幸せワイン・ガイド@オーストラリア「今月の生産者:ウニコ・ゼロ(ハーヴェスト・シリーズ)」

幸せワイン・ガイド@オーストラリア

今月の生産者:ウニコ・ゼロ(ハーヴェスト・シリーズ)

農家を守り、共に発展するためのハーヴェスト・シリーズ

ハーヴェスト・シリーズは、ウニコ・ゼロ(Web: www.unicozelo.com.au)が地元農家の救済のために設立した2つ目のワイン・ブランドです。現在のリリースには、ピノ・ノワール、シャルドネ、ソーヴィニョン・ブラン、メルロー、ピノ・グリといった品種のラインアップがあります。どれもピュアな果実味が全面に押し出され、クリーンでバランスの取れた、親しみやすいワインです。価格も20ドル少しとお手頃。このブランドのワインは、ウニコ・ゼロが近辺のブドウ農家から、他のワイナリーで買い取りを拒否されたブドウを引き取って造った物なのです。

ここで、1つの疑問が浮かび上がります。ワイン造りは「基本は畑から」とよく言います。良いワインは良いブドウからしかできないと、常々聞かされてきました。「買い取りを拒否されるような質の低いブドウ? そんなブドウで、おいしいワインができるの?」と疑問の声を聞きますが、実際、このハーヴェスト・シリーズは本当においしいのです。それはなぜでしょうか。

アデレード・ヒルズのブドウ農家とワイナリーの関係については、現在需要と供給のバランスが悪く、圧倒的に買い手市場です。そのため、どんなに良い畑を持った農家でも、年によってはブドウを売るのが難しい状況が出てきてしまうのです。買い手のワイナリーにとって選び放題であるのは良いことですが、売り手のブドウ農家にとっては死活問題となります。

つまり買い取りを拒否されたからといって、全てのブドウの質が悪いわけでは決してないということです。むしろきちんと手作業で仕分けさえすれば、十分すぎるほど良質なブドウが手に入るのです。

ブドウがどんな畑で育ったか。ウニコ・ゼロを経営するブレンダン&ローラ・カーター夫妻は、それが最も重要なことだと言います。良質な畑であれば、気候条件が例年より悪い年であっても、十分質の良いブドウが取れることを、彼らは知っています。細やかな手作業による選定作業が可能なのは、小さなワイナリーだからこそ。ブドウ農家の1年間の苦労を無駄にせずに済むことができるのです。

地元農家救済のために作られたウニコ・ゼロのワイン・ブランド「ハーヴェスト・シリーズ」。買い取りを拒否されたブドウで作られる同シリーズのワインは、ラベルも色鮮やかで美しい
地元農家救済のために作られたウニコ・ゼロのワイン・ブランド「ハーヴェスト・シリーズ」。買い取りを拒否されたブドウで作られる同シリーズのワインは、ラベルも色鮮やかで美しい

これは、長期的な視点で地域の農家を発展させていくためのプロジェクトです。例えば商業的な理由で、知ってか知らずか自分の土地に合わないブドウ品種を選択しているブドウ農家もあると言います。そういった場合、将来的にも最良質のブドウを作ることは難しく、ビジネスとしても長期継続は見込めません。そんな農家に、より適した別の品種への植え替えを奨励し、それを実行した際には買い取り契約を結ぶのです。

ハーヴェスト・シリーズの利益の半分は供給元のブドウ農家へ還元され、そして残りの半分は、ブドウの品種への植え替えを希望する農家に、必要経費を利子なしで貸し出すための基金となります。「僕たちは目先のことだけじゃなくて、50年先のことを見通しているんだ」

経営者としての彼らのその言葉は、いつまでも心に残るものでした。

オーストラリアの自然と文化を体現するアップルウッド・ディスティラリーの誕生

それでも持ち込まれるブドウの中には、どうしても基準に達しない物も時折見られると言います。そして品種を植え替えても改善しそうにない、そもそもワイン用ブドウ栽培に向かない土地を持つ農家の場合もあるのだそうです。そんな農家のために生み出したもう1つの解決策が、以前何度かご紹介した「アップルウッド・ディスティラリー」です。ブドウ栽培を潔くやめ、代わりにマカダミアやライベリーなど、オーストラリアのネイティブ植物(ボタニカル)を植えるよう奨励します。これらのボタニカルをウニコ・ゼロが買い取り、こういった植物が原料として大量に必要となるジンや、アマロ・リキュールなどのスピリッツを作り始めました。最近では更に、オーストラリアのジャラの樹でできた樽で熟成したウィスキーなどに取り組んでいます。

ウニコ・ゼロのワインとスピリッツは、「オーストラリアらしさとは?」という彼ら自身からの問いへの、彼らなりの答えをスタイリッシュかつ楽しい形で体現した物。いろいろな形でさまざまなことをしている彼らですが、全ては同じゴールにつながっています。

今後の活躍に、ますます期待が高まるカーター夫妻です。

*今月のお薦めワイン*
ハーヴェスト・シリーズのお薦め銘柄

夏の仕事帰りの1杯に

Unico Zelo Harvest Sauvignon Blanc/$22.99
シーフード・サラダ、オリーブ、フィッシュ・アンド・チップスなどと

BBQの持ち寄りに

Unico Zelo Harvest Merlot/$21
BBQチキン、ミート・ボール、ビーフ・バーガーなどと

女子会BYOに

Unico Zelo Harvest Pinot Noir/$22.99
北京ダック、ラム・チョップなどと


フロスト結子
日本人としての合格者はまだ少ないワインの国際資格WSET® Diplomain Wine & Spirits及び日本酒のAdvanced Certificateを取得。日本でワイン関連商社の貿易業務に携わった後、2009年オーストラリア人の夫との結婚を機にシドニーへ移住。現在はオーストラリア国内大手オークション会社であるGraysOnlineのワイン部門でアシスタント・バイヤーとして勤務する傍ら、フリーランスとしてライティング、ワイン関連の翻訳、市場調査などで精力的に活動中。ワインのコメントは「とにかくおいしそうに書く」がモットー。
Web: auswines.blog.jp

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