旅立ちの祝杯を上げよう

ベン・ホルトの豪州ワイン物語

ベン・ホルトの豪州ワイン物語

最終回 旅立ちの祝杯を上げよう

この10年間、本コラムでは毎月さまざまなワインについて書いてきたが、ルイス・キャロルの詩「セイウチと大工」に出てくる豚のように、この連載もいよいよ羽ばたく時が来た。

本コラム「豪州ワイン物語」は、オーストラリアの歴史の分岐点となる話から始まった。この時にも話した「たった2年の違いで、オーストラリアはイギリスではなくフランスの植民地になるところだった」という事実はあまり知られていない。この「もしも」が実際に起きていたら、現在のこの国のワイン産地やブドウの種類、ワインの消費がどんな風になっていたのか、いろいろと想像が広がる。

この初回以降、ほかにもワインの歴史はもちろんのこと、1830年代に大活躍した「オーストラリア・ワインの父」と言われるジェームズ・バズビーの話、希少なものから一般的なブドウ品種の基礎知識、優秀な若手醸造家のワインにかける情熱などを皆さんにお伝えしてきた。また、ロゼ・ワインをロマンスの話に例え、カレーでも合うワインや食事との相性、技術的なところでは、ワイン・コルクとスクリュー・キャップの違い、ワイン醸造におけるオーク(樽、板、チップ)の役割などに触れた。知っていると便利なオーストラリア独特のワイン用語、シャルドネは「シャーディー」、デザート・ワインは「スティッキー」、泡ものは「バブルズ」などという用語レッスンを紹介したこともあったし、オーストラリアの主なワイン産地に足を運びテロワールを体感した模様をレポートしたりもした。作年からは国外へ足を(話題を)伸ばして、旅をするようにフランスのシャンパーニュやボルドーやスペイン、イタリア北部のワインのことをお伝えし、さまざまな形で皆さんと「飲みニケーション」を深めることができたと思う。なんと、この10年で皆さんにお伝えしたワインに関する記事は、100を越えた。

長年読んでくださっていた読者はいくつか覚えてくれているかもしれないが、下記に、さらに思い出深いものをリストアップしてみた。

見かけで判断するべからず
 ひどいデザインや、つまらないワイン・ラベルの下に宝石が隠れていることもある。一番変なラベルのワインをあえて選んでみよう。

うまい話には裏がある
 裏ラベルに書いてある言葉はマーケティングの専門家が書いているので、話半分信じるくらいで良い。これは僕の専門分野なので、実はそのあたりはよく知っているのだ。

軽めのものを
 アルコール度数14パーセント以上のものは、醸造家が魔法でも使ってない限りかなり重いワインになる。度数が12.5~13.0度のを狙うと翌朝の目覚めも良いはずだ。

慎重になりすぎない
 ブドウ品種の名前を発音できなかった時や、ラベルに書いてあるのか全く分からない時こそ冒険を。Gewurtz Traminer(ゲヴュルツ・トラミネール)やTxakoli(チャコリ)はその良い例だ。

「彼と同じものを」
 ワイン・ショップやボトル・ショップのお兄さんに、昨夜の食事に合わせたワインを聞いてみよう。恥ずかしがらずに質問してみてほしい。他人が飲むワインは意外と面白い。

赤ら顔を恥じることなかれ
 ワインの世界ではピンクは最高の色とされている。何度もロゼの話をしたが、それには理由がある――。単純にロゼはおいしいからだ! さあ、つべこべ言わずに友達のグラスに注いであげよう。

小規模生産者のワインを楽しもう
 小規模生産者のワインを探し、財布が許す限り彼らのワインを飲もう。毎回美味しいワインに出合えるという保障はないが、面白味はある。

いつも柔軟な心を持つべし
 年をとると好き嫌いがはっきりして好奇心がなくなる。しかし常にオープン・マインドでいれば、この先もワインを楽しめる。

ルールはなし
 格式や伝統だからといってワインの楽しみ方を束縛しないこと!気の向くままにグラスに氷を入れたり、余った赤と白ワインを混ぜて自家製ロゼに挑戦したり、グラスの形状に合わせず違うワインを注いでみたり…。自分流に楽しもう!

シェアすべし
 最後にお願いがある。今までで一番美味しいワインに出合ったと思ったら、写真を撮って僕のFacebookに投稿して共有してほしい!

人生を生きていると、これからもさまざまな場面でワインの選ぶ機会があると思う。皆さんは今後、ワインの旅を続けていく上で、どのような道を辿り、どのような探究を続けていくのだろう。上に書いたリストが、少しでも皆さんの参考になれば、何よりも嬉しい。

読者の皆様、長きにわたりお付き合いくださり、本当にありがとうございました。長年僕の記事を読んでくださったシドニー在住の後藤国久さんからお言葉をいただいたので、そのご紹介をもって「豪州ワイン物語」を終わりにしたいと思う。「毎月、ベンさんの記事を拝読しています。いろいろなブドウの種類や土地によっての土壌の違い、気候におけるさまざまな環境の変化で作られるワインとの触れ合いのストーリーはとても勉強になり、ワインの奥深さを知ることができました。長い間にわたりワインの知識を教えてくださり、大変楽しくストーリーを読ませていただきました。ありがとうございました」


ベン・ホルト
◎ヒルトン・ワールドワイド・マーケティング統括本部長(日本・韓国・ミクロネシア地区担当)。QLD大学で文学修士(日本語と韓国語)ならびに科学修士を取得後、在豪日系企業などで食品輸出、商品取引、マーケティングに従事。2002年~07年にオーストラリア・ワイン事務局日本代表、12年5月までオーストラリア政府観光局日本地区マーケティング本部長を務めた後、現職。

Web: www.holt-blog.com
Twitter: Mr_Riesling
www.facebook.com/Ben.Holt.69
 

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