幸せワイン・ガイド@オーストラリア「今月の銘醸地:タスマニアその3」

幸せワイン・ガイド@オーストラリア

今月の銘醸地:タスマニア その3

今月も、タスマニア紀行を引き続きお送りします。

ホバート滞在中、CBDの片隅にある、古い倉庫を改装したスタイリッシュなセラー・ドアを訪れました。そこは、グレーツァー・ディクソン(Glaetzer-Dixon)のテイスティング・ルームで、黒、赤、白を基調としたインテリアは彼らのワインのラベルともマッチしています。

バロッサ生まれのワイン・メーカー

グレーツァー・ディクソンの創設者は、ニック・グレーツァーと、妻のサリー・ディクソンです。

ニックは南オーストラリア州のバロッサ出身、1888年から続くワイン・メーカーの一族、グレーツァー家の5代目です。ニックの父も、叔父も、そして2人の兄弟ベンとサムもワイン・メーカーです。父コリンによって設立されたグレーツァー・ワイン(Glaetzer Wines)は、ベンが醸造に携わっています。また、ニックの叔父に当たり、コリンの双子の兄弟であるジョン・グレーツァーは、ウルフ・ブラス(Wolf Blass)やペンフォールズ(Penfolds)といったオーストラリアの名だたるワイナリーで醸造に大きく関わった人物でもあります。

ワイン造りに歴史あるバロッサで生まれ育ち、力強いフル・ボディなシラーズで有名な生産者の家系に生まれたニック。そんな彼が惹かれたのは、父の造るワインとはむしろ対極にあるような、繊細なピノ・ノワールでした。ニックはオーストラリアの各大手ワイナリー、フランスのブルゴーニュやラングドック、更にはドイツのファルツでワイン造りに取り組んだ後、2005年にタスマニアを拠点にワインを造り始めました。

黒、赤、白の3色を基調としたグレーツァー・ディクソンのテイスティング・ルーム
黒、赤、白の3色を基調としたグレーツァー・ディクソンのテイスティング・ルーム

ニックのことを、叔父ジョンは、「Dreamer(夢追い人)」と呼んだといいます。ニックの代表的なワインの1つであるピノ・ノワール「レヴォー(RêVEUR)」(フランス語で夢を見る人)の名前は、このことが由来となっています。この「レヴォー」の他に、彼のピノ・ノワールは、溌らつとした若飲みスタイルの「ヌーヴォー」、エレガントかつ複雑味のある「アヴァンセ」、そして母の名を付けた高級ラインである「ジュディス」の3種類があります。

また、ドイツでのワイン造りの経験があるニックのリースリングもまた定評があり、「ウバブラン(uberblanc)」は、ライムの香りが爽やかな、デリケートでテクスチャーのあるリースリングです。

そして涼やかかつ深みのある、冷涼スタイルのシラーズ、「モン・ペレ(MON PèRE)」。オーストラリアで最も冷涼な気候であるタスマニアでは、かつては高品質のシラーズを作ることは難しいと考えられていました。「モン・ペレ(MON PèRE)」、フランス語で「私の父」という意味を持つこのワインは、バロッサでシラーズを作る父コリンへのオマージュ、であると同時に、ニックがオーストラリア国内外で一挙に注目を集めるるきっかけとなったワインでもあるのです。

ジミー・ワトソンを受賞した史上初のタスマニア・ワイン

2011年、ニックはこの「モン・ペレ・シラーズ」によって、ロイヤル・メルボルン・ワイン・ショーの最高賞である、ジミー・ワトソン・トロフィーを受賞しました。これは、オーストラリアのワイン産業において、最高峰とされる賞でもあります。タスマニアのワインが同トロフィーを受賞したのは、ワイン・ショー始まって以来50年間で初めてのことでした。

オーストラリアのワインはこのころから、従来のフル・ボディで豊満な果実味のスタイルから、より線の細いエレガントな冷涼気候スタイルへとトレンドが移行し始めていました。ワイン産業の変革を象徴するようなこのニュースは、今振り返っても非常に印象深かったと記憶しています。同時に、タスマニア・ワインへの注目が更に高まるきっかけになった出来事であったと思います。

かつては「夢追い人」と呼ばれ、オーストラリア・ワインの可能性をより押し広げたグレーツァー・ディクソン。比較的手に入りやすいワインですので、ぜひお手に取ってお試しください。

*今月のお薦めワイン*
タスマニアより、夢追い人のワイン

アペリティフに

Glaetzer-Dixon überblanc Riesling 2017/$26
生牡蠣、白身魚の刺し身などと

特別なゲストと

Glaetzer-Dixon Rêveur Pinot Noir 2015/$56
鴨のコンフィなどと

お父さんへの贈り物に

Glaetzer-Dixon Mon Pere Shiraz 2015/$65
ローストビーフとなどと


フロスト結子
日本人としての合格者はまだ少ないワインの国際資格WSET® Diplomain Wine & Spirits及び日本酒のAdvanced Certificateを取得。日本でワイン関連商社の貿易業務に携わった後、2009年オーストラリア人の夫との結婚を機にシドニーへ移住。現在はオーストラリア国内大手オークション会社であるGraysOnlineのワイン部門でアシスタント・バイヤーとして勤務する傍ら、フリーランスとしてライティング、ワイン関連の翻訳、市場調査などで精力的に活動中。ワインのコメントは「とにかくおいしそうに書く」がモットー。
Web: auswines.blog.jp

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る