製造物責任保険(PL保険)

Q 近々シドニーに現地法人を設立して事業をスタートする予定です。日本の親会社から電化製品を輸入して、豪州国内で販売をしたいと考えています。製品は全世界を対象に製造物責任保険(PL保険)をかけていますので、こちらシドニーの現地法人では、同保険の手配の必要がないと認識していますが、問題はないでしょうか?
(50歳会社員=男性)

 

A 結論から言いますと、当地オーストラリアにおいても、PL保険の手配が必要となります。PL保険の補償対象は、被保険者の提供する製品が原因となる第3者の“身体のケガや死亡”または“財物の破損”に対して、被保険者が負担する賠償責任となります。ここで、注意すべき点は2点です。

1つ目は、賠償請求者は誰に向かって裁判を起こしてくるか分からないという点です。例え製品を製造したのは日本にある親会社であったとしても、オーストラリア在住の原告者は、製造元である当該企業の親会社ではなく、オーストラリアにある現地法人もしくはその代表者に対して訴訟を起こしてくるケースがほとんどです。その際、在豪法人はこちらの法律的にその案件を日本の親会社に振りかえることはできず、在豪法人にて受けて立つ立場にいます。さらにオーストラリアの法律においては輸入業者は製造者と同じ立場として見なされることになっています。この点を考えますと、在豪法人による現地で対応可能なPL保険手配が重要です。

2つ目は、PL保険のカバーには係争費用が含まれるという点です。訴訟国家とも言われるオーストラリアにおいては、責任の所在に関わらず賠償金を求められての訴訟に巻き込まれるケースが少なくありません。仮に、ほかの企業に責任があったような場合においても、巻き込まれた訴訟に対してかかった弁護士費用を含む係争費が多額になる場合があります。つまり、最終的に無責となる案件においても、PL保険の活用で保険会社および保険会社が手配する弁護士と相談しながら、必要経費を保険でカバーしつつ対応していくことができ、この点においても現地PL保険は在豪法人にとってたいへん有効となります。

なお、こちらでのPL保険手配をする場合に、もし日本などで保険手配が既にされている場合には、バックアップ・カバーがあるとして保険料の軽減を図ることができます。

以上2点を鑑みますと、日本の親会社のPL保険のみならず、オーストラリア所在の現地法人にてもPL保険を手配することが望まれます。

この他にも考慮すべき点として、在豪法人が販売した製品が、北米などもっと賠償意識の高い国に渡った場合のPL事故への対応にも十分な準備が必要であることや、他国からPL保険を手配せざるを得ない場合に、その保険約款がどこの国の法律に準拠して適用されるものか、についての注意が必要であることなどが挙げられます。

PL事故への迅速で的確な対応は、企業経営にとってたいへん重要なことであると言われています。実際の保険手配には、専門家のアドバイスを受けて進められることお勧めします。


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斉藤 大(さいとう だい)
エーオン・リスク・サービス・オーストラリア ジャパン保険サービス部

 

世界最大手のリスク・コンサルタント会社豪州法人の日系専門部署で日々日系企業顧客の法人・個人保険アレンジ、事故処理などを担当

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