編集部イチ押し! 5月の新作映画をチェック

辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじとともに注目の新作を紹介 ! レイティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。

ベルリン・シンドローム
Berlin Syndrome
ドラマ、スリラー/MA15+ 4月20日公開予定 満足度★★★★

隊長が観た!

国際都市、ベルリン。豊かな歴史的背景に、アートからナイト・クラブなどのカルチャー・シーンまでさまざまな魅力がミックスされた街だ。個人的ベスト映画の1つ『ベルリン・天使の詩』、異常な疾走感のみ(良い意味で)の『ラン・ローラ・ラン』、心温まる『グッバイ、レーニン!』など、ベルリンを舞台にした映画も数多くある。

最近では『ヴィクトリア』が面白かった。2時間を悠に超える映画をワン・ショットで、しかもベルリンの街をあちこち動き回るという挑戦的な映画。個人的には作品前半の、対象にカメラが密着した映像が醸し出すライブ感が好きだった。後半になるにつれドラマとしては盛り上がるけれど、前半のスローなウダウダした雰囲気が薄れてしまったのが残念だった。

そして今回紹介する『ベルリン・シンドローム』は、ベルリンの旅行者が犯罪に巻き込まれるスリラーで、『ヴィクトリア』と同じく女性が主人公。『ヴィクトリア』の冒頭で出会う相手が違ったら、こんな展開になったかもしれないと思わせる内容だ。

オーストラリアのフォト・ジャーナリストのクレアは、ホリデーで訪れたベルリンの道端で魅力的な男性アンディーと出会う。そして、彼に惹かれたクレアは、彼のアパートで一晩を過ごすことになるが……。舞台はベルリンだが、室内の撮影などはメルボルンで行われており、原作もオーストラリアの女性作家メラニー・ジョーステン。監督のケイト・ショートランドは、アビー・コーニッシュ主演の『15歳のダイアリー/Somersault』で注目を浴びた女性監督。主演はアデレード出身のテリーサ・パーマーで、最近の『ハクソー・リッジ』主演などで今やすっかりハリウッド・スターだ。


作品はいわゆる「監禁モノ」だが、会話が多くないのでクレアの心の動きがいまいち分からず、アンディーに対する感情が読み取れない。銀行強盗と人質の間に芽生えるストックホルム症候群(犯人と長時間過ごすことで人質が犯人に対して同情や好意を抱くこと)のようだが、クレアがそのふりをしながらアンディーの隙を狙っているのか、たぶん小説であればはっきりするところが映像だけでは判断出来ないところが多かった。また、このような猟奇的なドラマは「犯人がいかに壊れているか」も見ものだが、そこもちょっと弱かったかな? もっとのけぞるようなド変態な一面を見せても良かったかも。でもその辺りが抑えられているところなど、全体として落ち着いたトーンでまとめているところは高評価だ。

主演のテリーサ・パーマーは、やはりちまたで言われるようにクリスティン・スチュワートに似ている。クリスティンから棘を抜いた感じ? 今回の彼女は『ハクソー・リッジ』と違って、目の下にくまもあってちょっと辛気臭く、アンディーから見て魅力的だったのかという疑問も少し。とは言っても、ストーリー上、ブリスベンから来たことになっていて、初めて雪を見るシーンの目のキラキラとした輝きなど、良い役者さんであることは間違いない。まあ、ちょっと強引なところもあるけれど、先の読めない展開を十分に楽しんだ1本。


ゴーイング・イン・スタイル
Going In Style
コメディー/M 公開中 期待度★★★★

ウィリー、ジョー、アルバートは同じ会社で働き長年苦楽を共にしてきた親友同士。勤務先が経営難に陥った結果、銀行によって退職年金が凍結されたと聞いた3人は怒り爆発。たまたまジョーが銀行強盗を目撃したのをきっかけに、自分たちの金を取り戻すべく自ら銀行強盗を企てる。人生最後の大活劇に挑む3人を演じるのは、モーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、アラン・アーキンという名優ばかりで、まさに老練の味と絶妙なテンポで笑いを誘う。日本でも生活苦の高齢者による万引きが増えているというが、奇想天外のコメディー・タッチながら、そうした高齢者問題も浮き彫りにする作品。スマートフォンの操作にも手こずる老年3人組が、果たして宿敵の銀行に泡を吹かせることは出来るのか。


エイリアン:コヴェナント
Alien: Covenant
SF、スリラー/TBC 5月11日公開予定 期待度★★★★

異星人を意味するエイリアンという言葉を日本に定着させることになった1979年の衝撃作『エイリアン』。同作でSFにホラー要素をたっぷり加味したリドリー・スコット監督が、その前日譚といわれる『プロメテウス』(2012年)に続き、再び同じ宇宙の暗闇を描いた今作。遠く離れた惑星に向かっていた宇宙船コヴェナント号のクルーは、まだ誰も降り立ったことの無い星を発見する。パラダイスに違いないと思ったのもつかの間、そこには悲劇的な終わりを迎えたプロメテウス号のたった1人の生存者デイビッドがいて、暗く危険に満ちた世界が待ち受けていた。出演は、『スティーブ・ジョブス』(2015年)でジョブスを演じたマイケル・ファスベンダー、ジェームズ・フランコ、ガイ・ピアース他。


ポーク・パイ
Pork Pie
クライム、アクション/M 5月4日公開予定 期待度★★★

ニュージーランドを舞台にしたロード・ムービー。たまたま知り合ったはみ出し者の男女3人が、北のオークランドから南島の先端の町インバーカギルまで、盗んだ黄色のミニで突っ走る。警察とのカー・チェイスあり、お色気あり、けんかあり、といったところは月並みと言えば月並みだが、風景もジョークもニュージーランドらしさがいっぱいで楽しそう。出演は『ホビット』3部作のフィーリ役で知られるニュージーランド出身の男優ディーン・オゴーマン、同じくニュージーランド人のジェームズ・ロレストン、そしてオーストラリア人女優のアシュレー・カミングス。監督のマット・マーフィーの父ジェフが1981年に撮影してニュージーランドで人気を博した『グッバイ・ポーク・パイ』のリメイク。


ゲット・アウト
Get Out
ホラー/MA15+ 5月4日公開予定 期待度★★★★

アメリカのコメディアン、ジョーダン・ピールが初監督したホラー。若い黒人男性クリスは、白人の恋人ローズに両親を紹介すると言われ、郊外の大邸宅に招かれる。「人種のことを気にする両親じゃないわ」と言われていたものの、そこには黒人の召使がいた。両親が開いた大がかりなパーティーの出席者は白人ばかりな上、クリスに異様な関心を示して逆に居心地が悪くなる。果たしてクリスは歓迎されているのか、それとも罠に掛けられているのか。人種間に横たわる心理的な緊張をベースにした「レイシズム・ホラー」。なお、監督は当初もっと恐ろしいエンディングを考えていたが、警官による黒人の射殺が相次ぐなど、現実世界がホラーを上回るかのようだったため、ソフトに変えたのだとか。


★今月の気になるDVD★

リトル・ミス・サンシャイン
Little Miss Sunshine
コメディー、ドラマ 101分(2006年)

前出の『ゴーイング・イン・スタイル』主演のアラン・アーキンが、孫娘の面倒を見ながら陰でコカインを吸っている不良老人を演じてアカデミー助演男優賞を受賞した作品。ニュー・メキシコに住むちょっと“壊れた”家族が、2日間1,300キロのロード・トリップを通して再びつながっていく物語だ。

成功の秘訣を説くセミナーを企画販売しながら本人は全く成功していない父、ニーチェ哲学にはまり誰とも口をきかない10代の息子、美少女コンテストに憧れるまだあどけない7歳の娘、恋人に捨てられて自殺を図り退院したばかりのゲイの叔父、毒舌を振りまいて隠遁生活とは程遠いおじいちゃん、そしてこんな家族1人ひとりにはっきり意見を言って正直に向き合う母。この一家が、2日後に迫ったコンテストに急遽出場が決まった娘のために会場の南カリフォルニアへ、ポンコツのマイクロ・バスをレンタルして向かうことに。

そこからは6人が乗り込んだ狭い車内が映画の舞台になるのだが、何気ない会話で人生哲学が語られたり、仲は悪いがやっぱり家族だねと思える心理が描かれるあたりに、アカデミー脚本賞の受賞を納得する。

見どころは、コンテスト主催者や観客だけでなく家族もギョッとする、おじいちゃん仕込みの孫娘のパフォーマンス。これをピークに家族の旅はハッピー・エンドへ。(編集=YO)

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