【特集】QLD州教育制度の新教育制度 今知っておくべき基礎知識 教育特集①


ここ3年の間で、QLD州の教育制度は大きな見直しや改正が行われている。その背景には、他州との教育制度の差を積極的に縮めていく方針がある。就学中、またはこれから就学する子どもを持つ家庭に向けて、知っておくべき学校教育についての基礎知識を紹介する。文=堀千佐子

学校教育制度の背景

連邦国であるオーストラリアの教育制度は、各州都の教育行政部門(The Department of Education and Training)が管轄しているため、州都ごとに教育制度が異なる。しかし、オーストラリア連邦政府が総括する大枠の概要に従い、国レベルでの教育改革方針にも準拠しながら連携を取っているので、それぞれに特徴はあるものの、おおよそ同じ内容で学校教育が実施されているのが現況だ。

その中でも教育カリキュラムは以前、全ての科目で州都独自のものを設けていたが、年を追うごとに州都間の学力の差が大きくなり、その差を埋めるための全国統一基準のカリキュラム「オーストラリアン・カリキュラム(Australian Curriculum)」が作成され、現在導入されている。QLD州では、2014年から全ての主要科目(12年から英語、数学、科学、13年から地理、歴史)において、オーストラリアン・カリキュラムが採用され、その他の科目では「クイーンズランド・カリキュラム(Queensland Curriculum)」が併用されている。これにより、15年から日本で小学校に当たるプライマリー・スクールの範疇だったイヤー7の学年は、中学、高校に当たるセカンダリー・スクールの枠に組み込まれ、国の標準教育となるオーストラリアン・カリキュラムに対応するための大きな改正があった。

教育制度の概要

QLD州における大学入学までの学校制度は、キンダーガーテン/キンディ(幼稚園及び保育園)、プレップ(準備教育)、プライマリー・スクール(小学校)、セカンダリー・スクール/ハイ・スクール(中学高校)に分かれる。セカンダリー・スクールは厳密に言うと、ジュニア・セカンダリー(ミドル・スクール)とシニア・セカンダリー・スクール(シニア・スクール)から構成される。

学年の呼び方は、日本のように小学校6年間、中学校3年間、高校3年間と区切りがなく、プライマリー・スクールからセカンダリー・スクールを卒業するまでの12年間を通して、「イヤー1」(Year One)から「イヤー12」(Year Twelve)と呼称する。今年からプライマリー・スクール入学前のプレップ・イヤーが義務付けられ、大学入学までの学校教育は13年を通して行われる。

一般的な学期日程
ターム1(1学期) 1月下旬~4月上旬
ターム2(2学期) 4月下旬~6月下旬
ターム3(3学期) 7月中旬~9月下旬
ターム4(4学期) 10月中旬~12月中旬

ただし義務教育は、プレップからイヤー10までの日本より1年長い11年間で、基本的な就学年齢は、その年の6月30日までに5歳になる子どもはプレップに入学が可能だ。プレップは週5日の午前9時から午後3時までのフルタイム・プログラムなので、子どもの成長度合いに合わせて1年間だけ学年を早めたり、遅くしたりできる選択肢が設けられている。しかし、今年から1年間のプレップ・イヤーが義務付けられたため、遅らせた場合でもプレップをスキップしてプライマリー・スクールへ入学することはできない。

また、1学年は4学期制で、学期はタームと呼ばれる。通常1タームは10週間で構成されており、各タームの間にスクール・ホリデーが挟まれる。新学期は1月下旬から始まり、その年の12月中旬で学年度が終了する。

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QLD州の学校教育制度

3種類の学校形態

学校の形態は、州立校(State School)、私立校(Independent School)、カトリック校(Catholic School)の3種類に分けられる。現在、QLD州には、1,230の州立校と約470のカトリック校を含む私立校が存在する。

州立校は学費が無料だが、住んでいる場所の学区制限があり、指定されている学区外からの入学は基本的に認められていない。入学後に引っ越しをした場合は、越境通学が認められることもある。また、州立校の中でも、新しい教育改革を実践する指定モデル校(通称:パイロット・スクール)や、スポーツや音楽、芸術に特化している学校、第2外国語で授業を行うイマージョン・プログラムを持つ学校などがあり、人気のある州立校に入学するために学区内へ引っ越しをする家庭もある。

私立校には男女共学の他に男子校や女子校があり、宗教に基づいた教育を行う学校、モンテッソーリ・メソッドやシュタイナー教育を取り入れた学校など、それぞれに特徴を打ち出した学校づくりを行っている。私立校へ入学を希望する場合は、基本的に先着順で入学が認められるため、できるだけ早くウェイティング・リストへ子どもの名前を登録することが必要だ。既に兄弟姉妹がその学校へ入学している場合、優先的に入学が認められている他、スポーツや音楽、演劇、ダンスなどのパフォーミング・アーツの分野で優秀な成績を修めている子どもは優先されるケースもある。学費が掛かる私立校では、セカンダリー・スクールから奨学金制度が設けられており、条件や内容は学校ごとで異なる。基本的にイヤー7、10、11に入学する生徒を対象に、入学する前の年の2月から4月にかけて試験が行われ、それにパスすると最終面接が行われる。

また、州立校、私立校を問わず、オープン・デーと呼ばれる学校を公に開放する学内ツアーと学校説明会が年に数回開催されている。このオープン・デーに参加することで、入学希望校の雰囲気や情報を直接得ることができる貴重な機会となっている。しかしながら、一番大切なのは、子どもをどういった環境の中で、どのように育てたいかという方向性を考えた上で、それぞれの家庭環境に合わせた無理のない学校選びをすることだ。

<参考ウェブサイト>
■オーストラリアン・カリキュラム www.australiancurriculum.edu.au
■豪州政府・教育部門 www.education.gov.au

今さら聞けない言葉の豆知識

●ESL

English as a Second Language。英語を母国語としない生徒や海外から転入してきた生徒を対象に、英語の補習やアサインメントと呼ばれる課題などのサポートが受けられるクラス。しかし、全ての学校にこのESLクラスがあるわけではないので、子どもの語学力に心配があり、英語の補習やサポートを必要とする場合は、事前にESLの有無を学校に確認することをお勧めする。

●LOTE

Languages other than English。イヤー1から10まで英語以外の言語を勉強する第2外国語のこと。言語は基本的に、オーストラリアと密接な経済交流があるアジア圏の言語(日本語、韓国語、中国語、インドネシア語)とヨーロッパ圏の言語(イタリア語、フランス語、ドイツ語)から選択し、その国の社会文化の理解を深めながら、リスニング、スピーキング、ライティング、リーディング全般を学んでいく。

●HPE

Health and Physical Education。保健体育を含む体育のこと。スポーツ種目の運動技能向上よりも、まずは分析やリサーチを通して知識と理解を深め、その上でプログラムを考え実践に移すという健康と安全面を重視した教育的な授業である。オーストラリアならではの水球やオーストラリアン・フットボール、ネット・ボール、クリケットなどにも触れる機会がある。外に出て元気に体を動かしスポーツをする日本の体育とは少し異なっている。

●BYOD

Bring Your Own Device(または、BYOT-Bring Your Own Technology)。オーストラリアの学校では各自のノート・パソコンやタブレットを学校へ持参することを推奨している。「21世紀はテクノロジーを使って学校教育を進めていく時代」というコンセプトで、生徒自身が自宅で使うデバイスを学校でも使う方が効率的であると説明している。学校側としても経済的である。学校では授業中のリサーチや、レポート作成などに使用する。私立校では小学校からBYODコンセプトを奨励する所も多いが、損失損傷など問題も多く賛否両論である。

●NAPLAN

National Assessment Program-Literacy and Numeracy(通称:ナプラン)。毎年5月にイヤー3、5、7、9の奇数の学年の生徒対象に実施される、全国一斉のマーク・シート方式の評価テスト。試験科目は、計算、図形、プロブレム・ソルビングなどの数学と、文法、スペリング、リーディング、ライティングからなる英語だ。全国生徒の基礎学力を計り、その状況を把握すると共に、今後の教育指針に役立てられる。結果は、全国平均値と自分の成績が、全国でどのポジションにあるかが分かるようにチャートに示される。


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