良い円安と良い円高

夢をかなえる豊かな明日への投資術

第34回 良い円安と良い円高


文=諸星きぼう

アベノミクス、というより昨年4月の日本銀行による異次元金融緩和によって急激に円安が進み、今後も円安に向かう、と予想する人が多いようです。

日米金融政策の対照性、つまり米国は大規模金融緩和を収束させ、やがて金利を引き上げるであろう一方、日本は今後も金融緩和を継続、さらにはその規模を拡大するであろうと予想しているからでしょう。

実際昨年はドル円80円割れの水準から100円台と急激に円安が進みましたが、これは円安というよりも、これまでの過度の円高の巻き戻しという側面が強いのではないでしょうか。その証拠に、米国がテーパリングを粛々と実施しているにもかかわらず、ドル円は100円を超えたところで足踏みをし、さらなる円安に向かおうとしていません。マーケットが勝手に日銀の追加金融緩和を期待し、それがなされないことで失望しているという評価もできるしょう。

しかし、結局ドル円相場は、米国の金利状況、景気状況に左右され、日本の金融政策などは付録のような要因に過ぎないと大局的に見えてしまうのは、私だけでしょうか。

私もニュースレターの中などで言及しますが、「良い円安」とか「悪い円安」といった表現があります。悪い円安は分かりやすいと思います。日本の財政状況の悪さから、円が売られてしまう場合の円安を指しています。これは「信用リスク要因」から円安とも呼べるものです。

では、良い円安とは、どんな状況でしょうか。

世界景気が良くなり世界的に資金需要が高まったり、日本以外の世界への投資需要が高まると、万年(?)低金利の円を借り入れ、外貨へ替える取引が急増します。いわゆる円キャリー取引ですね。

円キャリー取引では、円を売って外貨を買う取引を伴うので、円安が進行することになります。世界的に景気が良く円安が進むのですから、輸出が増大しさらには内需への波及も徐々に起きてきて日本の景気が良くなることが多かったのです。当然株価も上昇します。ですから、日本ではこうした円安を歓迎するムードが強くなっています。アベノミクスで日本の景気が良くなると感じているのは、アベノミクスの政策が功を奏しているのではなく、単に円安が進んでいるからと考えられます。

それでも先ほど説明した「悪い円安」よりこの「良い円安」の方がいいですよね。しかし、この良い円安による景気拡大、いや結局のところ世界景気拡大の恩恵を受けたことによる景気拡大は、世界景気に何か起きるとすぐに萎んでしまい、さらには円キャリー取引の巻き戻しにより、円が買い戻され円高となり、景気悪化に拍車をかけることになります。

こうしたことを反映し、日本株式は景気敏感のレバレッジ株式のようになります。つまり、世界景気が良くなると株価が世界株式の中で突出的に上昇し、悪くなると雪だるま式に下落するという傾向となります。

従って、ここで「良い円安」は単に日本国民にとって、その時だけ心地良く感じる円安に過ぎないと言えるでしょう。

投資家サイドの観点で見れば、株価が上昇しても円安になれば、実質的な資産増加分が減殺されてしまいます。前回のコラムでも書きましたが、昨年1年間で日本株式は50%程度上昇しましたが、円安で20%超実質資産増加分は減殺されていますから、日本株式保有の資産増加効果は20数%となり、米国株式上昇率とさして変わらなかったのです。

では、どういった株式・為替ミックスが最適でしょうか?

それは、景気が良くなり株価が上昇する局面で円が買われ円高になることだと考えます。米国では、景気が良くなり株価が上昇している時は、ドルも買われドル高になっています。景気が良くなり一般国民も喜び、投資家も株価上昇とドル上昇の恩恵をフルに受けることになります。

米国ではなぜ、株も上がりドルも上がるのでしょうか?

というより、それが当たり前の姿なのです!景気が良くなるという「景気要因」が働くので当然通貨ドルも上昇します。さらに、景気が良いので資金需要が高まり金利が上昇するので、「金利要因」からもドルが上昇します。金利が上昇しているにもかかわらず株価が上昇を続ける場合は、持続的な株価上昇につながります。なぜなら、高くなった金利を支払っても資金を借り入れ、事業投資に回した方が儲かるという好循環が生まれるからです。

翻(ひるがえ)って日本はどうでしょうか?

この20数年間、景気が良くなると円安になってしまいますが、それは金利が上がらないことに主因があるのではないでしょうか?「金利要因」では円を買えません。金利が上がらないということは、景気が良くなっても国内に資金需要があまりないということの裏返しでもあります。この金利の正常化こそ、日本経済の正常化であり、今後日本の発展の鍵があるのではないでしょうか?

「良い円高」、景気が良く株価も円も上昇するような状況が起きるような日本経済の復活を期待したいところです。

しかし、当面日銀は金融緩和をやめることはできないでしょうから、本デケードにおいては「良い円高」を望むべくもなく、次デケードに迫る「悪い円安」で日本財政が持つのかと考えると、とても心許ないですね。

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著者プロフィル もろぼしきぼう

投資教育家。(社)証券アナリスト協会検定会員。1988年東京大学経済学部卒。メガバンク、外資系銀行時代は東京、ロンドンでデリバティブ・トレーディングを実践。独立後、日本人の金融リテラシー向上のため投資家教育を行っている。現在、賢明な投資家の集まりであるインベストメント・サロン(http://www.ideal-japan.com/)を運営、投資アドバイスを行っている。著書に『お金は週末に殖やしなさい』(2010/10)、『大恐慌でもあなたの資産を3倍にする投資術』2009/3)。オフィシャル・サイト: www.ideal-japan.com ブログ「自由人ダンとオーストラリア」: ameblo.jp/daichi-megumi ブログ「諸星きぼうの豊かに生きるための思考法」: daichi-megumi.blogspot.com Facebook: www.facebook.com/#!/kibo.moroboshi

 

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