動物専用の救急車/オージー・ワイルドライフ 診療日記

オージー・ワイルドライフ 診療日記

第51回 動物専用救急車

けがをした野生動物を見つけたら地域の保護団体に連絡をするか、最寄りの動物病院に連れて行ってください、とこれまで何度もお願いしてきました。しかし、自分では助けるのが難しい状況も必ずあります。特に、自分の身に危険が及ぶ可能性がある場合。例えば、保護したい動物が警戒して攻撃的になり近づけない、木の上など高い所にいる、毒を持っているかもしれない、などさまざまです。

カランビン・ワイルドライフ病院では、昨年までRSPCA(王立動物虐待防止協会)のレスキュー・サービスを利用していましたが、野良犬や猫の保護活動の合間に野生動物のレスキューを行わざるを得ず、緊急保護要請の対応にはWildcare.Inc(ワイルドケア)などのボランティアに頼りがちでした。

今年に入り、RACQ(Royal Automobile Club of Queensland)やトヨタの協力もあって、当院スタッフの長年の夢であった野生動物専用の救急車の活動が始まりました。傷付いた動物を発見した人が病院に電話を掛け、病院スタッフが救急車を派遣するべきかどうか判断します。救急車は1台しかありませんので、全ての要請に応えられるわけではありません。また、レスキューだけでなく、他の動物病院で既に保護されている動物を引き取りに行ったり、治療を終えた動物のリリース、ひな鳥を親元へ返すなど、幅広く対応します。

救急車にはボランティアが2人乗っていて、場所や緊急性を考慮しながら、その日の予定を組みます。ユニフォームを着たボランティアが野生動物のためにゴールドコースト中を駆け回る姿は何とも頼もしく、同病院の活動をより多くの人びとに知ってもらうきっかけとなっています。

とは言え、ボランティアに危険が及ぶことは避けなければならず、コウモリや毒ヘビの保護は他の団体の特別に訓練を受けた人に依頼します。また、動物が電線に引っ掛かっている場合は電力会社に、高所のレスキューには消防署にお願いするなど、あらゆる組織と協力しています。

もし、カランビンの救急車を見掛けたら、ボランティアに話し掛けてみてください。知識が豊富で仕事熱心なボランティアが、動物の種類や、けがの状態など、丁寧に教えてくれるはずです。


■床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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