【税とビジネス】その不正は本当に意味があるのか


その不正は本当に意味があるのか

現金で給料を支払う、通称「キャッシュ・ジョブ」。これで人件費を抑えようとするビジネスは多くあります。現金払いにしてその従業員がいなかったことにする(公式記録を残さない)ことで、最低賃金を下回る給料で働かせ、スーパーアニュエーション(スーパー)の支払いも免れるという案配です。

しかしその不正は本当に得なのでしょうか。実は、一概に得ではないのです。

当然、いつかバレたり、従業員に密告されるリスクがあります。その結果、何万ドル、何十万ドルを支払い、罰金を科され、裁判所で裁かれ、ウェブサイトなどで世界中に公告されることになります。わざわざ危険を冒してまで不正をして、本当に得なのかを税金面から考察してみましょう。

現在、豪州の最低賃金は17.70ドル。業種や職務によってこの最低賃金は上がり、有給休暇のないカジュアルの場合は25%増しとなりますが、ここでは最低の17.70ドルで計算します。

17.70ドルの給料に対し、スーパーは9.5%の1.68ドル。スーパーは給料にプラスして払われるので、1従業員の1時間あたりの人件費は合計の19.38ドルです。

法人(会社)でビジネスをしている場合、法人税率が(スモール・ビジネスの場合)27.5%(2017会計年度)となります。人件費は立派な経費ですので、給料をきちんと払うことで税金が減ります。この19.38ドルの給料に対する税金の減額(税効果)は、19.38ドルの27.5%の5.33ドルとなります。実質、手元から出ていくお金は「19.38−5.33ドル=14.05ドル」。つまり、現金で15ドル払うくらいなら、きちんと払った方がバレた時のリスク、税効果を考えると得になるのです。13ドルでも1.05ドルのためにバレるリスクを取るかどうかも考える必要があります。

19.38ドルが増えると税効果も増えていきます。24ドルなら税効果は6.6ドルとなり、5.33ドルより高くなります。ここでは、税率が一定の法人(会社)で最低賃金の例を用いましたが、多くの業種で通常、この17.70ドルを上回ります。レストランではこの額は最初の3カ月のみの適用となり、以降は額を上げる必要があります。ソール・トレーダー(自営業者)でも各該当税率で同じことが言えます。

これに加え、スーパーの支払いは3カ月ごと、給料からの税金の源泉徴収の支払いは(ビジネスにより)1カ月や3カ月ごと。つまり人件費の一部の支払いが先に延び、資金繰りも良くなります。この税効果を踏まえた支出の考え方は、人件費に限らず他の経費に関しても大切です。6月は会計年度末。頑張った従業員にボーナスを支給することで節税につなげることも可能です。

ここ豪州で日本人が日本人を搾取することが起こらないに越したことはありません。



賀谷祥平
◎競馬騎手、Ezy Tax Solutions Pty Ltd代表取締役。豪州公認会計士、米国公認会計士、登録税理士。James Cook University MBA、University of New England会計学修士、上智大学経済学部卒。2001年上智大学在学中に、騎手を志し豪州の競馬学校に入学。03年、NSW州Coffs Harbour競馬場にて騎手デビュー。現在はNorth QLDで騎乗している。
Web: www.facebook.com/shoheikaya

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る