【特集】サッカーAリーグ─進撃のWSW、連覇に資格なし!?

【特集】サッカーAリーグ2013

進撃のWSW、連覇に死角なし!?

 小野伸二のウエスタン・シドニー・ワンダラーズ(WSW)は、11月22日のアウェー戦で首位攻防戦に敗れ、今季初黒星を喫したものの依然、好調を保っている。WSWを中心に前半戦の山場を振り返る。 文=植松久隆(本紙特約記者/スポーツ・ライター)  写真=Richard Luan

強さは本物? WSW快調な滑り出し

11月22日のAリーグ第7節、小野伸二のウエスタン・シドニー・ワンダラーズ(WSW)は、アウェーでのブリスベン・ロア(ロア)との前半の山場となる首位攻防戦に敗れ、今季初黒星を喫した。ここまで、7試合を消化して4勝2分1敗という数字は、出遅れから一気にまくった昨季から比べれば、でき過ぎなくらいで、開幕ダッシュに成功したと言っても差し支えあるまい。それでも7節終了時点では、WSWに土を付けたロアが、勝ち点差1でわずかに上回り、WSWは2位に甘んじている。


間違いなく、Aリーグ史上最も熱いワンダラーズ・サポーター


首位攻防戦となったアウェーのロア戦を振り返っておこう。試合は、開始早々からホームのロアがペースを握り、開始わずか4分に動く。前節までのケガから復帰を果たしたばかりのロアのエースFWバリシャが、個人技でWSWのディフェンスを切り裂き、ホームのファンに自らの帰還を大いにアピールする先制ゴールをねじ込む。さらに19分には、現役オーストラリア代表のMFフラニッチの技ありのボレー・シュートで、WSWを2−0と突き放す。

しかし、WSWも負けずにロア陣内に攻め込み、28分にはFWブリッジがDFノースのゴール前でのミス・パスを見逃さずにカット。そのボールを受けたFWサンタラブが冷静にゴール右に流し込み、1点差に迫る。その勢いで、さらなる追撃態勢に入りたいところでWSWをアクシデントが襲う。前半41分に小野が足の付け根の違和感で、大事をとって予期せぬ途中交代をしたのだ。

その後のWSWは、試合を作れる小野の存在なしで相手ゴールを割ることができず、そのまま2−1で前半を折り返した。後半も、何度か良い形でゴールに迫るも、追加点を挙げられないという展開。そして、試合終了の笛を聞こうかというロスタイム92分、途中出場のロアの若手FWヤボアが思い切りの良いミドル・シュートでダメ押しのゴールを決めて、WSW万事休す。この敗戦でWSWは今季初黒星を喫して、ロアに首位を明け渡した(第7節終了時点)。

気になる小野ケガは軽傷か

 


ブリスベン・ロア戦前に浮かぬ顔を見せる小野。この時点で脚の違和感を持っていたのだろうか

やはり気になるのが、小野のケガの状態。本人によれば、試合前から少し違和感があった左脚の付け根の張りに大事を取ったとのことだが、ポポヴィッチ監督も「グロイン(脚の付け根)の問題で、さほど深刻なものではない」と試合後に断言。さらには、筆者が試合直後に本人を直撃した際には「(回復が)来週のいつごろまでかかるかは分からないが、そんなに問題はないと思う」とシリアスな状態ではないことを語ってくれたので、検査を待たずして断言は避けるべきではあるが、まず軽傷であることは間違いないであろう。

この突然の交代で分かったことは、WSWにとって小野は代えの利かない存在であるという紛れもない事実。それは、この試合で小野が退いた後のWSWが、決定機を作り出すのにも苦慮していたことにも表れている。小野の負傷が長引かないことが、WSWがさらに好調を持続していくための条件となるので、小野にはしっかりケガを治して、万全の状態で復帰をしてもらいたい。

チームの誰かの故障を語る時に、背中合わせで論議の対象になるのが「選手層」。昨年のWSWは、快進撃中にも唯一の死角としてその選手層の薄さが取り沙汰されていた。周りの評論家やファンが気付くことに若き知将ポポヴィッチ監督が気付いてい


鋭い視線でピッチを見つめるポポヴィッチ監督

ないわけはなく、ACL参戦で試合数、遠征が増えることも考慮して、シーズン・オフには懸案の選手層の薄さの解消を意図した補強が行われた。その最たる例が、元豪州代表のDFマシュー・スピラノヴィッチの獲得であろう。

昨季のWSWの堅牢な守備陣の中心には、キャプテンのビューチャンプとトポー=スタンリーのセンター・バック・コンビが君臨していたが、今季は開幕当初はそのコンビでスタートしたものの、開幕直前に獲得したスピラノヴィッチが、チームにフィット、フィジカルが戻ったのを見極められた第5節からは、ビューチャンプに取って代わった。ベンチをも外れたビューチャンプに代わって、ゲーム・キャプテンはトポー=スタンリーが務めている。

連覇の鍵は厚くなった選手層

11月16日のメルボルン・ビクトリー戦の勝利に笑顔を浮かべる小野


やはりカギを握るのは小野のパフォーマンスだ

スピラノヴィッチが出場するようになってからは、3試合3失点(ロア戦以前の2試合は完封)とまずまずの結果だが、確かに去年のシーズン優勝に大きく貢献したキャプテンを凌駕するにはまだインパクトが足りない。しかし、昨年はベテラン2枚が故障したらいったいどうするのだというくらいにセンターバックの枚数が足りていなかったのが、今季はともに代表クラスの選手が1つのポジションを争うという強豪チームでは当たり前の状況が、WSWにも現出したことをポジティブにとらえるべきであろう。

故障が長引いたFWヘルシ、そしてFWユリッチが欠場しても、ユーティリティのMF/DFコールが右サイドをカバー、センターFWではサンタラブが体を張る。ベンチには、ここ数シーズンはケガがちでブレークし切れていない未完の大器FWミニコンや、左SBが本職もDFポジションならどこでもこなせるベテランのへフナンも控える。ボランチでも、ムーイ、ポリャック、ラロッカのローテーション起用が問題なく機能するなど、ポポヴィッチ監督の用兵の幅は間違いなく広がっている。ACLが始まると同時に、クラブは未体験の過密日程に直面するが、この時に今回の補強の意図に誰もが気付くことになる。出場機会を失った感のあるベテランのビューチャンプにも、今後必ず出番は戻って来るだろう。

小野に、代わりの選手が入ってもきちんと役目を果たすことができるWSWの強みについて尋ねるとうなずきながら「そうですね。今日もボランチを変えたりとかいくつかあっても、(代わりに入った選手も含め)前半20分くらいまで勢いよく来ていた相手に呑まれることなく、1点を取り返し、さらに良いチャンスを作ることはできた」と手応えを語ってくれた。


安定した成績で人気も上がってきたブリスベン・ロアにサポーターも喜びを見せる

試合後のポポヴィッチ監督は、「試合序盤の20分を除けば、選手のパフォーマンスには満足している。しかし、その20分で与えられた2失点という罰が重くのしかかり、最終的に結果を得られなかったのは残念」と語ったが、無駄な失点を防ぎ、今後も負けないサッカーを続けていくことで、WSWの名は順位表の上位にいつものように収まり続けるはずだ。

いずれにしても、長いシーズンのまだ序盤。もっと良くなるWSW、もっと盛り上がるAリーグ、ますます見逃せなくなってくる。

 

順位表

順位 試合数 ポイント
1  ブリスベン・ロア 7 5 0 2 14 5 9 15
2  ウエスタン・シドニー・ワンダラーズ 7 4 2 1 9 6 3 14
3  ニューキャッスル・ジェッツ 7 3 3 1 9 7 2 12
4  シドニーFC 7 4 0 3 9 10 -1 12
5  メルボルン・ビクトリー 7 3 2 2 11 8 3 11
6  セントラル・コースト・マリナーズ 7 2 3 1 8 7 1 9
7  パース・グローリー 7 2 3 2 6 7 -1 9
8  アデレード・ユナイテッド 7 1 2 4 8 12 -4 5
9  ウェリントン・フェニックス 7 0 3 3 6 9 -3 3
10  メルボルン・ハート 7 0 2 5 3 12 -9 2

ウエスタン・シドニー・ワンダラーズ試合日程

 8節  12月1日(日)5PM  VS ウェリントン・フェニックス  ウエストパック・スタジアム
 9節  12月7日(土)5:30PM  VS メルボルン・ハート  パラマッタ・スタジアム
 10節  12月14日(土)7:30PM  VS ニューキャッスル・ジェッツ  ハンター・スタジアム
 11節  12月23日(月)7PM  VS セントラル・コースト・マリナーズ  パラマッタ・スタジアム
 12節  12月28日(土)7:30PM  VS メルボルン・ビクトリー  AAMIパーク

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