁止

首都キャンベラがある首都特別地域(ACT)議会は9月25日、個人が嗜好用に少量の大麻(マリファナ)所持と栽培を認める法案を可決した。連邦政府は2016年、医療用大麻を合法化しているが、豪州の地方政府が嗜好用大麻を解禁するのは初めて。2020年1月31日に施行する。成人1人当たり50グラムまでの乾燥大麻の所有、1世帯につき4本までの大麻草の栽培を容認した。規制を超える量の所持や栽培、水耕栽培などの人工的な栽培、販売、公共の場所での吸引、大麻の影響下での自動車の運転は、これまで通り違法となっている。

一方、連邦法は嗜好用大麻のいかなる量の所持や栽培を禁止している。クリスチャン・ポーター連邦法相は26日、ラジオ番組で「もしあなたがACTにいて、マリファナに手を出そうと思ったら気をつけた方がいい」と語り、連邦法が優先して適用される可能性に言及した。ただ、ポーター法相は、連邦政府が介入するかどうかについては、明言を避けた。


西シドニー・メトロ、来年建設開始へ

パラマタまで約20分――2030年開業予定

今年5月に開業したシドニー・メトロの車両。先頭には操縦室がなく、完全自動運転となっている
今年5月に開業したシドニー・メトロの車両。先頭には操縦室がなく、完全自動運転となっている

シドニー中心部(CBD)と西郊パラマタを約20分で結ぶ新鉄道「ウェスタン(西)・シドニー・メトロ」の建設工事が来年、始まることが決まった。NSW州政府が10月21日、発表した。7つの新駅の建設予定地も公表した。2020年に基礎工事、22年にトンネル掘削をそれぞれ開始し、11年後の30年開業を目指す。

新駅は、西側からウェストミード、既存のパラマタ駅北側、シドニー・オリンピック・パーク、ノース・ストラスフィールド、バーウッド・ノース、ファイブ・ドック、ベイズ地区(ロゼール湾周辺)に建設する。全ルートが地下を通る。州政府は新駅建設予定地の周辺で用地買収を進める。

ルートは確定していない部分も多い。東側の起点となるシドニーCBDの新駅の場所も未定で、今後詰める。州政府は総工費も明らかにしていない。

シドニー西部郊外は、都市化で人口が増加している。州政府によると、シドニーとパラマタを結ぶ既存の鉄道は、今後10年以内に輸送力が限界に達する見通し。新線が開業すれば、シドニーとパラマタ間の輸送力は2倍以上に増えるという。現在、約30分かかる所要時間を3分の2に短縮する。

鉄道インフラの刷新を加速

シドニーの鉄道網が整備されたのは英国植民地時代の19世紀からと古く、老朽化で遅延や運休が慢性化している。グラディス・ベレジクリアン州首相は「安全で信頼性の高い、速い鉄道でパラマタとシドニーCBDを結び、私たちの移動を将来に渡って根本的に変革するだろう」と述べ、メトロ網の整備をインフラの刷新につなげる考えを強調した。

シドニー・メトロは、豪州初の完全自動運転の新交通システムで、北西郊外と北部チャッツウッドを結ぶ「ノースウェスト(北西)線」が今年5月に先行して開業した。現在、チャッツウッドからシドニー湾トンネルを通り、市内中心部を経由して南西郊外バンクスタウンに至る第2期「シティ&サウスウェスト(南西)線」の工事を進めており、5年後の24年の開業を目指している。

西シドニー・メトロはこれに続く第3期工事。この他、26年開港予定の西シドニー空港と既存の鉄道網を結ぶ新線「シドニー・メトロ・グレーター・ウェスト」の計画も明らかになっている。メトロを延伸してシドニーと新空港を直接結ぶ構想もある。

連邦・州政府は、パラマタのさらに西方のバジェリーズ・クリークに西シドニー空港(26年開港予定)を建設している。空港に隣接した地区には、新都市「ウェスタン・シドニー・エアロトロポリス(ウエスタン・パークランド・シティ)」を整備中。シドニーCBD、パラマタに続くシドニー圏で3つ目の中核都市と位置付け、航空や防衛、製造業、ヘルスケア産業などの企業や研究施設を誘致し、約20万人の雇用創出を目指している。


ニュース解説

量的緩和やマイナス金利も視野に!?

今年3度目の利下げ――政策金利0.75%に

中央銀行の豪準備銀(RBA)は10月1日、減速感の強まる景気を下支えするため、政策金利を0.25ポイント引き下げて0.75%とした。既に現行制度下で史上最低だった同金利は、「ゼロ金利」という歴史的な転換点まであとわずかに迫った。利下げによる景気刺激効果が限界に近づく中で、豪州も量的緩和やマイナス金利などの「非伝統的金融政策」に踏み込むのだろうか。

シドニー市内にある豪準備銀行(Photo: AFP)
シドニー市内にある豪準備銀行(Photo: AFP)

ゼロ金利に限りなく近付く

追加利下げは3カ月ぶり。今年に入って6月、7月に続き3度目だ。RBAは2016年8月以降、政策金利を現行制度下で史上最低の1.5%に据え置いていたが、6月に2年10カ月ぶりに利下げに踏み切り、0.25ポイント引き下げて1.25%とした。7月にも2会合連続で利下げを行い、1.0%としていた。

ここに来てRBAが小刻みに利下げを行っているのは、景気の減速感が鮮明になっているからだ。豪統計局(ABS)によると、今年3~6月期の国内総生産(GDP)成長率は前年同期比1.4%増と、世界経済危機後の2009年9月期以来約10年ぶりの低水準。実質賃金の伸びが弱く、GDPの約6割を占める個人消費が景気の足を引っ張っている。

金融政策の目安としてRBAが重要視する物価と雇用も、軟調に推移している。今年3~6月期の消費者物価指数(CPI)は前年同期比1.6%とRBAのインフレ目標(2~3%)を下回っている。9月の失業率(季節調整値)は5.2%と前月比で0.1ポイント改善はしたものの、RBAが目標とする「完全雇用」(働く意思がある人は100%雇用されている状態)の4.5%には遠い。

フィリップ・ロウRBA総裁は1日、追加利下げの理由について「雇用の拡大と賃金の上昇を支え、インフレ目標達成をより確実にするため」と説明。「持続可能な経済成長と完全雇用、インフレ目標の達成を支えるために必要であれば、さらに金融緩和を行う用意がある」と述べた。

とはいえ、金利を上げ下げする従来型の金融政策においては、RBAが撃てる実弾はもう数発しか残っていない。ニュー・サウス・ウェールズ大学のリチャード・ホールデン教授によると「政策金利の引き下げが機能するのは0.25%まで」。だとすれば、利下げの回数はあと2、3回に限られる。

仮に次回の引き下げ幅が0.25ポイントであれば金利は0.5%。世界経済の見通しが好転せず、物価や失業率が大きく改善しない場合、来年上期のある段階で、豪州が経験したことのない「ゼロ金利」という臨界点に限りなく近づくことになる。

RBAは、クリスマス休暇の1月を除き、毎月第1週の火曜日に金融政策を決定する理事会を開く。早ければ、競馬の重賞レース「メルボルン・カップ」が行われる11月5日、追加利下げに踏み切る可能性がある。

市中に大量のマネー供給

金利の上げ下げによる従来型の金融政策が限界に近づく中で、にわかに注目を集めているのが「量的緩和」や「マイナス金利」などの「非伝統的金融政策」である。

経済紙「オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー」(AFR)は1日、「RBAは2020年中頃までに量的緩和を始める可能性がある」と報じた。同紙のサラ・ターナー記者は、複数のエコノミストの話として「来年6月までに政策金利が0.5%まで引き下げられるかもしれない。これを超えるとゼロ金利は目前に迫り、量的緩和政策の導入の根拠が強まる」との見方を示した。

量的緩和とは、金融政策を従来の金利操作ではなく「お金の量」に置き換える、比較的新しい手法だ。中央銀行が国債などの金融資産を市場から大量に買い入れ、市中に資金供給を増やすことで物価の上昇と経済の活性化を図る。紙幣を世の中にばら撒くイメージから「マネー・プリンティング」(紙幣印刷)とも言われるが、実際に紙幣を大量に印刷するわけではない。

世界で初めて量的緩和に踏み切ったのは、バブル崩壊後、物価が下落を続けるデフレに見舞われた日本だ。日銀は01年~06年に一度導入したが、デフレ脱却を果たせなかった。黒田東彦総裁の下で13年、「量的・質的金融緩和」(異次元緩和)として再開した。08年の世界金融危機後は、米連邦準備理事会(FRB)、英イングランド銀行、欧州中央銀行(ECB)なども実施した。

量的緩和の先には、マイナス金利も視野に入る。これは、民間銀行が持つ中央銀行の当座預金の金利をマイナスとし、預金者からいわば手数料を徴収することで資金を市中に回す政策だ。日銀は16年、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入した。マイナス金利は、ECBやスイス国立銀行など欧州の一部の銀行も導入している。

住宅市場は好転、減税効果は?

ロウ総裁はマイナス金利について明確に否定する一方、量的緩和の可能性は排除していない。同総裁は18日、米ワシントンの国際通貨基金で行ったスピーチの質疑応答で「豪州におけるマイナス金利や量的緩和について、推測でものを言うことは控えたいが、マイナス金利は全くあり得ないと考える」と述べた。同総裁は8月、連邦下院の経済委員会で「ゼロ金利の限界に達する可能性はある。可能性は低いが、あり得ないことではない。もし状況が十分であれば、我々は非伝統的なことを行う用意がある」と語っていた。

ただ、量的緩和の評価を巡っては賛否がある。世界金融危機後の景気後退局面で導入した主要国では一定の効果を挙げたとの意見がある一方で、実質的な「財政ファイナンス」(中央銀行が通貨を発行して国債などを直接引き受ける禁じ手)ではないかとの批判も一部にはあり、ドイツでは違憲訴訟も起きている。「劇薬」とされるマイナス金利については、金融機関の経営を圧迫するリスクもはらんでいる。

一方、豪国内では一連の利下げによるプラスの効果も現れている。持ち家率が高く、金利変動型住宅ローンが主流の豪州では、金融緩和はローン支払額の引き下げにつながることから、減税に相当する景気刺激効果が期待できる。1日付のABC(電子版)によると、今回の0.25%の利下げ幅が平均的な40万ドルのローンにそのまま適用された場合、支払い額は1カ月当たり57ドル、1年当たり682ドルそれぞれ安くなる。

相次ぐ利下げの効果で、下落していたシドニーとメルボルンの2大都市の住宅価格は既に上昇に転じている。住宅市場の回復に加え、今後は先の所得税減税による消費刺激効果の是非も明らかになってくる。RBAはこうしたプラス効果も見極めながら、金融政策を慎重に判断していくことになりそうだ。

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