日豪プレス編集インターン密着企画 シドニーの「アイドルの素顔」

日豪プレス編集インターン密着企画 シドニーの「アイドルの素顔」

「可愛い(kawaii)」という言葉は21世紀に入って最も世界に普及した日本語だと言われているが、その定義はあいまいで「cute」や「pretty」とは異なる独特のニュアンスを含んでいる。原宿系ファッションからコスプレ、ゆるキャラまで「kawaii文化」の対象は広く、その1つに挙げられるのがアイドル文化だ。その海外人気を体現するかのように、日本から遠く離れたオーストラリアの地にもアイドルは存在する。本ページでは日豪プレスのインターン生がアイドル・グループ「AGS102」に密着取材を敢行した。(取材:久保田真奈)

アイドル・グループ
エー・ジー・エス・テンツー AGS102

プロフィル◎「てつおじさんのチーズケーキ」が地下1階に店を構えるカフェ「Uncle Tetsu’s Angel Garden」を拠点に活動するアイドル・グループ。J-popを通して日本のサブカルチャーを表現することを目的に2016年12月に結成。毎週土曜日に同カフェ店内でライブ・ショーを開催。グループ名は「Angel Garden Sydney」に由来する。
Web: www.instagram.com/ags102_ut
AGS102ライブ・ショー:土9PM~10PM 、$15

練習&リハーサル

密着初日、活動の拠点であるカフェ店内にAGS102のメンバーが集合したのは午後10時。毎週土曜日に開催されるライブに向けて、平日はほぼ毎日練習やリハーサルを行っているという。

そもそも彼女たちの本業はアイドルではない。ほとんどのメンバーが学生ビザやワーキング・ホリデー・ビザを利用して日本から来豪し、昼間は同カフェのメイド・スタッフやキッチン・スタッフとして働いている。集合時間が夜遅いのは勉強や仕事をする普段の生活と、きらびやかな衣装を着てステージに立つアイドル生活を両立するためだ。唯一オーストラリア生まれのメンバーで最年少のエミリー・ペリーさんは、高校に通いながらカフェのアルバイトとアイドルの活動をこなしているという。

更に、彼女たちはパフォーマーとして表舞台に立つだけではなく、ライブの演出を考える準備段階からライブ終了後の掃除までほとんど全てを自分たちで行っている。中でもセット・リストの作成、スケジュール管理、イベント関係者との連絡、売り上げ報告など裏方の仕事全般を担当しているのがリーダーの池口亜美さん。練習やリハーサルは約2時間だが、亜美さんが参加した新衣装の打ち合わせは深夜にまで及んだ。

スペシャル・インタビュー

AGS102 リーダー 池口亜美さん

2017年9月にAGS102に加入し、わずか2カ月でリーダーに抜擢された池口亜美さん。グループのリーダー、カフェでのメイド・スタッフ、更にローカル環境のカフェでのアルバイトと多忙な日々を送る亜美さんに話を伺った。

――AGS102との出合いについて教えてください。

元々アメリカに留学していたのですが、英語を使って働いてみたくてオーストラリアへワーキング・ホリデーに来ました。アメリカにいた時から高校の同級生でもあるメンバーの夕綺さんにAGS102の話をよく聞いていて、私もやりたいと思ったのが加入のきっかけです。小さいころからステージ上で歌って踊るアイドルという職業に憧れていたので、英語を活用しながら、自分の好きなことをできるAGS102は理想的でした。

――グループのリーダーに選ばれた時の心境はいかがでしたか。

自分がリーダー候補になるとは全く思っていませんでした(笑)。選ばれたことを素直に喜ぶ気持ちよりも、自分にできるのかという不安の方が大きかったですね。私が一番新人でしたし、年上のメンバーもいたので複雑な気持ちでした。

――グループを引っ張る立場において大変なことは何ですか。

小さいころから人に強く言うのが苦手で、リーダーを務めた経験も少ないので、皆に指示を出すのはまだ慣れません。また、グループを引っ張る上で私が決断しなければいけない場合もあれば、グループで話し合わなければいけない場合もあって、どこまで自分で決断すれば良いのかという線引きが難しいと常に感じています。

――ハードな生活だと思いますが、それでも続けられているのはなぜでしょう。

メンバーそれぞれモチベーションが下がる時は絶対にあると思います。深夜まで練習をして、翌日の朝8時から仕事や学校というのは正直大変です。それでも土曜日にライブをすると、やっぱり楽しいって思うんですよね。根本でアイドルへの憧れがあるのが大きいと思います。

――昨年まで水曜日にもミニ・ライブを行っていましたが、土曜日だけにしたのはなぜですか。

ライブが週2回あることで私たち自身が時間に追われているような感覚になっていました。完成度の高いライブを見て頂くためにも、皆で話し合って、土曜日のライブ1つに集中しようと決めたんです。新しい試みをどんどん取り入れて、毎回変化を感じられるライブを作ろうと心掛けています。

――今後の目標を教えてください。

もっと有名になることです。最近では「祭りジャパン・フェスティバル2017」に出演したり、レディビアードさんのバック・ダンサーを務めたり、多くの方に知ってもらえるような機会を頂くことが多くなってきました。私たちを知って頂いた方に今度は土曜日のライブを見に来て欲しいなと思います。

ライブ・ショー

AGS102のライブには毎週60~100人のファンが集まる。地上階まで聞こえるファンのコールに興味を持った人びとがカフェの前で立ち止まってライブを観るなど毎回大盛況。

日本語を話せない現地ファンがほとんどだが、日本語のコールを練習してライブに臨む人が多い。オリジナルTシャツやサイリウムなどのライブ・グッズを身に着けたファンが熱狂する様子は、まるで日本のライブ会場を見ているかのようだ。中にはグループ結成から毎回のように足を運んでいるファンもいるのだとか。

ライブでは『恋するフォーチューンクッキー』(AKB48)など誰もが知っているアイドルの定番ソングを始め、SKE48『バンザイVenus』(SKE48)や『走れ!』(ももいろクローバーZ)など約10曲を披露。最近のセット・リストはコールを楽しめる楽曲を中心に選んでいるという。

MC中に行われるじゃんけん大会や、メンバーがファンと一緒に踊るアンコール曲など、全体を通してファンとの交流の多さが印象的だった。ライブ終了後はメンバーと直接会話できる貴重な時間で、この交流を楽しみにしているファンも多いようだ。手書きメッセージ付きのチェキ撮影会も行われたが、メンバーの人気度がチェキの売り上げに比例してしまうのは、アイドル社会のシビアな一面を垣間見た瞬間だった。

イベント出演

AGS102にとって2018年初のイベント出演は、1月7日に行われたレディビアードさんのライブだった。

レディビアードさんは日本のテレビ番組やCMで活躍するオーストラリア出身の女装パフォーマーで、自身が出演する映画『Big in Japan』のプロモーション・イベントとしてオーストラリア各地でライブを開催していたのだ。

バック・ダンサーとして数分の出演だったが、会場は「kawaii」の声で溢れていた。何よりも驚いたのはAGS102のファンが会場を訪れていたこと。ファンの歓声が普段と違うステージで緊張する彼女たちを勇気付けたに違いない。

ライブ終了後、AGS102は応援に来てくれたファンにお礼を言うため会場外の飲食スペースに出た。このような感謝の気持ちを忘れないファン思いな部分も人気の秘訣なのかもしれない。外に出るとAGS102のファンだけではなく、今回のライブで彼女たちを知った多くの観客に声を掛けられていた。たとえ数分間の出演だったとしても、このステージが持つ意味は大きかったはずだ。

information

ビッグ・イン・ジャパン
Big in Japan
公開中

Web: www.biginjapandoc.com
Irwin Wong

昨年までメンバーの一員として活動し、現在はマネジャーとしてグループを支える高山結可さんは、AGS102についてこう語る。「AGS102が結成された当時、ライブ・ショーの観客はわずか10人程でした。それが今や何倍にも増えて、多い時でおよそ100人が観に来るグループに成長しました。女の子たちが必死でアイドルになろうとしている姿は、見る人を笑顔にすると思います。ステージを見たことがない人も、ぜひ一度観に来て欲しいですね」
 海外で日本の「kawaii文化」を発信する彼女たちの今後が楽しみだ。

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