競泳日本代表メダル・ラッシュ!NSW州オープン2017大会レポート

ニュー・サウス・ウェールズ州オープン選手権

競泳のニュー・サウス・ウェールズ(NSW)州オープン選手権が3月3~5日、シドニー近郊のオリンピック・パーク・アクアティック・センターで開催された。リオ五輪日本代表の5人を含む13人の日本人選手が同大会に参加。地元の有力選手も参加する中、若手とベテランで臨んだ日本チームは大会全日程を通し18個のメダルを獲得する大活躍を見せた。以下、大会の模様をレポートする(文中全て敬称略)。(文・写真=山内亮治)

NSW州オープン選手権大会ハイライト

3月1日に現地入りした日本チームは、わずか2日間の調整を経てNSW州オープン選手権大会を迎えた。4月の日本選手権(4月13~16日)に向けた重要な実戦の機会に気持ちが高まる一方で、何人かの選手からは「コンディションに不安があった」という声が聞こえた。しかし、大会が始まると日本選手はそんな不安を吹き飛ばす活躍を見せる。

光った10代選手の活躍

大会初日、男子200mバタフライで阪本祐也(大紀SC/三重高校)が2位、岩田睦生(ビッグ・エス加木屋/豊川高校)が3位に輝き日本チームとしてメダル・ラッシュの先陣を切る。女子では、小嶋美紅(イトマンSS/近畿大学付属高校)が400m個人メドレーで銀メダルを獲得した。

10代選手の活躍は、大会2日目も続く。前日に引き続き阪本祐也が男子50mバタフライで2位に輝き、24秒11の自己ベストのタイムで優勝した古賀淳也(埼玉スウィン/第一三共)と共に日本チームによるワン・ツー・フィニッシュを飾る。また、男子100m平泳ぎで花車優(坂出伊藤SS/丸亀高校)が2位につけた。

大会最終日には、男子100mバタフライで阪本祐也が、200m平泳ぎで花車優がそれぞれ銀メダルを獲得。両選手とも自己ベストによるうれしい表彰台となった。そして同日、男子400m個人メドレーで竹内智哉(ヨコハマSC/湘南工科大学付属高校)が4分18秒52のタイムで優勝。10代選手たちによる活躍を華やかに締めくくった。

五輪代表選手も実力を証明

今回のNSW州オープン選手権大会では、昨年のリオ五輪で活躍した古賀淳也、藤森太将(ミキハウス)、鈴木聡美(ミキハウス)、高橋美帆(ミキハウス)、持田早智(ルネサンス幕張/千葉商科大学付属高校)の5人の代表選手が参加。若い選手たちが多くメダルを獲得する一方で、五輪を経験したベテランもさすがの活躍を見せた。

リオ五輪の200m個人メドレーで4位入賞と大健闘した藤森太将は、今大会も得意の同種目で金メダルを獲得。また、大会最終日の200m平泳ぎでは2分12秒90と自己ベストを更新するタイムで3位になった。

また、4×100mリレーでリオ五輪では8位に入賞し今大会では男子キャプテンの古賀淳也は、先述の50mバタフライを含め、個人種目では金2つと銅1つの3つのメダルを獲得。特に、大会初日の50m背泳ぎでは、24秒53という外国人選手を含めたオーストラリア国内最高記録で優勝し、オリンピアンの実力を証明した。

総合力の高さを示した日本チーム

五輪を経験したベテランと10代の若手で構成された日本チームは、リレー種目でも次々とメダルを獲得した。

大会初日の女子4×100mメドレー・リレー(小嶋美紅/鈴木聡美/持田早智/高橋美帆)では4分14秒91で2位、男子4×100mメドレー・リレー(竹内智哉/花車優/岩田睦生/阪本祐也)は1位を記録。そして、2日目の男女混合4×50mリレー(古賀淳也/鈴木聡美/阪本祐也/持田早智)では1位、3日目の女子4×100mフリー・リレー(持田早智/入澤愛/鈴木聡美/小嶋美紅)は2位となった。

短期間の海外遠征であっても、「食事の席などではチームの若い選手たちに混じりコミュニケーションの取り方を工夫した」(鈴木聡美)と言うように、試合の外でも連携を深めた日本チームは、リレー種目においても総合力の高さを発揮した。

チームを支えた実力派選手を直撃

今大会の日本チームではリオ五輪を経験したベテラン勢が10代の若い選手たちを引っ張った。昨年の五輪を経験し男子キャプテンを務めた古賀淳也に話を伺った。

古賀淳也 「水泳人生の集大成に向けて」


古賀淳也(こがじゅんや)プロフィル◎1987年7月19日生まれ、埼玉県出身。2009年イタリア・ローマで開催された世界選手権では男子背泳ぎ100mで金メダルを獲得。16年リオデジャネイロ五輪では男子4×100mリレーに出場し、8位入賞。

―今大会は今後のレースに向け調整の段階にあたると思いますが、コンディションはいかがですか?

オーストラリアに来る前は、正直ものすごく調子は悪かったんです。渡豪前の2月半ばにコナミ・オープンというレースが日本であり、そこで出たタイムは非常に良くないものだったので、「大丈夫かな」と不安がありました。

ただ、オーストラリアに来てレースをする中で、最初のレースである100m自由形は失敗してしまいましたが、その後ガラッと気持ちが切り替わり、大会1日目の50m背泳ぎではオーストラリア国内最高記録を出すことができました。その後も、勢いそのままに良い泳ぎができました。難しいコンディションでしたが、うまくアジャストできました。

―大会2日目、50mバタフライで金メダルを獲得されました。得意種目ではないと思いますが、レースを振り返ってみていかがですか?

50mのバタフライでレースに出たのは初めての経験だったので、自分にとっては「挑戦のレース」でした。正直、泳ぎ方も全然分かりませんでしたが、15mまでの浮き上がりの部分は自由形でもやっていて自信を持っているところなので、レース前はそこでリードすれば良い順位に行けるのではないかと考えていました。

結果的に、理想的な展開通りにレースが進みました。特に力むことなく泳ぐことができて良かったです。

―昨年はリオ五輪に出場されました。その経験は、ご自身にどのように還元されていますか?

まず単純に五輪に出場したことが自信になっているということと、あとは自分がやっていることは間違いないんだと練習に対する自信を持つことができました。その自信を考えると、リオ五輪を経て、現在は水泳に対し前向きに正面からぶつかっていける気持ちになっています。

―選手として今はベテランの領域にいるかと思いますが、今後目指すものは何でしょうか?

今年は50mの背泳ぎで世界記録を狙いたいと思っています。というのも、自分の水泳キャリアの中で成し遂げていないことは、世界記録を出すことと五輪でのメダル獲得の2つだけです。唯一この2つは自分の水泳キャリアにないことですから、東京五輪まではあと3年間残されているので、自分の水泳人生の集大成としても1年1年目標を明確にしていきたいと思っています。そのためにも、まず今年は世界記録を狙いたいですね。

来年はアジア大会での4連覇と東京でのパン・パシフィック選手権での活躍、そして再来年の世界選手権で良い結果を出し、東京五輪でメダルを獲得する道筋を思い描いています。本当に自分にとって水泳人生の集大成になるであろう3年間です。

―今大会では、今後に向けた良い手応えを感じることはできましたか?

オリンピアンとしての圧巻の活躍を見せた
オリンピアンとしての圧巻の活躍を見せた

NSW州オープン選手権前は、コナミ・オープンである程度の記録が出ればという気持ちだったのですが全く良い記録が出なかったので、オーストラリアではどのようにレースに臨むかということをコーチと相談していました。

現在は基本的に練習の内容や調整のスケジュールは自分で作り、レースによって目標タイムを設定しています。今大会で言えば、コーチとの話し合いの内容を含めコナミ・オープンを基準としてそれよりも速いタイムを設定しレースに臨みました。

そして、今大会を基準として4月の日本選手権ではそれよりも速いタイムを目標にしていきたいと思っています。いきなり速く泳げるようになるわけではないですから、今後良い記録を出すためにも、NSW州オープン選手権は今後の非常に重要なステップの1つになったと感じています。

―今後の抱負を聞かせてください。

今年30歳になり、25年間もの間水泳を続けていることになります。これからは東京五輪に向け1年1年が勝負になります。

そこで、これまで自分の中で培ってきたものをレースで発揮していくことはもちろん、レース以外のインタビューでの発言などにも注目してもらいながら、皆さんに応援して頂けたらと思います。

今後活躍が期待される若手選手に注目

10代のスイマーの活躍が光った大会で、本紙は昨年のリオ五輪に出場し3年後の東京五輪でも活躍が期待される持田早智に話を聞いた。

持田早智 「日本の女子自由形のイメージを変えたい」


持田早智(もちださち)プロフィル◎1999年7月19日生まれ、奈良県出身。2015年ロシア・カザンでの世界選手権で女子4×200mフリー・リレーで7位に入賞すると、16年のリオデジャネイロ五輪代表に選出。リオ五輪では4×200mフリー・リレーで8位入賞。

―今大会に臨むにあたりコンディションはいかがでしたか?

今年は夏に世界水泳があり、4月の日本選手権が代表選考レースにあたります。そのため、今年は何よりもコンディションのピークを日本選手権に持っていきたいと考えていました。まだ調整段階ではありますが、NSW州オープン選手権は日本選手権につながっていくようなコンディションの調整ができるよう心掛けていました。

―大会を通して見えた手応えと課題を振り返って頂けますか?

まず、レースの中で前半部分でスピードを出せていたことには手応えを感じています。一方で、今後の課題としては目標である日本選手権までにレース後半のスピード・アップをしていければと思います。

―昨年のリオ五輪では女子4×200mリレーで8位入賞という結果を残されました。その経験はどのように生きていますか?

 

昨年は五輪の決勝という舞台で泳がせて頂いて、レベルの高い選手の横で泳ぐことができました。そこで、細かな技術面でのレベルの差などを肌で感じることができたと思っています。今振り返ってみても、五輪でのレースは自分自身の長所や欠点、その両方に気付くことができた貴重な機会でした。

―インターハイや国体とは全く違う海外でのレースという経験は、どのように力になっていると思いますか?

海外でのレースは、相手選手が自分と年齢が近かったとしても、背が高くパワーの差というものをすごく感じます。そのパワーによるハンディを埋めるためには、今自分の持っている技術をもっと高める必要があると感じますし、このような気付きは国内では感じられないものだと思います。そのため、今後も定期的に海外のレースに出場できればと考えています。

リレー種目で金1個、銀2個のメダルを獲得した
リレー種目で金1個、銀2個のメダルを獲得した

―次の東京五輪は選手として非常に良いタイミングで迎えると思いますが、そこまでに踏むべきステップは見えていますか?

東京五輪を迎えるまでに大学に入学したりと環境面で変化があると思いますが、現時点では体もまだまだできていないので、今後は筋力のアップや体幹トレーニングなどフィジカルの面で自分に課すべきことがたくさんあると考えています。今後は着実にその部分で向上し、リオ五輪はリレーでしか出場できませんでしたが、東京五輪では個人種目で出場できるよう頑張りたいです。

―東京五輪でも得意の自由形で決勝を泳ぐご自身の姿を思い描いていますか?

現在の日本の女子自由型のレベルはまだ高いとは言えませんが、次の競泳日本代表を引っ張る世代になるのは自分たちだという気持ちを持っています。東京五輪では、「日本の女子自由型は弱い」というイメージを払拭できるレースができれば選手として最高です。

―今後の抱負を聞かせてください。

このオーストラリアでもさまざまな海外の選手と戦えたことを自分の励みに、日本でもトップの成績を残して、また力を付けてこのオーストラリアに戻って来たいと思います。そして、世界と戦える選手になることを目標に頑張ります。

代表コーチが感じた課題と収穫

今大会の日本チームではリオ五輪を経験したベテラン勢が10代の若い選手たちを引っ張った。昨年の五輪を経験し男子キャプテンを務めた古賀淳也に話を伺った。

西崎勇 「日本代表の底上げを」


西崎勇(にしざきいさむ)プロフィル◎1976年6月29日生まれ、東京都出身。株式会社ルネサンス所属。2014年の第6回ジュニア・パン・パシフィック大会の日本代表コーチを務め、16年リオデジャネイロ五輪には指導者として代表選手を輩出。

―若い選手主体の遠征の中で何か新しい発見はありましたか?

今大会に参加した選手は、主にベテランと若い選手から構成され中堅に位置する選手が不在でした。その状況でしたから、ジュニアの選手たちは五輪を経験した選手のレースに向かうまでの姿勢や行動をしっかりと目に焼き付けることができました。タイムを出す出さないにかかわらず、この3日間の大会の中で彼らの目つきや行動が変わってきたということが率直な印象です。

タイムが出たから次につながるというわけでもありません。若い選手たちにとっては国内に戻った時のレースで力を発揮する、今後につながる良い経験ができたはずです。

―4月の日本選手権に照準を合わせる選手がほとんどという中で、課題があったとしたら何が挙げられますか?

調整期間が2日間しかなく、チームとしての連携を十分に作り上げられなかったことが課題です。もちろん、レースを戦う中で連携が高まってきた部分はありますが、もう少し早くチーム力を高められれば初日から良いパフォーマンスができたのではないかと思います。

選手同士で一緒に過ごす時間が短かった一方で、リーダーとなる選手を立てたり、選手同士での話し合いの時間を設けたりとコミュニケーションをうまく取るための工夫もしました。しかし、単純にコミュニケーションのための時間と回数が少なかったことは否めません。ですが、今後似たような状況になった時にチーム・ジャパンとしてどうするか考えるための良い判断材料になったと思います。

―今大会は総括すると、どのような大会でしたか?

やはり、五輪の翌年ということもあり、五輪を経験したベテラン選手は調整が難しい中でのレースだったと思います。4月の日本選手権に備えるタイミングということもあり、調整真っただ中という状況でのレースでした。タイム自体はもう少しというのが正直なところですが、次に向けた課題は個々に見つけたはずなので、そこは収穫だと思います。

―今後の日本代表としての抱負を聞かせてください。

競泳日本代表としては2020年に東京五輪を控えていますので、今回のNSW州オープン選手権に参加した選手のみならず、日本代表としてジュニア層をどこまで引き上げられるかということに全力を尽くしたいと思います。

大会Photo Gallery

日本チームによるメダル・ラッシュとなった今大会。大会を通して選手やコーチたちはさまざまな表情を見せてくれた。

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