【視点】WSW、決戦は金曜日

23日に行われた今季3度目のシドニー・ダービー。両チーム譲らずの熱戦は痛み分けで、WSWの初優勝は今週金曜日(29日)に行われる最終節のニューカッスル戦に持ち越された。

試合の詳細は、別途アップされた記事を参照いただくとして、ここでは、初優勝をホームで決めるはずの大事な試合で図らずとも露呈してしまったWSWの2つの課題について触れる。それは、WSWの選手層の薄さとチームとしての経験の低さの2つ。見る側としても、これらの課題を洗った上で、決戦の金曜日に臨むほうが良いと思うのでお付き合い願いたい。

前者に関しては、これまではWSWの登録選手の少なさをむしろポジティブに捉えてきた。こぢんまりしたクラブ内での相互理解の深さ、そして、主力と控えの間の意識レベルの差異が少ないことは、純粋に評価に値する。実際、WSWは、チームの一体感が非常に強いチームで、これまでも、ケガや出場停止などでレギュラーが出られないときには、代わりの選手がその不在をきっちりとカバーしてきた。機を見て、控えの選手に公平にチャンスを与えるポポビッチ監督の選手起用術には共感を覚えていた。

しかし、このダービーマッチの大事な局面で、支配下登録選手が少ないという事実が、“選手層の薄さ”としてネガティブに露呈してしまった。今回の試合、ざっと上げるだけでDFビューチャンプ、DFポレンツ、MFムーイ、FWヘルシの4人のレギュラーが欠場。それぞれの空いたポジションには、ファーストチョイスではない選手の名前が並んだ。もちろん、そのすべてが悪い働きだったわけでは無い。ユーティリティ・プレイヤーの本領発揮のDF/MFコールは小野の代役で蹴ったFKを相手ゴールに捻じ込んで見せたし、MFトライフィロは小野が抜けた中盤を何とか持たせようと献身的に動くなど、合格点のできだった。

 

見事、FKを決めたシャノン・コール(Photo: George Suresh)

しかし、重要な得点源であり、小野の攻撃の最大のパートナーであるヘルシの代役として先発したFWアッピア=クビには、厳しい評価を下さざるを得ない。正直なところ、ヘルシと同じものを望むのは少々酷だというのが偽らざる感想だ。
もう一人は、DFラロッカ。彼も複数のポジションがこなせる貴重な選手として戦力としてどうしても必要な存在だったのに、不要なしかも悪質なファールで残りのシーズンを棒に振った。彼の離脱で、ただでなくとも苦しい選手のやり繰りがいっそう厳しくなり、ポポビッチ監督の用兵のオプションを限定してしまった意味での責任は非常に大きい。

そして、冒頭で挙げたもう一つは、チームとしての経験の少なさ。これは、選手個々の経験の少なさを言っているのではない。どうして、代表経験も豊富なGKコビッチ、ビューチャンプ、百戦錬磨のトポ=スタンリーやFWブリッジなどを“経験のない選手”などと評することができようか。ここで言いたいのは、チームとして、そしてチーム内の各ユニットとしての経験の相対的な低さという意味。
たとえば、センターバック。いつものベテラン二人の組み合わせではなく、ビューチャンプの欠場で、この日のコンビをはトポ=スタンリーとラロッカの両名。普段の試合であれば問題なかったのであろうが、今回のような大事な試合、緊張感が高まる状況でいつもと違うペアで先発しなければならなかったこと自体が大きなリスク。その不安が、トポ=スタンリーの有り得ないミスとして最悪の形で表れてしまった。あれが、いつものペアだったら、あのミスは起きただろうか・・・・などと考えたくもなる、あまりにらしくないミスだった。
中盤の底の二枚の組み合わせもそうだ。MFポリャックとトライフェロ、この二人での先発は今まであっただろうか。きちんと確認したわけではないが、おそらくは先発では今までないはず。ともに、決して自分が自分がというタイプのMFではない。どちらかというと周りを引き立てるタイプの二人がお互いを引き立てあおうとすると、どうしても攻撃面での空白が生じる。ムーイがいるときといないときでは、小野の役回りが微妙に変わってくる。そのことが、攻撃に大きな影響を及ぼしたことに疑問の余地はない。

この試合の全体を通して、上に書いたことなど幾つかの問題点が浮かび上がってきた。そのあたりの修正点、若き知将のポポヴィッチが気づいていないはずがなく、次戦では可能な限り修正されてくるだろう。しかし、知将の腕をもってしても、絶対的な駒不足はいかんともしがたい。そう考えた時に、ラロッカの出場停止とケガ人の続出は「痛い」としかいいようがない。

さらには、待ったなしの一発勝負のファイナルでは小さな綻びが大きな破綻を招きかねない。ファイナルに向けては準備期間が多少割けるので、ここで挙げたネガティブな要素のすべてが杞憂に終わるくらいのしっかりとした準備を行ってほしい。

まずは、最終節アウェーのニューカッスル戦。

近づいていく、近づいていく、決戦は金曜日・・・・かつて一世を風靡した人気グループのヒット曲ではないが、どんなにあがいても、最終節の決戦の日はすぐそこだ。

文:植松久隆(スポーツライター/本紙特約記者)

 

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