事件現場でのスマートフォン撮影 – 身近な法律問題

法律は何となく難しいもの――そう思ってはいませんか?しかし法律は私たちの日常生活と切っても切り離せないもの。このコラムでは毎月、身の回りで起こるさまざまな出来事を取り上げ、弁護士が分かりやすく解説を行います。

第33回:事件現場でのスマートフォン撮影

スマートフォンの普及により事件や事故など、やじ馬が集まる現場では撮影を始める人たちを多く見掛けるようになりました。今回は「事故の被害を食い止めたり被害者を救済しないで撮影を続けていた場合、これが何らかの罪に問われるのか」という質問がありましたので解説したいと思います。

まず、現行のQLD州の法律では、一般人が公共の場で暴行を受けている人を助けたり、車両事故や火災現場などにおいて積極的な救護活動の義務はなく、街中で悲鳴を聞いたからといってその場を立ち去ったとしても法律で裁かれることはありません。

ただ、自分が事故に遭った車両の運転手の場合であったり、被害に遭っているのが自分の子どもや妻であったり、事件・事故の当事者と関連しているような場合には救護義務が発生します。あくまで、単なる通行人の傍観行為は処罰しないということです。

また、通行人による撮影行為についても、現行の法律では公共の場での撮影が咎とがめられることはありません。盗撮、私有地での撮影、警察官が職務上の権限で撮影を禁じる場合などを除き、処罰の対象になることはありませんが、道徳的には良く思わない人が多いのではないかと思います。

では、全く逆のパターンですが、通行人が善意で他人を事故現場などから救助しようとして、失敗してしまった場合には罪に問われるのでしょうか? もし、そうであるなら最初から関わらない方が良いという話になってしまいますね。

これは「Good Samaritan laws」(良きサマリア人法)といって、「災難に遭ったり急病になったりした人(窮地の人)などを救うために無償で善意の行動を取った場合、良識的かつ誠実にその人ができることをしたのなら、たとえ失敗してもその結果につき責任を問われない」という趣旨の国際法があり、QLD州では2007年に「The Civil Liability(Good Samaritan)Amendment Bill 2007(Qld)」で正式に採用されています。

少なくとも、現在の刑法の思想では、「単なる通行人の傍観行為までは処罰しない」ということになっているのですが、困っている人を見掛けたら助けてあげるのが良いでしょう。

ただし、くれぐれもご自身が危険に晒されることのないよう最善の注意を払った上での対処が肝要です。


弁護士:神林佳吾
(神林佳吾法律事務所代表)

1980年東京生まれ。95年渡豪、2004年クイーンズランド大学経営学部・法学部、同大学大学院司法修習課程修了後、弁護士登録。以後14年以上にわたって訴訟を中心に応対

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