【新連載】もっと知りたい身近な法律問題

法律は何となく難しいもの――そう思ってはいませんか?しかし法律は私たちの日常生活と切っても切り離せないもの。このコラムでは毎月、身の回りで起こるさまざまな出来事を取り上げ、弁護士が分かりやすく解説を行います。

第1回:不倫は法律違反?

まず、オーストラリアの婚姻制度では日本とは抜本的に異なるコンセプトを採用しており、1975年から「No fault system」を採用しています。このシステムはほかの先進国と同様で、離婚裁判において婚姻関係が破綻に至った事由は必要とされず、また、原則として裁判時には考慮されないということです。

日本人の方は驚かれるかもしれませんが、平たく言えば、婚外性交渉を罪に問う法律自体がオーストラリアでは存在していないということです。その理由の1つとして、オーストラリアのような多民族社会における夫婦の形は多種多様ですから、そもそも婚前性交渉を良しとしない人たちもいるでしょうし、イスラムの方のように文化的・歴史的に一夫多妻を受け入れている方たちもいます。

特に後者の場合ですと、事実婚である第2夫人や第3夫人と婚外性交渉があったとしても、当事者はもちろん、親族全員がそれを受け入れている場合があります。ですから、オーストラリアの法制度では夫婦生活の有り方については当人同士の価値観と良識を尊重するスタンスをとっており、”Adultery”(姦通罪)に対する罰則規定は何十年も前に廃止されています。

No fault systemを採用しているオーストラリアの婚姻制度では不貞行為を働いた側が一方的に離婚を突きつけることもできてしまいますが、離婚に際して相手のことを悪く言ったり、いがみ合ったり、必要以上に敵対する必要がないといったメリットもあります。

では、不倫をしてもいいのか?これはそういうことではありません。既婚者である身分を詐称して相手をだます行為については刑事処罰を含め請求の対象になりますし、仮に法律に触れないから何をしても良いという考えはいかがなものかと思います。倫理的に正しいのかは個人の価値観に委ねられているといっても、周りに迷惑をかけるような行為は処罰の対象となり得ます。

1つの考え方として、親に言えないようなこと、そして、自分に子どもができた時に胸を張って伝えることができないような行為は正しい行為ではないと私は思っています。

ちなみに慰謝料について、オーストラリアでは詫び料・迷惑料という曖昧な概念が存在しておらず、日本のような“言ったもの勝ち”のような請求概念ではありません。そのため、不貞行為に基づく精神的苦痛に対して1万ドルや2万ドルという額を請求することは難しいというのが実情です。

もし、婚姻生活における不倫を許すことができないという場合はプリナップやFamily Law Act 1975の90条に基づく契約書を作成しておくのがよろしいでしょう。


弁護士:神林佳吾(神林佳吾法律事務所代表)
1980年東京生まれ。95年渡豪、2004年クイーンズランド大学経営学部・法学部、同大学大学院司法修習課程修了後、弁護士登録。以後10年以上にわたって訴訟を中心に応対

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