私たちの生活はどう変わる? 2012/13年度連邦予算案

私たちの生活はどう変わる?

子どものいる家庭や低・中所得者層には恩恵

2012/13年度(12年7月1日〜13年6月30日)の国家予算案は、法人減税の取りやめ、国防費や対外援助の大幅な削減などによって、世界金融危機前の07/08年度から数えて5年ぶりに財政収支の黒字化を見込んだ。その一方で、子どもを持つ親や低・中所得者層には手厚い優遇措置を盛り込んでいる。私たちの家計にどのような影響があるのかおさらいするとともに、各分野の専門家が政治的な意味合いや企業活動への影響などについて解説する。

12/13年度予算案のポイント
●「リーマン・ショック」以来5年ぶりに財政収支を黒字化15億ドル
● 子どものいる家庭、低・中所得者層に手厚い優遇措置
 −子ども給付金制度(ファミリー・タックス・ベネフィット・パートA)の拡充最大600ドル増
 −学童給付金小学生1人当たり年間410ドル、中高生1人当たり年間820ドル
 −失業者、幼い子どもを持つ親、学生など手当受給者への追加手当年間最大210ドル
● 所得税の課税対象となる年収の下限を6,001ドルから1万8,201ドルに引き上げ
● 全国障がい者保険制度の第1ステージ今後4年間に10億ドル 13/14年度から1万人、14/15年度から2万人を対象
● 現行30%の法人税の29%への引き下げ計画の撤回
● 年収30万ドル以上の高所得者のスーパー・コントリビューションに対する税率が15%から30%に倍増
● 海外または州外に赴任している駐在員への手当(LAFHA)の見直し

7月からの新年度を前に、連邦政府が毎年ほぼ5月に発表する予算案。政治や経済の動向に応じて税制や給付金制度をひんぱんに変更するので、私たちの身近な生活や家計に大きな影響を与える。オーストラリアでは会社勤めでも収入がある人にはすべて所得税申告(タックス・リターン)が義務付けられているので、普段は税務に興味がない人も無関心ではいられない。

子育て支援に注力

政府はまず、子どもを持つ親に給付金を支払う既存の「ファミリー・タックス・ベネフィット・パートA」(FTB Part A)の金額を2013年7月から増やす。約18億ドルの予算を投じ、全国で約150万人が恩恵を受けるとしている。

金額はこれまでと同じく子どもの数と年齢、年収によって決まる。今回の措置によって、給付金が最も多い(年収が少ない)場合、子ども1人で年間300ドル、2人以上で600ドルの増額になる。最も少ない(年収が多い)場合、子ども1人で100ドル、2人以上で200ドル拡大する。最大の場合と最小のケースの年収(課税対象となる1世帯当たりの所得)の敷居額(上限)は右の表の通り(3人以上の子どもがいる家庭の敷居額はさらに高くなる)。

■子ども1人で300ドル、2人以上で600ドルの増額となる場合の年収の敷居額(単位ドル)

13〜18歳の子どもの数
0 1 2 3
0〜12歳の子どもの数 0 70,000 90,000 148,000
1 63,000 85,000 138,000
2 78,000 132,000 167,000
3 93,000 159,000

■子ども1人で100ドル、2人以上で200ドルの増額となる場合の年収の敷居額(単位ドル)

13〜18歳の子どもの数
0 1 2 3
0〜12歳の子どもの数 0 101,000 115,000 150,000
1 101,000 112,000 140,000
2 112,000 133,000 168,000
3 128,000 160,000

ただ、13年1月から、FTB Part Aの対象年齢は引き下げられ、フルタイムの中等教育(高校)に在学していない場合、最高18歳未満までとなる(現行21歳)。しかし、資格を失った該当者は条件次第で若者手当(ユース・アローワンス)を受給できる可能性がある。

加えて、小学校(プライマリー・スクール)と中学・高校(ハイ・スクール)の子どもを対象とした就学児童給付(スクールキッズ・ボーナス)も13年1月から新たに支給する。書類申請による現行の教育費控除(エデュケーション・タックス・リファンド)を改め、簡素な現金支払いとして支給額も増やす。FTB Part Aや若者手当などの各種給付金の受給者に支給する。政府によると、全国で約220万人の子どもを持つ約130万世帯が恩恵を受けるという。

■スクールキッズ・ボーナス(単位ドル)

 小学生1人当たり 410 
 中学・高校生1人当たり 820 

所得税課税の下限が約3倍に

炭素価格制度(炭素税)法案の成立とともに既に決定している措置だが、今年7月1日から所得税の課税対象となる最低年収を現行の6,001ドル(税率15%)から1万8,201ドル(税率19%)と約3倍の水準に引き上げる。15/16年度にはさらに1万9,401ドルまで上昇する。これは、同月からの炭素税導入にともなって、低所得者層の電気料金などの負担増に対応する措置。所得税の課税分岐点(居住者)と税率は下の通り。なお、1年限定の洪水税(フラッド・レビー)は今年6月30日に終了する。

このほか、求職者手当(ニュースタート・アローワンス)、若者手当、ひとり親(シングル・ペアレント)手当、学費手当(オースタディー)、自然災害を受けた農業生産者への手当などの収入補助を政府から受けている人には、さらに追加手当(サプリメンタリー・アローワンス)を支給する。金額は独身者で1人当たり年間210ドル、カップルの場合1人当たり175ドルの増額となる。13年3月から年2回(3月、9月)に分けて支給する。予算総額は今後4年間で約11億ドル。政府は家計の負担を和らげる狙いがあるとしている。

「バラマキ」との批判も根強い今回の予算案。企業や事業主にとっては法人減税の棚上げも残念だ。ただ、そうした議論はさておき、生活費の上昇に翻弄されている子育て中の家族にとっては、ささやかな朗報となるかもしれない。

■居住者の所得税課税分岐点と税率(単位ドル)

11/12年度(現行) 12/13年度 15/16年度
課税分岐点 税率 課税分岐点 税率 課税分岐点 税率
第1税率 6,001 15.00% 18,201 19.00% 19,401 19.00%
第2税率 37,001 30.00% 37,001 32.50% 37,001 33.00%
第3税率 80,001 37.00% 80,001 37.00% 80,001 37.00%
第4税率 180,001 45.00% 180,001 45.00% 180,001 45.00%

小平直樹・時事通信社シドニー特派員
オーストラリア経済の動き

法人税率引き下げ見送り、家計支援重視

2012年度連邦政府予算案

ギラード労働党政権が発表した2012年度(12年7月〜13年6月)連邦政府予算案は、7月からの資源新税導入と合わせて実施するはずだった法人税率引き下げを見送る一方で、低・中所得者層生活支援を強化するなど、「所得再配分」的な性格の強い内容となった。目標としていた同年度の財政収支黒字化を見込んだが、そのために歳出の伸びを抑制しており、追加利下げ余地を残す豪準備銀行(RBA、中央銀行)に資源部門とそれ以外の温度差の目立つ国内経済への対処を委ねる格好となった。

鉄鉱石・石炭事業を対象に7月から導入される資源新税「鉱物資源利用税(MRRT)」。ギラード政権は今年3月、「資源ブームの利益を国内全体、中小企業やそこで働く人々に至る経済全体で共有する」として、法人税率引き下げ法案を公表した。それは、MRRTを財源として、中小企業については12年度から、大企業については13年度から法人税率を現行の30%から29%に引き下げるものだった。しかし、予算案では、法人税率引き下げが見送られ、その分の財源は、家計支援に回された。

ギラード首相は、野党保守連合(自由党、国民党)がMRRTに反対の立場から関連の減税にも反対、グリーンズ(緑の党)も大企業の減税に難色を示す中で、法人税率引き下げ法案は議会で成立のめどが立たなかったと弁明。「代わりに家計のやりくりに苦労する家庭に資源ブームの恩恵を分け与えることにした」として、来年7月から家計支援措置「ファミリー・タックス・ベネフィット・パートA」の最大年600ドル増額に置き換えた。ただそれでも企業支援として損失を過去の利益に繰り戻す税制措置などを盛り込んだと強調した。

7月からは、ギラード首相による公約違反と批判され、支持率低落の要因となった「炭素価格制度(炭素税)」も導入される。これに伴う電気料金上昇など家計負担増への補償措置として、所得税課税の敷居額は今年7月以降、これまでの年6,000ドルから約3倍の1万8,200ドルに段階的に引き上げられる。そのほか、低・中所得家庭の支援策として、中・高校生1人当たり年820ドル、小学生には410ドルを支給する「スクール・キッズ・ボーナス」も打ち出した。

歳出抑制で黒字化

12年度予算案の収支をみると、歳入は前年度比11.8%増の3,761億ドルを見込む一方で、歳出は0.7%増の3,763億ドルに抑えた。財政収支(基礎的現金収支ベース)は小幅ながら15億ドルの黒字となり、11年度の444億ドルの赤字から黒字に転換、13年度以降についても黒字を見込む。12年度で最終的に黒字を実現できれば、「リーマン・ショック」前の07年度以来5年ぶりとなる。12年度の実質GDP(国内総生産)成長率は3.25%を見込んだ。

法人税率引き下げ見送りや支出の削減・先送りなど、黒字予算化のため12年度で44億ドル、12年度から15年度までの4年間の合計では300億ドル以上の“節約”をひねり出したとしている。

こうした財政の引き締めは景気にとってはマイナス要因になる。ANZ銀行はその影響について、12年度のGDP伸び率を0.75〜1%程度押し下げると推定した。欧州債務問題や中国経済の減速懸念といった外部要因の不透明さが続く中、財政収支黒字化を優先したギラード政権は、RBAの金融緩和に期待を寄せている。

RBA、予想上回る0.50%利下げ

RBAは1日の理事会で、政策金利を0.50%引き下げ、3.75%にすると発表した。大方のエコノミスト予想は0.25%の利下げだった。

ギラード政権は、この利下げは「家庭にとって朗報だった」と評価するとともに、物価上昇圧力を生じさせない予算案は「RBAの金融政策決定に当たって最大限の柔軟性を与える」とし、一段の利下げへの期待をにじませた。政府は政策金利について、現行の3.75%より0.50%低い、3.25%への利下げを期待している可能性があるとも報じられている。

RBAは大幅利下げを決めた理由について、インフレ見通しが十分に抑制され、豪経済の成長が幾分トレンドを下回っていることに加え、市中のローン金利が若干の上昇傾向にあることを考慮したと説明している。商業銀行が資金調達コストの上昇などを理由にRBAの利下げと同幅のローン金利引き下げを行わないことを見越した判断で、実際、0.50%の利下げを受けた4大銀行の標準変動型住宅ローン金利引き下げ幅は0.32〜0.40%にとどまった。

豪経済は、GDPの16〜17%を占め開発投資ブームに沸く鉱業部門と、それ以外の部門の温度差が拡大する状況となっている。RBAのロウ副総裁は、最近の利下げが非鉱業部門の需要を若干押し上げ、GDP成長率は長期的平均近辺に回復していくだろうと述べた。7月に導入される炭素価格制度(炭素税)の影響を除いた基調インフレ率は「向こう1、2年間は最近の水準近くにとどまろう」とし、追加利下げが可能なインフレ抑制状況は今後も続くとの見通しを示した。

一方、豪ドルは、ギリシャのユーロ圏離脱懸念を背景とした市場のリスク回避の動きで売られ、5月14日の取引で昨年12月20日以来初めて1豪ドル=1米ドルのパリティー(等価)を割り込んだ。豪ドルは対円でも3月には88円台を付けていたが、5月23日には76円台まで値下がりした。

コモンウェルス銀行の為替専門家は、ギリシャのユーロ離脱という事態になれば豪ドルは0.90米ドルを割り込む可能性があるが、離脱がギリシャだけにとどまれば、いずれは1.05米ドルに回復すると予想している。

イクシスLNGプラントが着工

東京電力福島第1原発事故を受けて代替のエネルギーとして重要性が高まった液化天然ガス(LNG)。国際石油開発帝石が日本企業として初めて主導する大規模LNG開発案件、「イクシス」プロジェクトの起工式が5月18日、豪北部ダーウィンで行われた。


5月18日、ダーウィンでギラード首相が出席して行われたイクシスLNGプラントの起工式(筆者撮影)

式典に出席したギラード豪首相は、日豪の「友好の結び付きを強めるものだ」と着工を祝福、柳沢光美・経済産業副大臣は、「日本企業が生産者」となり、従来の売り主、買い主という豪日関係が「新しい次元」に発展する第1歩だと強調した。

同プロジェクトの総投資額は340億米ドル。国際帝石が権益の7割を握り、オペレーター(操業主体)を務める。LNG生産能力は年840万トンで、これは日本の年間輸入量の1割強に相当。生産開始は16年末で、7割が日本向けに出荷される予定。沖合で採掘したガスを約900キロメートルのパイプラインでダーウィンに送って液化しLNGタンカーで出荷する。LNGプラントは日揮と千代田化工建設、米KBRの企業連合が調達・建設を請け負っている。

 
 

2012/13年度連邦予算案の特徴

財政黒字転換の最優先、「バトラー重視」予算案

ナオキ・マツモト・コンサルタンシー 松本直樹

5月8日、ギラード労働党政権としては2回目の来年度連邦予算案が公表されている。予算案の特徴、ポイントとしては、①財政収支の黒字転換、②「バトラー」向けの所得再配分、③野党への攻勢、そして④労働党の政治哲学の具現化、の4つが指摘できるが、以下、取り分け重要な①と②について解説する。

財政収支の黒字転換

労働党政権が誕生すると同時に財務大臣の要職に就いたスワンにとり、今次連邦予算案は5回目となるが、実は早くも2回目の予算案、すなわちFY2009/10の予算案において、スワンは財政の早期健全化問題を取り上げている。その背景には、08年に世界金融危機(GFC)が発生し、その対応策として度重なる財政出動を行った結果、政府は巨額の財政赤字、政府債務を抱えることになったとの事情がある。

スワンとしても同予算案の中で、構造改革による歳出の削減を通じた、中・長期的な財政の健全化計画を提示せざるを得なかったのである。ところが、当時のスワンの勢いのいい掛け声とは裏腹に、FY2009/10予算案で示された歳出の削減計画は相当に穏当なもので、せいぜい歳出の増加の程度を抑えるものに過ぎず、しかも長期間にわたる漸進的なものであった。

実のところ、スワンが財政健全化計画の中核に据えていた、というよりも最も期待していたのは、「V字型」の景気回復を前提とした税収の増加であった。このシナリオについて政府、正確には連邦財務省は、予測があまりに甘い、楽観的過ぎるとして強い批判を浴びたのだが、スワンは、遊休設備を抱える不況からの脱出時には、かなりの成長率を記録するのが一般的であると述べつつ、強く反論したという経緯がある。

いずれにせよ同予算案では、6年後のFY2015/16に財政黒字への転換を果たすとぶち上げていた。それ以降のスワンの予算案においても、中核に据えられてきたのは、あるいは政府が盛んに取り上げてきたのは財政の黒字化問題で、例えば翌FY2010/11予算案に関してスワンが最も誇示したのも、前年の公約、予測を3年間も早めて、FY2012/13には財政収支を黒字化できるというものであった。

予算案とは、主として来年度の政府各種施策を国民に提示し、説明するものだが、FY2010/11予算案でスワンは、2年以上も先の財政が黒字化する見込みであることを前面に出したばかりか、それを同予算案の「目玉」と位置付けたのである。その姿勢は翌FY2011/12予算案、そして今次予算案でも同様であった。

以上のように、財政収支の早期黒字転換はスワンの悲願であり、したがって政府にとって今次予算案、すなわちFY2012/13予算案の最優先事項であったのは、言うまでもなく来年度に財政の黒字化を達成するという公約の遵守であった。

予算案によると、来年度のアンダーライング現金ベースでの財政収支は15億ドルの黒字で、その後もFY2013/14で20億ドル、FY2014/15では53億ドル、そして当予算案の将来見積もりの最終年であるFY2015/16では、75億ドルになるものと予測されている。

何と言っても09年以降の政府の一貫した公約で、しかも最優先課題とされてきた公約であるし、そもそもこれまでの労働党政府が、「過剰約束、過少実行」との批判に晒されてきただけに、黒字転換公約の遵守が政府には大きな得点、実績となったのは間違いない。

では、スワンがなぜにそこまで財政健全化に固執してきたのかだが、スワンは財政黒字の達成によって、政策の支出に必要な借金を減らせるし、また豪州準備銀行(RBA)にフレキシビリティーを与える、換言すれば、RBAが必要と判断した際に金融緩和策を発動しやすい、発動が効果を上げる環境を作れること、あるいはほかのOECD諸国の経済が低迷気味である中、豪州の国際的な信用度、豪州への評価を高めることができる点を挙げている。

ただ、将来の国内景気に不透明感がある状況下で、早期の黒字化に強く拘泥することの経済的合理性は低い。真の理由は政治的なもので、すなわち背景には、選挙での有権者の投票行動を決定する重要要因は、与野党の経済運営能力に関する有権者の「漠然とした」評価で、その点に関して労働党は、伝統的に自由党の後塵を拝してきたとのスワンの認識がある。

そして経済の専門家では決してない、一般国民の「漠然とした」評価を決めるのは、金利の水準と(注:金融政策はRBAの主管だが、例えば高金利に対する国民の怒りの鉾先は政府へと向かう)財政の状況であるとの認識もある。ところが07年に誕生したラッド/ギラード労働党政権の場合も、これまでの4カ年すべてで、しかも莫大な赤字を記録している。

もちろん、スワンも繰り返し主張している通り、莫大な財政赤字へと転落し、また政府が巨額の債務を抱えることを余儀なくされた主因は、世界金融危機(GFC)の発生という経済環境の激変、最近ではQLD州の大洪水、日本やNZの大地震といった自然災害の影響、そして依然として不安定な欧州情勢に起因する景気の陰りなど、主として「外因」によるものと言える。

ただGFC対応の政府の財政出動にしても、効果があったことは否定できないものの、「オーバー・キル」であった、あるいは不必要、経済効果の薄い策が多かったこと、換言すれば、労働党政府の失策が莫大な赤字に繋がったことも事実で、そのことは国民の間でも認識されている。

そこでスワンは、国民に最も分かりやすい財政の早期健全化を通じて、労働党の経済運営能力の高さを何とか誇示しようとしているのだ。ただ黒字化達成については、以下の2点に留意すべきであろう。

第1に、野党保守連合の「粉飾決算」との主張はやや大袈裟にしても、黒字化の達成は、来年度の財政負担を軽減するような形で数々の政策変更、恣意的(しいてき)な会計処理が行なわれた結果、ようやく実現されたものであるという点だ。しかも第2に、黒字化の達成とは、しょせん予測に過ぎないという点である。

黒字化の根拠とされる各種予測の中身にしても、例えば今年度から来年度にかけて政府の収入が12%近くも増加し、GDP比では22.3%から25.1%にまで上昇するとの予測、他方で政府の支払いが今年度のGDPの25.1%から、来年度には23.5%にまで低下するとの予測には、重大な疑問が呈されている。また絶対額で15億ドル、GDP比ではわずかに0.1%に過ぎない黒字幅など、まさに吹けば飛ぶような「薄い」ものに過ぎず、依然としてやや甘い財務省の経済成長率予測や、あるいは豪州ドルの交換レートがわずかに変動するだけで、一挙に赤字に転落する類のものに過ぎない。

「バトラー」向けの所得再配分

予算案の公表から2日を経た5月10日に、下院議場では野党保守連合代表のアボットによる恒例の対政府予算案演説が行われた。

その中でアボットは、今次予算案の最大の問題点として、経済成長路線ではなく所得再配分路線である点、すなわち今次予算案が経済成長を志向したもの、あるいは経済成長のための各種施策を盛り込んだものではなく、所得の再配分のみを目指したものであることを指摘している。要するに、「パイ」あるいは「ケーキ」を大きくする努力はせずに、与えられた「パイ」「ケーキ」をいかに分配するかだけに執着しているとの批判である。

一方、スワン財務大臣は、規律、抑制とともに、優先順位という言葉を使って自身の予算案を形容している。スワンの言う優先順位とは、つまるところ国民層のどこを優先目標にして予算案を組むかということで、スワンは政府からの支援を最も必要としている層、すなわち生活コストの上昇に喘ぐ「バトラー」(Battlers)が今次予算案の優先対象であることを明確にしている。

この「バトラー」という言葉は決して蔑称ではなく、生活苦を抱えながらも、前向き、真面目に働いているといった人々を指す。より具体的には、都市の郊外に居住する比較的若い家族で、多くは(中)低所得のブルー・カラー層を指す。(中)低所得ブルー・カラー層と言えば、伝統的には労働党の票田であるわけだが、庶民の問題には無関心で、「ビッグ・ピクチャー志向」とされた90年代のキーティング労働党政権への不満から、一部の「バトラー」はハワード保守連合の支持者となり、これが保守の長期政権化を可能にしたとされる。

ただ「バトラー」も、07年11月にラッド労働党政権が誕生した時点では、その多くが労働党へと回帰したとされた。ところがギラードが首相になり、また「体育会系」で労働者の一部からも受けるアボットが野党リーダーとなってからは不安定となり、相当数が再度保守へと向かいつつあった。

とりわけ昨年の2月にギラードが、選挙公約を破って炭素税の導入を決定したことは大きかった。炭素税に強く反対するのは、既に光熱費の高騰など、生活コストの圧力に晒されていた「バトラー」であったことから、これを契機に「バトラー」の労働党離れに拍車が掛かったのである。

今回の「バトラー」重視予算案も、炭素税の負のインパクトを認識した政府の、炭素税補償策の一環として位置付けられるもので、これを通して政府は、選挙上極めて重要な有権者層の再獲得を目論んだのである。ただ、政府の最大の優先事項は来年度の財政を黒字に転換することにあったため、各種「バトラー」対策の財源的な余裕はなかった。そこで政府は、さまざまな分野の既存政策の変更、廃棄で浮いた財源を、「バトラー」に向けて再配分するといった方法を採用している。

その中でも最も重要で、しかも今次予算案の最大、唯一の「サプライズ」であったのが、鉱物資源利用税(MRRT)の税収の一部を「バトラー」対策に流用するとの決定であった。

周知の通り、資源税(注:初期に計画した資源超過利潤税RSPTあるいはMRRT)導入を画策してきた労働党政府は、その目的、あるいは導入する上での「理論武装」として、将来にわたり安定した税収を確保することと、ブームを謳歌する資源・エネルギー業界の税貢献を高めることを挙げてきた。それに加えて政府は、「所得再配分」策、すなわち資源税収の一部を財源に法人税の減税を実施することによって、現在問題視されている「国内経済の二重構造/二重スピード」を是正することができると強調してきた。

ここで言う再配分とは、「豊かな」資源・エネルギー部門から、製造業といった相対的に「貧しい」非資源・エネルギー部門への再配分であった。ところが今次予算案で政府は、(中)小ビジネスの場合は来年度から、大ビジネスの場合には再来年度から、現行で30%の法人税率を29%に低下させるとの施策を、あっさりと廃棄している。

しかも今次予算案には、4カ年で47億ドルという、これによって浮いた額を一部財源とする、「バトラー」向けの「バラマキ」政策が盛り込まれている。

政府の決定は、資源・エネルギー分野からの所得再配分先を、非資源・エネルギー分野から低所得国民層へと振り替え、もって資源・エネルギー・ブームの恩恵を直接「バトラー」に共有させようとするものにほかならない。もちろん、これは政府の明白な公約違反で、犠牲となった形のビジネス界、とりわけ大ビジネスは政府を強く批判している。

これに対して政府は、「安価な政府」を標榜する野党保守連合までが法人税減税に反対してきたばかりか、政府と政治連携関係にあるグリーンズ(緑の党)も抵抗してきたことを挙げつつ、政策の廃棄は野党勢力の節操のない反対のため、と反論している。

確かに政府の法人税減税策の廃棄決定は、ギラード政府は約束を守らないとの、既に国民の間に醸成されたパーセプションを強めるものではある。ただ、政治的な「収支決算」では政府にプラスとなるものである。

というのも、国民の多くが「ぼろ儲けしている」と感じている資源・エネルギー業界から吸い上げた金を、大ビジネスへの減税策に使うのではなく、あたかも「ロビンフッド」のごとく、直接(中)低所得層の国民へと還元することによって、労働党は社会的弱者の味方、社会的弱者の救済のために創設された党という、労働党の「レゾンデートル(存在理由)」を強化することができるからだ。

ラッドもギラードも、一体全体誰を代表しているのか、価値観は何であるのか不明、と繰り返し批判されてきただけに、こういった政治的シンボリズムは重要である。

2012/13年度連邦予算案の税務概要

アーンスト・アンド・ヤング パートナー/ジャパン・ビジネス・サービス
アジア太平洋地域統括 菊井隆正

予想通りスワン財務相は約束を守り、15億ドルの黒字化を目標とした連邦予算を発表した。2011/12年度収支見込みであった441億ドルの赤字からの驚異的な転換だが…。

グローバルおよびオーストラリア経済は依然脆弱(ぜいじゃく)であり、多くの業種が厳しい経営環境に置かれている。これまでオーストラリアを牽引してきた資源業界も世界経済の潜在するリスクにさらされており、これほど大きな予算の転換は通常であれば、財政的に経済を弱らせる要因となる。先行きが不透明な環境において「本当に黒字転換が必要であったか?」という疑問点が残る。

今回の予算黒字化は、主に持続可能な歳出カットというよりは、計画していた歳出の後回しによって得られており、片方の手で歳出し、もう片方の手で他方から削減する、という点が目につく。主要な教育や医療の改革もストップがかかった模様であり、防衛に関するサポートも大幅に削減された。また、オーストラリアを金融センターに発展させるという取り組みに反する政策も含まれている。さらに、期待されていた法人税率の引き下げも取りやめ、削減によって確保された予算を一般家庭への支援に充当した。

歳出のための資金を効率よく公正に調達するという政府側の継続的な改善努力も一部含まれるものの、歳出削減の質やこれから取り組む予定だったさまざまなイニシアチブの確実性が問われると思われる。今回の予算案で短期的には黒字化を達成できるかもしれないが、長期的にはオーストラリア経済を強化できないと予想される。

【経済】

今回の予算案は次のような主要経済予測に基づいている。

●オーストラリア実質GDP成長率:12/13年度3.25%、13/14年度3%。主に企業投資と輸出がGDPの成長を支えると予想される。

●世界経済成長率:12/13年度4%、13/14年度4.25%。新興諸国の成長が多少鈍化し、先進国における景気回復が始まると予想される。

●交易条件(Terms of trade):過去140年間で最高の水準を維持。ただし、供給増加に伴い、非農業商品価格が下がり12/13年度は5.75%、13/14年度は3.25%減少すると予想される。

●輸出:12/13年度、13/14年度とも4.5%増加。非農業商品の輸出は引き続き増加する一方、製造業・サービスの輸出は豪ドル高により低迷すると予想される。

●輸入:12/13年度7.5%、13/14年度5.5%増加。資源業界への継続的投資と豪ドル高が主な要因で、輸入は大きく伸びると予想される。

●経常収支赤字:経常収支赤字は、貿易収支悪化と交易条件の低下により12/13年度は4.75%、13/14年度はGDPの6%に拡大すると予想される。

●失業率:12/13年度は5.5%、同年度における労働力率は65%に定着すると予想される。

●賃金上昇率:12/13年度、13/14年度とも3.75%。労働市場は低迷しインフレ圧力が抑制されると予想される。

●潜在的インフレ:12/13年度は2.75%(このうち0.25%は炭素税による)。13/14年度は2.5%に減少と予想される。

【企業】

事業課税制度をめぐる予算のギブ・アンド・テイクで損をするのは産業界である。政府は法人税率引き下げを棚上げし、そのほかの減税措置を撤廃することで税収を大幅に増やしている。増収分の一部は事業課税制度の改善に充当されるが、大半は個人や世帯の追加支援に向けられる。

主要な税措置▼はマイナス影響

主要な歳入項目
2012/13〜2015/16年度

 の歳入への影響(豪ドル)

法人税の1%減税の撤回 46億
遠隔地勤務手当の改正 10億
消費税(GST)コンプライアンス・プログラムの延長 10億
環境にやさしい建物に対する優遇措置導入を撤回 4億
投資信託に掛かる源泉税率を15%に引き上げ 3億
適格退職金に関する税務上の優遇措置の縮小 2億
主要な歳出項目
欠損金繰戻制度の導入 ▼7億

予算案の改革ロード・マップでは、事業税作業部会(Business Tax Working Group)が、法人税引き下げなど、事業課税制度改革に関して長期的な選択肢を検討するとしている。だが、その見直しは歳入に影響してはならないとされており、予算案には歳入コストが含まれていない。企業が積極的に法人税減税を求めない限り、この改革は長年にわたって実現しないだろう。

欠損金繰戻制度の導入

企業は1年当たり最大100万ドルまで、2年にわたる欠損金の繰戻しが認められることになる。導入は以下のように段階的に行われる。

●12/13年度は11/12年度に支払った税額の還付を受けるため、1年分の欠損金繰り戻しが認められる。
●13/14年度以降は、2年前までに支払った税金に対して欠損金の繰り戻しが認められる。

欠損金繰り戻しはフランキング勘定の残高を上限とし、租税回避規則が適用される。この措置は特に小規模事業者にとって有利だが、すべての企業に適用される。だが、信託、パートナー・シップ、個人事業主には適用されない。

また、政府は繰越欠損金利用に関する事業継続要件の刷新を検討するため事業税作業部会の提案も考慮する予定である。

不良債権償却非控除対象の拡大

現行の税法では、連結納税グループ内の不良債権は損金不算入であるが、改正後は、連結納税グループ外の関連会社間取引に関わる不良債権も損金不算入扱いにするとしている。

リミテッド・リコース・ファイナンス(LRD)規定の改正

LRD資金を用いた資産購入に関わる資本的支出を、納税者が実質上支出のリスクを負わず経済的損失を被らない場合には、損金不算入とするためLRDの定義が改正される。

キャピタル・ゲイン税(CGT)の改正

予算では、企業や取引に影響するさまざまなキャピタル・ゲイン税制の改正が提案されている。残念ながら詳細は未発表である。主な改正点は以下の通り。

●株式交換に関わる課税繰延べ規定を改正する。現行規定上納税者が買収対価を転換優先株とすることで買収者側が取得した株式について時価同等の税務薄価が得られるか、これを阻止する改正は即時導入となる。さらに、買収するグループ内で生じるグループ会社間の債務の税務薄価設定についても同様の租税回避規定が適用され、これは信託にも適用となる。別会社またはユニット・トラストとの間に法人を挿入する際の課税繰延措置が、収益資産と棚卸資産に適用拡大される。これは12年5月8日から有効。

遠隔地勤務手当て(LAFHA)の制限

11年11月に発表された一時居住者に対するLAFHA(Living Away From Home Allowance)を撤廃する提案については強い反対があったにもかかわらず、政府はこれらの優遇措置をさらに制限する方向に動いている。

予算案発表後、オーストラリアにおけるLAFHA税制優遇措置の対象は通常の居住地に住居を維持する従業員に限られ、その場合でも適用は最大12カ月までとなる。既に実施されている手当てに対する限定的な経過措置は、14年7月1日まで有効となる。ただし、この経過措置が、より広範に昨年11月の提案の影響を受ける一時居住者にも適用されるか否かは不明である。また、予算案は11月提案の不透明部分の多くについても明らかにしていない(5月下旬に発表されると予想)。

財務省は今回の予算案の中で公表された経過措置は海外からの勤務者には適用されないと表明しているものの、ほかの経過措置を導入するかどうかは現時点では不明である。さらに豪州で働く一時滞在者のための遠距離勤務手当の事実上廃止を試みた、以前発表された改正案に関する詳細は予算案には含まれていない。

Basel(バーゼル)III—ティア2の新たな措置

歓迎される発表としては、バーゼルIIIに基づく資本再編で銀行が発行するティア2規制資本証券は所得税上債務として扱われ、係る証券からのリターンも税控除の対象となり得る。

金利の割引は撤回

13年7月1日より施行される予定であった金利収入課税の50%割引は「割引額算出の複雑性と全般的な有効性についての懸念」から実施が見送られた。

信用組合(Credit Unions)には朗報

11年7月1日より、銀行へと銘柄変更された信用組合に対しインプット・タックス・クレジット軽減措置が再度適用されるようになった。

金利への源泉徴収税課税の段階的縮小は延期

政府は金融機関がオフショア借入について支払う金利への源泉徴収税を段階的に縮小すると述べている。この再発表は歓迎されるものの、オーストラリアの債務者が使用可能なクレジットの増加や銀行の流動性支援といった潜在的な利益実現が延期される。

投資信託(Managed Investment Trusts)源泉徴収税率倍増

政府が源泉徴収税率を7.5%から15%へと引き上げることにより、アセット・マネジメント、インフラ、プライベート・エクイティや不動産業界で幅広く活用されているオーストラリアの投資信託(MIT)から外国人投資家が撤退する可能性がある。

この予想外の措置は12年7月1日に発効するが、かねて大々的に宣伝されてきたオーストラリアを金融センターに構築するという政策とは相反する。外国人投資家からの長期資金調達に依存する大型公共インフラ案件に大きく影響する可能性がある。

スーパーアニュエーション制度改正の影響

業界団体が現状維持を求めたものの、政府は予想通り30万ドル超の所得のある個人の年金拠出金への課税率を2倍に引き上げると発表した。15%から30%への税率引き上げは12年7月1日から適用される。また、50歳以上で残高が少ない納税者に対する優遇措置である対象拠出上限(concessional contribution cap)の引き上げ(2万5,000ドルから5万ドル)を2年間延期すると発表した。

【公共事業】

優先的インフラ・プロジェクトへの注力

インフラストラクチャー・オーストラリア(IA)の推奨通り、同予算は控えめだが優先インフラ・プロジェクトへの投資が含まれている。予算案は、1億ドルを超える全プロジェクトの評価を義務付けることで、IAの役割を一層強化している。

独創的な資金調達が民間投資を後押し

シドニーの環状道路網完成に民間資金を確保するべく特別目的事業体に2,500万ドルが投じられることは歓迎される。これは大型インフラ開発への民間セクター投資を後押しする新しい独創的な手法を探るための連邦政府と各州・準州の対話に向けた興味深い第1歩となった。

医療が財政黒字の犠牲に

財政黒字を優先した歳出の見直しの結果、医療改革が足踏み状態となるのは好ましくない。全般的な政策の方向性は健全なものの、利益を先取りして歳出を遅らせるという手法が基本となっている。これは一層の制度疲労を引き起こし、全般的な利益を遅らせる可能性が高い。政府は高齢者ケア、精神医療、新たな障がい者医療改革、医療と病院を巡る過去と現在の改革を統合する機会を失したのである。

教育改革は就学児童給付にかかわらず失速

予算案は新たな教育改革を全く含まず、高等教育や技能教育に関する主な改革は継続されるものの、一部は延期されるか節約イニシアチブにより縮小される。教育費控除(Education Tax Refund)は、5年間で総額21億ドルという適格家庭への年次給付金である就学児童給付(Schoolkids Bonus)に置き換わる。

もう1つの主なイニシアチブとして、壮年労働者への技能教育・研修に1億100万ドル、13年度にゴンスキー・レビュー(Gonski Review)を進展させるために、さらに510万ドルが投じられる。

【個人】

予算案では中・高所得者層の優遇措置へのアクセスを制限し、その制限による「節税分」を就学児童給付金やそのほかの計画に充てる。最も重大な個人税務措置は以下の通り。

主要な税措置▼はマイナス影響

歳入項目 2012/13〜2015/16年度
の歳入への影響(豪ドル)
医療費控除に関する改正 4億
利子所得の50%非課税の廃止 8億
雇用関連費用の定額控除の廃止 16億
税務上優遇措置の対象となる年金拠出額引上げの延期 14億
高所得者層の年金拠出に対する税率の引き上げ 10億
歳出項目
教育費控除を就学児童ボーナスに変更 ▼35億

12年7月1日以降の個人所得税減税

政府はクリーン・エネルギー未来計画(clean energy future plan)の一環として公約した個人所得税減税を継続する。変更は微細なもので、下の2つの累進課税範囲に絞って、2段階で行われる。非課税限度額も低所得税控除の変更に合わせて改正された。

居住者に対する現行の税率(11/12年度)

課税所得 税額
0〜$6,000 なし
$6,001〜$37,000 $6,000超の範囲につき$1当たり¢15(低所得税額控除を差引く)
$37,001〜$80,000 $4,650+$37,000超の範囲につき$1当たり¢30
$80,001〜$180,000 $17,550+$80,000超の範囲につき$1当たり¢37
$180,001以上 $54,550+$180,000超の範囲につき$1当たり¢45

新税率(12/13年度)

課税所得 税額
0〜$18,200 なし
$18,201〜$37,000 $18,200超の範囲につき$1当たり¢19
$37,001〜$80,000 $3,572+$37,000超の範囲につき$1当たり¢32.5
$80,001〜$180,000 $17,547+$80,000超の範囲につき$1当たり¢37
$180,001以上 $54,547+$180,000超の範囲につき$1当たり¢45

15/16年度より、非課税所得枠が1万8,200ドルから1万9,401ドルまで引き上げられる。

税率変更の影響

低所得税控除を認めメディケア税を除外すると、変更は軽微なものとなっている。

税率変更の影響

課税所得 納税額
11-12 12-13 15-16
$16,000 なし なし なし
$35,000
(フルタイムの平均週間所得(AWE)の約半分の年間所得)
$3,050 $2,747 $2,664
$70,000
(AWE年間所得)
$14,550 $14,297 $14,234
$140,000 $39,750 $39,747 $39,734

教育費控除(Education Tax Refund)に代わり就学児童給付金を導入

従来のETR(Educational Tax Refund)に代わり就学児童現金給付が新たに導入される。適格家庭は以下の給付を毎年受ける。

●小学生1人当たり410ドル
●中高生1人当たり820ドル

この支払いは年2回行われ、13年7月1日以降、1学期と3学期の開始前に給付される。経過措置として、12年6月に1回限りの一括払いが行われる。

過去の予算案の約束は取り消し

残念なことに、税制措置の端々における微調整により、過年度予算案で発表された改正案は撤回される。撤回されたものには以下が含まれる。

●金利収入の課税額50%割引
●雇用関連費用の標準的控除

非居住者を対象とした変更

予算案では非居住者についても8万ドル未満の全所得に32.5%(12/13年度より)と33%(15/16年度より)の税率を適用するという改正が発表された。

オーストラリアのキャピタル・ゲイン税(CGT)の課税対象となる非居住者である個人納税者は、予算案発表後に生じたキャピタル・ゲインについて50%のCGT割引措置を失うことになる。予算案発表前に生じた一切のキャピタル・ゲインについては、割引措置が適用される。

スーパーアニュエーションに関する措置

修正課税所得が30万ドルを超える納税者については、12年7月1日より退職年金拠出金の優遇税率が15%から30%へと引き上げられる。

残念なことに、過去に発表された退職年金基金残高50万ドル未満の50歳以上の個人の優遇措置対象拠出上限(5万ドル)の引き上げは、14年7月1日まで延期される。この改正の延期により、14年7月1日まですべての個人の優遇措置対象拠出上限は2万5,000ドルとなる。

高額退職金に照準

高所得者は退職金(ETP)優遇税率が非適用となる。ETP(Eligible Termination Payment)については、現在物価スライド制で16万5,000ドルを上限として最高税率31.5%(55歳以上については16.5%)が適用されている。12年7月1日以降、優遇税率は総課税所得18万ドル未満の受給者について、ETP受給でこの限度額を超えない部分についてのみ適用される。解雇手当、補償金、就労不能給付、死亡給付は影響を受けない。

医療費の税控除とそのほかの改正

12年7月1日以降、医療費税控除に適格性テスト(Means test)が適用される。所得8万4,000ドル超の独身者と16万8,000ドル超の世帯については、税控除は5,000ドルを超える正味医療費の10%に限定される。

また今回の予算案には、国防費を54億ドル削減し、黒字目標達成への単独政府部門からの貢献としては最大である。この予算削減がオーストラリアの軍需産業に与える影響は大きく、民間セクターが今後4年間にこれほど巨額の資金投資が取り消されたことにどう反応するかは興味深い。さらに公務員4,000人の人員削減も含まれており、国税局、財務省、防衛などが対象となり、これらが人員削減の対象として適切な機関なのか、という疑問点が残る。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る