与党労働党の歴史的勝利に終わったWA州選挙/政局展望

政局展望ナオキ・マツモト・コンサルタンシー:松本直樹

 3月13日に実施された西オーストラリア(WA)州選挙は、即日開票の結果、2017年の前回WA州選挙から、実に16~17%もの親労働党スウィングが発生し、予想通りにマクゴーワン率いる与党労働党が、カークップ率いる野党自由党を、文字通り完膚なきまでに叩きのめしている。

選挙帰趨(きすう)

 与党労働党の勝利が認識されたのは、選挙当日のWA州現地時間で午後6時半ごろ、すなわち、投票が締め切られ、開票がスタートしてからわずか30分後のことであった。労働党の圧勝ぶりはこのことからも明らかであろう。

 なお、カークップも落選したが、WA州の主要政党のリーダーが落選したのは、WA州選挙史の内の過去88年で初めてのことであった。

 さて、定数が59の州下院だが、選挙の直前の下院政党別勢力分布は、①与党労働党が40議席、②野党自由党は14、そして③自由党と緩やかな連携関係にあった保守系の国民党は5であった。ところが、今次選挙後には、①は53議席を獲得し、一方、②は何と2のみ、③もわずかに4となっている。

 全国的に見ても、国民党は常に自由党のジュニア・パートナーに過ぎない。ところがWA自由党は、WA国民党の議席数をも下回ったわけである。その結果、自由党は「野党」というステータスすら喪失することとなり、今後は国民党が「野党」を名乗ることになる。前回の17年州選挙で下野したものの、それまで頻繁に政権に就いてきたWA自由党にとって、今次選挙は前代未聞、驚天動地といった言葉でしか形容できないほどの、歴史的大敗北となった。

与党労働党の勝因/野党自由党の敗因

WA州与党労働党のマーク・マクゴーワン州首相
WA州与党労働党のマーク・マクゴーワン州首相

 今次WA州選挙における与党労働党の勝因/野党自由党の敗因としては、大きく以下の3点が指摘できよう。

 まず第1に、WA州労働党政府を率いるマクゴーワン州首相個人への評価の高さ、異例なほどのマクゴーワン人気である。マクゴーワンが州首相の座に就いたのは17年の前回州選挙であったが、第1次労働党州政権時代のマクゴーワンも、確かに、評価や人気は決して低くはなかった。しかしながら、昨年10月の州選挙で圧勝した、パラシェイ女史率いるQLD州労働党政権と同様に、20年初頭から本格化した新型コロナウイルスの世界的感染問題(COVID-19)によって、WA州労働党政権への評価、とりわけ州首相であるマクゴーワンの評価は一挙に高まっている。そして高評価の主因となったのも、パラシェイと同じく、妥協を許さぬマクゴーワンの州境封鎖政策であった。

 その背景には、感染問題が沈静化しつつあったとは言え、やはり「第2波」の懸念もあり、多くの政府が慎重となっていたこと、また連邦医療関係者の見解とは異なり、州の医療関係者は、州境の封鎖が感染防止の観点から重要と、引き続き州等政府に助言していたとの事情があった。ただ、WA州やQLD州政府の場合には、純粋な感染問題への配慮以外にも、政治的な理由、思惑が存在しており、それが州境問題における、他州等政府よりも対立的、攻撃的な言動となって顕れていた。

 具体的には、QLD州では昨年の10月31日に、WA州では今年の3月13日と、近々に州選挙が予定されていたこと、一方、厳格な州境封鎖は地元の州民には受けるとの事情であった。そして州民に受ける背景には、独立自尊の気風が強く、また東側の大州に対抗心を燃やすWA州はもちろんのこと、実は東側に位置するQLD州の州民も、WA州民に近いメンタリティーを持っているとの事情があった。そのため、州境問題でのマクゴーワンの他州政府へのタフ路線は、WA州民の喝采を浴びてきたのだ。

 確かに、仮に感染問題が発生していなかったとしても、今次WA州選挙での労働党の勝利は確実であったように思える。しかしながら、これほどの規模の勝利は、ウイルス感染対策を通じて一挙に高まった、マクゴーワン人気なくしては有り得なかったと言えよう。

 与党労働党の勝因の第2は、WA州政府の財政状況の好調さを通じた、労働党の経済運営能力への評価である。WA州政府は州政府に過ぎないものの、感染問題による世界経済の低迷、それによって惹起(じゃっき)された政府歳入の減少、他方で、財政出動による莫大な額の歳出によって、他国政府等の財政状況は逼迫(ひっぱく)している。そういった中、WA州のそれは大きく異彩を放っている。すなわち、選挙キャンペーン中に公表された最新の財政統計によると、WA州の今年度(FY 2020 / 21)のアンダーライング現金ベースの財政収支は、何と31億豪ドルの黒字になるものと予測されているのだ。

 もちろん、こういったWA州財政、ひいてはWA州経済の好調さは、僥倖(ぎょうこう)によってもたらされたものでもある。まず、WA州の重要な産出/輸出資源である鉄鉱石の国際価格の高騰である。その結果、WA州政府の資源ロイヤリティー収入が大きく増加しているのだ。

 ただ、こういったロイヤリティー収入の増加は、州境封鎖ではタフ路線を貫いてきたマクゴーワンも、資源企業の操業についてはかなり寛大で協力的、すなわち、鉱業部門技能労働者の資源生産地/操業地へのアクセスについては、緩い規制のままであったことに起因するものでもある。その点で、好調なWA州財政も、労働党政府の「得点」とみなし得るものである。

 WA州財政が好調な2つ目の「外因」は、WA州の財・サービス税(GST)分配額収入が安定、かつ高レベルにあることだ。その背景には、連邦保守連合政府がGSTの分配額/徴収額比率に「フロアー」を設けたとの事情がある(注:ゆくゆくは最低でも75%の「フロアー」を設定する計画。現在でも既に70%)。いずれにせよ、かつては資源ロイヤリティーが大きく増加すれば、逆にGST分配額が減少するという、WA州には極めて不愉快な状況にあったわけだが、連邦保守政府のおかげで、WA州により「公平な」分配制度が導入され、それが現在の好調な財政状況にもつながっているのだ。

 最後に、与党労働党の第3の勝因としては、野党自由党の不甲斐なさが挙げられる。まず、致命的なダメージとなった党内不和の状況である。周知の通り、今次WA州選挙までわずか4カ月ほどを残した昨年11月22日、WA野党自由党のリーダーであったハーベイ女史が、党内からの強い圧力に抗(こう)し切れず、自ら辞任を余儀なくされるという政変が発生している。その理由は、既に昨年の時点で、今次州選挙での労働党の大勝が予想されていたにもかかわらず、一向に危機的状況を改善できないハーベイへの不満が党内で高まっていたからであった。そこで野党自由党としては、「これ以上失うものはない」との思いから、「ハーベイ降ろし」に走ったわけだが、これはむしろ事態を悪化させた可能性が高い。

 というのも、選挙を間近に控えた時期の「お家騒動」によって、有権者は「党内も治められない政党に州は治められない」と一層考えることになったからだ。また一部の自由党議員が、起死回生を狙って、新リーダーに未経験、未知数なカークップも据えたことも大失敗であった。

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