吐きグセのある老猫、何かしてあげられることは?

何でも相談

Q 知人からもうすぐ10歳になる猫を引き取ることになりました。昔から吐きグセがある子のようです。たまに食べ物や毛玉を吐くだけなので心配無用と言われましたが、可哀想なので何かしてやれることはないのでしょうか。
(40歳主婦=女性)

A 猫が定期的に吐いても問題が無いと思い込んでいる飼い主はたくさんいます。しかし、これは誤りで、完全に正常な健康状態の猫が月に一度も二度も嘔吐することはありません。

「吐きグセ」のある猫の多くが、実は慢性的な胃腸炎や膵炎を患っていることが分かっています。中でも膵炎(Pancreatitis)は最近まで診断が難しく、長く見過ごされてきた病気です。

膵臓は胃のすぐ隣にある臓器で、食べ物を消化するのに必要とする酵素を消化管に送りこむ外分泌と、インスリンなど血糖値をコントロールするホルモンを生成し分泌する内分泌という生きていく上で欠かせない2つの重要な役割を持つ臓器です。

原因

膵炎はこの膵臓に何らかの炎症が生じた状態を言い、自分が分泌している消化酵素により炎症が悪化してしまう病気です。
 炎症の引き金となるのは、ウィルスやトキソプラズマによる感染症などもありますが、ほとんどの場合、原因が分からない突発性とされてきました。最近では、膵炎を患う猫の多くが胆管肝炎と炎症性腸疾患も併発していることから、腸内細菌が深く関わっていることが分かってきました。

症状

膵炎には急性と慢性があります。犬では急性膵炎が多く見られますが、猫で見られるのは大半が慢性膵炎です。
 急性膵炎では元気の消沈、食欲不振、嘔吐、下痢、脱水などの症状が見られます。
 また、慢性膵炎では上記のような症状が良くなったり悪くなったりを繰り返します。症状があまりはっきりとしない猫も多く、また歳のせいだと思い込む飼い主も少なくないため発見が遅れてしまう病気です。
 急性や慢性に関係なく、膵臓が十分なダメージを受けてしまうと、今度はインスリンが分泌できなくなり糖尿病を併発してしまうことがあります。

診断

以前は診断が難しく、超音波検査などに頼っていました。しかし、今では血液検査で猫膵特異的リパーゼという酵素を測定することで簡単に診断ができるようになりました。

治療

膵炎の治療は主に吐き気、痛み、脱水などの症状を緩和する支持療法です。食欲が無いのは痛みや吐き気が原因であることが多く、それらを抑えるだけで食欲が戻ることもあります。絶食は回復が遅れるのでなるべく避けます。食欲がなかなか戻らず、体力の消耗が著しい場合は手術で食道に外からチューブを挿入し、胃へ流動食を送り回復を支えます。

予防

度重なる胃腸炎から膵炎へと移行する危険があるので、普段から食欲にムラがある、度々吐くことがある、下痢または便秘をよくする、などの様子が見られる猫は注意が必要です。
 まず食事を胃腸サポート用の処方食や、低アレルギー食に変え、それで効果がない場合は投薬が必要になるので早めに病院で診てもらってください。


戸塚 遊喜(とつか ゆき)
Chatswood Veterinary Clinic

シドニーの現地校を卒業後、シドニー大学の獣医学部を卒業。現在、シドニーのノースショアにある小動物専門病院「チャッツウッド・ベタリナリー・クリニック」に勤務。動物の鍼灸師の資格を保持している。

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