白血病と闘うヒップホップ・ダンサー、相川尚久さん

■特別インタビュー

白血病と闘うヒップホップ・ダンサー、相川尚久さん

2005年に来豪し、シドニーでダンス教室を運営するなど意欲的に活動していた相川尚久さんが突然脇腹あたりに激痛を感じ、その後、血液のがん「形質細胞性骨髄腫(白血病)」と診断されたのは16年9月のこと。以来、2度の入退院を繰り返し、現在は回復を目指し静養中だ。妻と2人の娘に支えられながら「今の自分に出来ることは同じような病気に苦しむ人に勇気を与えること。話すことで少しでも救われる人がいれば」と話す相川さんにインタビューを行った。(聞き手:馬場一哉)

自宅で弊紙のインタビューに応じる相川さん
自宅で弊紙のインタビューに応じる相川さん

──病気に気付いた最初の発端はどのようなものだったのですか。

「ある日、ソファで寝て起きたらわき腹がものすごく痛んだんです。寝相が悪くて骨にひびでも入ったのかと思いました。しかし検査をしても骨には異常が無く、血液の検査をすることになったんです。その後、大きい病院で精密検査を行うことになり、結果的に血液のがんであることが分かりました」

──告知された時の気持ちには計り知れないものがあったと思います。

「半信半疑というかまさかというか……。当然死が頭をよぎりますし、ショックでしたが完治はせずとも治療は出来ると言われ希望を持ちました。ただ、血液のがんは必ず再発すると言われています。治療して1年後に再発する人もいれば5年、10年経っても元気な人もいます。いずれにしても子どももまだ小さいですし、長生きしなければならないのですぐに治療に踏み切ることにしました。がんには抗がん剤を使わないという選択もありますが血液のがんの場合は使うしかないというのが現状のようです」

──治療というのは具体的などのようなことを行ったのですか。

「形質細胞性骨髄腫では3週間抗がん剤治療をし1週間休むというサイクルを4サイクル繰り返します。16年の10月に1週間程度入院した後、そのサイクルを繰り返し、17年2月に大掛かりな治療のために3週間入院しました。自分の血を取ってそれをきれいな状態にして自分の中に戻すという手術です(編注:自家造血幹細胞移植と呼ばれる)。ドナーがいればドナーのきれいな血を入れることになるのですが僕は適合するドナーを見つけることが出来なかったのでこの手術となりました。その手術を今年の4月末にも行いました。2回行うというのは日本では珍しいことのようです。徹底して治療して頂けるのがありがたいです」

シドニー・シティ南部、セントラル・パークで撮ったスナップ
シドニー・シティ南部、セントラル・パークで撮ったスナップ

──日本との違いをどのようにとらえていますか。

「一番大きかったのはオーストラリアでは治療費が掛からないということです。日本だとがん治療には莫大なお金が掛かるイメージがありますよね。ですが、こちらでは手術代などもメディケアで全て賄われるので、実際には薬代が少し掛かっている程度。またドナーも探してくれるなど、非常に親切なのがありがたいです。この点は不幸中の幸いでした」

──とはいえ、仕事をすることが出来ない状態が続くと収入面での不安は絶えません。

「妻がアルバイトを始めるなど協力をしてくれているのと、あとは寄付金を頂くことが出来たのが大きかったです。病気が判明した時にダンス関連の仲間などに知らせなければいけないと思い、フェイスブックにアップしたところ知人がドネーションの募り方を教えてくれました。そのお陰で寄付金が集まって生活費の助けになっています」

──ありがたいですね。それにしても入院治療は過酷だったと聞いています。

「2回目は特にしんどかったです。いきなり39度の熱が出て、薬を飲んで下げてもまた上がってということを繰り返し、寒気が収まりませんでした。また、味覚が無くなる時期もあって食事を楽しめず辛かったです。無菌室に監禁状態で3週間、あまりにもすることがないですし、ただただこの時間が早く過ぎ去ってほしいと願っていました」

自宅の壁に飾られた家族との思い出写真
自宅の壁に飾られた家族との思い出写真

──家族に会えるのを待ち望みながらですね。

「そうですね。妻に子どもたちの写真を毎日送ってもらっていました」

──イースター休暇明けに退院されたとのことですがその後は順調ですか。

「今は体力を戻している状態です。細菌感染が怖いので3カ月は生物を食べないようにし、その期間が終わるまで人混みには出ないようにしています。再発を遅らせられるよう、食生活に気をつけつつ、落ち着いたら友人に会ったりダンスを再開するなどしていきたいです」

──時間の経過と共に新しい薬や治療法などが出てくる望みもありますね。

「そうですね。再発した時により希望が持てる薬が出来ていれば理想ですね。血液のがんはここ10年で延命の方法がだいぶ進化したようで以前のような不治の病という感じではなくなってきています。昨年も新しい薬が出てそれがかなり効果的だと聞いています。

──アメリカで開発される最先端の薬の認可も同じ英語圏ということで日本より早いと聞いています。認可が数カ月単位違うだけでも患者にとっては死活問題ですよね。

「はい。また日本だと無菌室が空いておらず何カ月も待つことになるケースもあるらしいですがそういったことがないのも大変ありがたかったです。命に関わる治療の患者が優先されるようですし、ナースも決して深刻な感じではなく、明るくアットホームな雰囲気なのでそれも良かったと思っています」

──読者の中にも大きな病気に苦しんでいる方がいるかと思います。その方々にメッセージがあればお願いします。

「自分の病気のことを話せない人もいると思いますが、僕は隠すことは嫌でしたし、多くの人に知ってもらうことで支えていただくことが出来ました。僕も自分の経験を話すことで誰かの支えになりたいと思っています。強く生きているところを見せたいですし、それが自分の活力にもなります。きちんと病気を認めた上で、諦めずにポジティブに生き続けることが大事だと思います。病気になったからこそ家族について改めて考える良い機会を得られました。家族に支えられてることを認識をする度、本当に大事な存在なのだと常々思い知らされる日々です。僕も前向きに進んでいきますので、皆さんもぜひ頑張ってください」

──本日は静養中にもかかわらずありがとうございました。


相川尚久
2005年来豪、シドニーのダンス教室などでインストラクターとして後進のダンサーを育成する傍ら、自らもダンス大会に出場などパフォーマーとしても活躍。16年9月に、形質細胞性骨髄腫(白血病)であることが判明。2度の手術を乗り越え、現在は再びダンサーとして舞台に上がることを夢見て妻の恵さん、2人の娘と共に回復を目指している。妻の恵さんは元ミニスカポリス10代目として日本のテレビ番組で活躍した経歴を持つ。

骨髄ドナー・バンクにぜひ登録を──相川恵さん

私も実際に登録して来ました
私も実際に登録して来ました
終了後はお菓子やフルーツなども頂けます
終了後はお菓子やフルーツなども頂けます

骨髄ドナー・バンク登録は18~45歳の健康な方なら誰でも可能です。残念ながら私の旦那に合うドナーは見つかりませんでしたが、世界中には健康な方の骨髄を必要としている人達がたくさんいます。少しでも誰かの命を救える可能性として骨髄ドナー・バンクにぜひ登録して頂きたいです。登録は1時間ぐらいで簡単に終わります。終わった後はコーヒーやお菓子、チョコレートが食べられますよ。登録の流れは以下の通りです。

(1)www.donateblood.com.auのサイトから近くのセンターを予約

(2)予約当日はPhoto IDを持参し、Born marrow donor registryフォームに記入

(3)センターの人と面接(血圧測定、これまでどんな病気をしたかなど)

(4)血液のサンプルを採って終了

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