【インタビュー】丸紅オーストラリア会社社長─梶谷誠氏

進出日本企業
PROFILE ● かじたに・まこと 丸紅オーストラリア社長
<略歴>京都大学理学部(地質学)1980年卒業後、丸紅入社。軽金属部で主にアルミ事業に携わる。1989年〜95年丸紅ベネズエラ会社勤務。軽金属部長、金属資源部門長代行を経て2011年より現職

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第8回

丸紅オーストラリア会社

梶谷誠 社長

日本の大手総合商社の一角を占める丸紅。そのオーストラリア事業は石炭や鉄鉱石、小麦、畜産物といった一次産品から発電や送電、鉄道などのインフラに至るまで非常に幅広い。丸紅オーストラリア会社の梶谷誠社長に事業の現況と展望について聞いた。

(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

 

「市場としてのポテンシャルにも着目
資源権益とインフラへの投資に注力

 

——まずは丸紅グループ全体の概要について教えてください。

初代・伊藤忠兵衛が1858年、近江の国(現在の滋賀県)で麻布の出張卸売業を始めたのが原点です。後に伊藤忠商店と丸紅商店などに分かれますが、1940年代にいったん合併、終戦直後の49年に再び分割されます。高度経済成長期には主力事業の軸足を繊維から重工業製品へと移し、72年に現在の形態となっています。「商社冬の時代」と呼ばれた低迷期を経て、2000年代以降はV字回復を達成しました。13年3月期の純利益は前年度比19.5%増の2,056億9,600万円と過去最高を更新するなど、直近の業績も好調に推移しています。今年は米穀物大手ガビロンを買収して世界的な「穀物メジャー」の仲間入りを果たします。対日輸出も予定されている米国のシェール・ガス権益に投資するなど成長分野への投資を加速させています。

 

石炭を主力に電力・鉄道にも強み、今後鉄鋼石も


風力発電事業(SA州)
 

ゴールドコースト市の路面電車PPP事業(QLD州)
 

石炭採掘事業(QLD州)

——日本にとってオーストラリアは、鉱物や食糧などの資源供給先としてきわめて重要です。丸紅の主なオーストラリア事業にはどのようなものがありますか?

オーストラリアに進出した1954年当時は羊毛の対日輸出が中心でした。その後は重工業製品や鉄鉱石、石炭、製紙原料のウッドチップ、穀物、牛肉の対日輸出など事業の領域を拡大していきました。近年は、資源投資の比重が高まるとともにその周辺事業を拡大させつつ、インフラ事業の重要性も増しています。

資源関連では、QLD州レイク・バーモント炭鉱など10カ所の石炭事業に出資しているほか、国内有数の鉄鉱石開発事業であるWA州ピルバラ地区の「ロイ・ヒル」プロジェクトに参画(12.5%)しています。アルミニウム製錬事業も合弁で手がけています。

食糧の主力事業としては、豪州産小麦などの穀物の輸出や、NSW州北部レンジャーズ・バレーにある3万頭規模のフィードロット(肉牛肥育場)などがあります。植林事業への出資や製紙原料ウッドチップの輸出、WA州ダンピアの製塩事業への参画、化学品や太陽光発電パネルの輸入なども行っています。

インフラ事業では、石炭火力やガス火力、風力などの発電事業で豊富な実績があります。NSW州とQLD州間とVIC州・SA州間の送電網や、WA州と北部準州内の天然ガス・パイプラインも所有しており、QLD州内のガス配送事業にも参画しています。

鉄道も積極的に推進している分野の1つです。現地事業会社を通して機関車・貨車のリース事業に参画しているほか、ゴールドコーストでは官民パートナーシップ(PPP)のトラム(路面電車)建設・運営を日本企業として初めて受注しました。このほか、海水淡水化の技術を持つ現地企業への出資、日立建機の鉱山用車両の輸入販売、シドニー北部のアーターモンとホーンズビーにあるホンダの自動車販売店の経営なども手がけています。

 

競争力高い権益の長期保有に価値

————オーストラリア事業での丸紅の強みは何でしょうか?

商品価格に左右されやすい資源部門への依存度が相対的に低く、バランスが取れていることがあります。世界的に丸紅のインフラ事業の競争力は高く、オーストラリア国内の電力事業の持ち分発電量も563メガワットと日本の総合商社の中ではトップです。

オーストラリアは資源だけではなく、建設機械や貨車のリース、水事業といった資源の周辺事業、電力などのインフラ事業も含めて、総合的に取り組むことが可能です。PPP事業も有望です。PPPは政府部門と企業が責任を分担する制度ですから、低コストだけでは勝負できません。当社とパートナーの契約履行能力や信頼性の高さが強みになっています。

一方、商品価格の下落を背景に資源ブームの終えんを指摘する声もありますが、長い目で見ると競争力の高い鉱山を保有し続けることは価値があると考えています。需要は中国の景気をはじめコントロール不可能な外的要因に左右されます。しかし、世界的に見てオーストラリアは資源が偏在している国の1つであり、中国に足りない鉄鉱石と原料炭を豊富に埋蔵しているので恵まれています。

 

穀物大手買収でシナジー効果に期待

——将来に向けたオーストラリア事業の課題と展望を聞かせてください。

まず当面はロイ・ヒルの操業開始(2015年)に向けて作業を着々と進めていきます。小麦を主力とする穀物事業では、ガビロン買収のシナジー効果を出していきたいですね。ガビロンはオーストラリアから年間約200万トンの穀物を輸出しており、丸紅の従来の取り扱い分と合わせて規模のメリットを享受できます。インフラ関係ではこれまでの実績を生かし、鉄道や道路などの案件を積極的に受注していきたいと思います。

中長期的には、現時点のポートフォリオにはない石油・天然ガスの権益に参画することが課題です。食糧関連では、同じく空白になっている酪農事業への参入も果たしたいと考えています。これらを手にできれば、豪州産商品のメニューがひと通り全部そろうことになります。

また、今後は市場としての価値にも注目したいと思います。オーストラリアは1人当たり国内総生産(GDP)が主要国中トップ・クラスという高い購買力に加え、継続的な人口増加が見込まれる成長市場です。近年は住宅や化粧品、飲料、保険など生活関連産業の日本企業の進出例も増えています。商社も資源供給だけにとどまらず、消費市場としてのオーストラリアにもっと目を向けていきたいですね。

<会社概要>
●企業形態:丸紅が100%出資する子会社
●代表者:梶谷誠社長
●拠点:シドニー、メルボルン、パース
●従業員数:52人
●主な事業:鉄鉱石・アルミ・食肉・小麦・チップなどの輸出、建設機械・産業機械・化学品などの輸入、および3国間貿易、豪州内関係会社への投融資

<沿革>
1954年 シドニーに駐在員事務所開設
1960年 丸紅オーストラリア会社設立
 


 
<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:臥薪嘗胆
2. 今読んでいる本:「重力とは何か」(大栗博司)、「戦後史の正体」(孫崎享)、「イギリス産業革命と近代地質学の成立」(小林英夫)
3. 豪州の好きなところ:身の危険を感じないところ。フレンドリーな国民性
4. 外から見た日本の印象:豪州における日本の地位が以前より低下しているのが残念
5. 好きな音楽:キャロル、中島みゆき、ユーミン、AKB48
6. 尊敬する人:湯川秀樹
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:特になし
8. 趣味:将棋(3段)、水泳、サッカー観戦、三国志
9. 将来の夢:マイアミで老後生活
10. カラオケの十八番:タイガー&ドラゴン(クレイジーケンバンド)

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