カルチャー・アイ「The Temper Trap」

CULTURE EYE カルチャー・アイもっと知りたいオーストラリアの歴史や楽しみ方を、気になるイベントや、この国にまつわる文化作品を通してご紹介。毎日見る景色とは違った視点から、今まで知らなかったオーストラリアの魅力や奥深さに出合えるかも。

(文・構成=関和マリエ)

今回のピックアップ▶▶▶ The Temper Trap

昨年の大晦日、テルストラ社主催のカウント・ダウン・イベントで大トリを務めた「The Temper Trap(テンパー・トラップ)」は、メルボルン出身のオルタナティブ・ロック・バンドだ。爽やかで壮大なスケールを感じさせるサウンドは、水面に波紋が広がりさざ波を起こす様を想起させ、ダギー・マンダギ(ボーカル)の中性的で透き通るような声がそこに溶けこむ。シンプルで美しいメロディーは流行歌のように時代を直情的には反映しないが、パワフルなビートと合わさり心の奥に入り込み、長く聴かれるのにふさわしいものだ。

ロックという言葉に男っぽく激しい、騒がしい音楽を思い浮かべるかもしれないが、オルタナティブ・ロックという分野はそのイメージにとどまらず時に静かな音楽をも含む。時代や風土にこだわらない音楽的普遍性に挑み、前衛的な要素のあるものを指すこともあり、商業性の強い音楽とは一線を引いた姿勢を感じさせる。

The Temper Trapは2006年に全豪デビューの後、08年にはイギリスやアメリカの大型音楽フェスティバルに出演し存在感をアピール。09年に日本でも「SUMMER SONIC」などでライブを披露し、1人のメンバーが曲によりフレキシブルに別の楽器を担当するなど、自由なムードだが綿密に計算されたステージで観客を魅了した。

The Temper Trapのサウンドを説明する際に「The ColdplayやU2のような」と形容されることがある。これらはイギリス出身の大御所バンドで、空間的な広がりを感じさせる音色やアレンジが特徴だ。実際にThe Coldplayのコンサート・ツアーの前座にThe Temper Trapが抜擢されたこともあり、親和性の高い音楽同士と言えよう。

その上でThe Temper Trapのメロディーはよりシンプルに研ぎ澄まされ、無国籍な印象を生み出している。白人メンバーの中でただ1人ボーカルがインドネシア系オーストラリア人であることも、時代やこの国の多国籍性を反映しているだろう(白人と有色人種の混合バンドを王道としてあまり歓迎しない空気が過去の音楽業界にはあった)。活動展開も非常に現代的で、ストリーミング・ライブなどにも積極的。ビデオ・クリップは現代アートのインスタレーションのような作品が目立つ。現在は3枚目のアルバムをじっくり制作中で、シューズ・ブランド「New Balance」とタッグを組んだユニークなプロモーションを展開しており、豪州が生んだ注目アーティストの新作に大いに期待したい。

オンライン放送されたThe Temper Trapのライブ映像(2012)
オンライン放送されたThe Temper Trapのライブ映像(2012)

ファースト・アルバム「Conditions」の先行シングル「Sweet Disposition」(2009)。オーストラリアの主要音楽チャートでアルバムは最高9位、シングルは14位と好記録でのCDデビュー を飾った
ファースト・アルバム「Conditions」の先行シングル「Sweet Disposition」(2009)。オーストラリアの主要音楽チャートでアルバムは最高9位、シングルは14位と好記録でのCDデビュー を飾った
バンド名を冠したセカンド・アルバム「The Temper Trap」(2012)はプラチナ・レコード(7万枚販売)に
バンド名を冠したセカンド・アルバム「The Temper Trap」(2012)はプラチナ・レコード(7万枚販売)に

ボーカルのDougy Mandagi(「Sweet Disposition」ミュージック・ビデオより)
ボーカルのDougy Mandagi(「Sweet Disposition」ミュージック・ビデオより)

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