「平昌冬季五輪」見どころ紹介ガイド

Photo: AFP ウィンター・スポーツの祭典「平昌五輪」見どころ紹介ガイド
平昌五輪公式マスコットの「スホラン」(ⓒPyeongChang2018)
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アジアで3度目の冬季五輪となる「平昌(ピョンチャン)五輪」が2月9日に開幕、17日間の熱戦の火ぶたが切って落とされる。開催前から何かと話題豊富な同大会の見どころ、注目選手の情報を、夏季五輪と併せ2年ごとに登場してきた本紙特約記者・植松久隆がお届けする。(文:植松久隆/本紙特約記者)

“平昌”の基礎知識

冬季五輪としては、札幌(72年)、長野(98年)に続くアジアで3回目となる平昌五輪が開幕を迎える。今大会ほど、開催前からさまざまな話題を提供してきた大会も他にないのではないだろうか。それも残念ながらネガティブなものがほとんどなのだが、そのことに触れずにこの大会は語れまい。

「平昌」という地名を、冬季五輪の開催地決定の前から知っていた日本人が一体どれくらいいただろうか。大会を直前に控えた今となれば、さすがに「平昌五輪」のメディアでの露出が増え多くの人が知るようになったが、開催地決定直後の知名度はお世辞にも高いとは言えなかった。

そもそも、平昌はどこにあるのか。正式には「大韓民国江原道(かんうぉんど)平昌郡」。北に北朝鮮との国境、日本海を東に抱く江原道の中ほどに位置している。実際、大会に使用される競技施設は、同じ江原道にある江陵(かんぬん)市と旌善(ちょんそん)郡にも散らばっており、過去の大会の一都市単独とは異なる開催形式となっている。その平昌だが韓国国内では早くから冬季五輪候補地として誘致に励んできた。2010年、14年と2回の落選を経て、ようやく“三度目の正直”を実らせたのが今大会ということになる。

7日間の熱戦が繰り広げられる平昌の五輪会場(ⓒPyeongChang2018)
7日間の熱戦が繰り広げられる平昌の五輪会場(ⓒPyeongChang2018)

さまざまな問題に揺れた開催までの道のり

大会の盛り上がりに直接的に関係してくる“話題”の最たるものが、世界有数のスポーツ大国ロシアの出場停止問題。度重なるロシア選手絡みのドーピング禍(か)を国家ぐるみと断じた各国の反ドーピング機関からの申し入れを国際オリンピック委員会(IOC)が受け入れ、昨年12月20日に「ロシアの国家としての出場を認めない」との決定を発表。14年の自国開催のソチ大会では、金13個を含む33個のメダルを獲得して大会総合1位のメダル数で同大会を成功に導いた冬季競技の一大強国ロシアの不参加は、さまざまな余波を生じさせ、平昌大会の盛り上がり自体に大きな影響を与えることが予想される。

救済的措置として、ドーピング疑惑の潔白が証明された選手には「Olympics Athletes from Russia(OAR)」として個人資格での参加を認めるという抜け道があるが、その個人の参加選手に対して、国が圧力を掛けるようなことはあり得ないとプーチン大統領も明言している。実際、1月22日にはロシア・フィギュア・スケート連盟が人気・実力共に非常に高いエフゲニア・メドベージェワなど男女5選手をOARの資格で派遣することを発表。これらの動きに他競技がどの程度追随して、最終的にどの程度の規模の選手団がOARの名の下に集うのかは、全く予断を許さない。

更には、冬季五輪最大の“ドル箱”であったはずのアイス・ホッケーも、世界最高峰のプロリーグ・北米ホッケー・リーグ(NHL)所属選手の不参加が決まると、“世界最高”レベルで開催すること自体が難しくなってしまった。この決定が人気、動員面でもたらすデメリットを考えると、同決定は大会として「非常に痛い」としか言いようがない。

平和の祭典の実現は北朝鮮次第!?

ここまでの出来事を何とかしのいだとしても、ホスト国の韓国が北朝鮮のミサイル発射を繰り返す朝鮮半島の不穏な情勢の一方の当事者であることは動かしようのない事実。これだけを取ってみても、北朝鮮が度重なる挑発的行動を繰り返した昨年、ボイコットの可能性を示唆する国が出てきたことに驚きはなかった。状況が読めない情勢下、朝鮮半島から遠く離れた欧州からの選手派遣の是非をぎりぎりまで決めたくないというのは理解できる。

本来、そのような懸念を払しょくすべき文在寅(むんじぇいん)政権だが、その対策にはほとんど実効性はなかった。ところが1月20日、IOCによって北朝鮮選手22人の大会参加と女子アイス・ホッケーの統一チームでの参戦、開会式での統一旗の下での入場行進などが発表されたことで、潮目が若干変わった。これで北朝鮮が大会期間中の「確実な休戦」を担保したとの理解が広まれば、多くの懸念は和らぐだろう。開幕を直前に控えた今、北朝鮮もあからさまな動きを慎んでおり、無事に開会式は迎えられそうだ。「平和の祭典」が始まりさえすれば、さすがの北朝鮮も自重するはずで、大会の盛り上がりは後から付いてくるものと期待するしかない。

日本のメダル予想は「ソチ以上長野未満」

日本勢金メダルの最有力候補、羽生結弦選手(Photo: AFP)
日本勢金メダルの最有力候補、羽生結弦選手(Photo: AFP)

ここからは、完全に気分を入れ替えて、日本代表選手を中心に大会の見どころを紹介する。

15競技102種目が実施され、93の国と地域、それに前述OARを併せた94の代表チームが一堂に会する今大会は、世界最大のスポーツ・イベントと呼ぶにふさわしい盛大な規模となる。日本代表団も、海外開催では過去最高の113人の選手団を派遣したソチを上回る115人の出場が確定している。

日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕選手強化本部長は、昨年12月の段階で平昌五輪のメダル獲得目標を「複数の金メダルを含む9個」と発表した。自国開催で5つの金メダルを獲得した長野を除けば、8個のメダル(金1・銀4・銅3)を獲得した前回ソチ大会の実績を超えることが、現実的な目標となる。

ここ数大会の五輪直前の恒例になりつつあるのが、アメリカのスポーツ・データ分析・提供会社「グレースノート社」による、大会直前(30日前)のメダル獲得予想。同社によれば、日本のメダル獲得予想数は長野を上回る過去最高となる15個。金メダルは長野の5個に迫る4個と日本にとってうれしい予想が出た。ちなみに、これはロシア勢は除かれての予想であって、ロシア人選手の個人資格での出場が決まれば詳細は変更されるとのこと。そうなると、日本のメダル獲得数に多少の誤差は出てくるに違いない。

羽生、小平など金有力、豪州は南半球最強狙う

お家芸スピード・スケートも小平奈緒選手らを中心に複数メダルが期待される
お家芸スピード・スケートも小平奈緒選手らを中心に複数メダルが期待される(Photo: AFP)

日本の金メダル候補の最右翼は、男子フィギュア・スケートで五輪2連覇を狙う羽生結弦(ANA)。けがで思ったような準備ができていなかったが、確実に本番に向けて調整のペースを上げてきており、ぶっつけ本番の最高の舞台で華麗に氷上を舞う貴公子の復活劇を期待したい。フィギュア・スケートでは、ロシアの出場がない団体でも金メダル候補で、エース羽生不在の日本選手権を制した宇野昌磨(トヨタ自動車)もメダルをしっかり視界に捉えている。女子のエース宮原知子(関西大学)も、個人の資格で出場してくる世界選手権2連覇中のエフゲニア・メドベージェワら強豪ロシア勢との争いの中での表彰台を狙う。

フィギュア・スケートに次ぐ有力競技は、日本が伝統的に強いスピード・スケート。その中でも、女子500mの小平奈緒(相沢病院)と女子団体追い抜きは、金メダルの可能性大。小平は今季世界記録をマークした1,000mでもメダルの有力候補で虎視眈々と2冠も視野に入れている。女子1,500mの高木美帆(日本体育大学)も好調を持続しており、本番でベストを出し切って、少しでも良い色のメダルを狙って欲しい。

W杯最多通算53勝の実力を考えれば、金メダル有力候補間違いなしと言われるのがノルディック・スキー・ジャンプ女子の高梨沙羅(クラレ)。しかし、ライバルの追い上げと自身の調子がなかなか上がらない現状では盤石とは言い難い。チームメイトの伊藤有希(土屋ホーム)もメダル圏内だけに、競い合って2人そろっての表彰台となるか。更には、ノルディック複合の渡部暁斗(北野建設)が個人ラージ・ヒル、フリースタイル・スキーの女子ハーフ・パイプでは世界選手権を制した小野塚彩那(石打丸山スキークラブ)、男子モーグルの堀島行真(中京大学)などがメダル有力候補として世界に挑む。

美人アスリートとしても注目の高梨沙羅選手
美人アスリートとしても注目の高梨沙羅選手

1月10日付のグレースノート社の最新データによると、オーストラリアは平昌五輪の仮想メダル・ランキングで全体14位。日本の10位には及ばないものの、金2・銀1・銅1の内訳で計4個のメダルを獲得と予想されている。オーストラリアのメダルの有力競技はというと、冬季五輪や世界選手権などの国際大会で安定的な強さを見せるスノーボードとフリースタイル・スキー。その中でも今大会の金メダル最有力なのが、17年の世界選手権を制して17/18年シーズンのワール・ドシリーズでも既に2勝を挙げているモーグル女子のブリタニー・コックス。そして、195センチという長身の世界王者スノーボード・ハーフパイプ男子のスコッティ・ジェームスも十分にチャンスがある。前回ソチ大会の旗手を務め、メダルの期待を背負いながら準々決勝で涙を飲んだスノーボード・クロス男子のアレックス・“チャンピー”・ピューリン、彼も30歳で迎える自身3度目の五輪でのメダルを虎視眈々と狙っている。

“お約束”注目の美人アスリートは?

夏季、冬季を問わずにここ数大会の情報記事を執筆してきたが、それらの記事掲載頻度はちょうど2年に一度。そんな頻度でしか載らない記事の毎回の「お約束」。そう、大会の華「美人アスリート」の紹介だ。本記事前半がどうしても少々暗い話題になってしまったので、最後は華やかにという趣旨でお許し頂きたい。

日本選手団を実力でもけん引するメダル候補者としても既に紹介した高梨沙羅は、ここ数年であどけなさが抜け、すっかり“女王”の貫禄。メディアの露出も増えるなど、日本女子選手随一の実績と美貌を兼ね備えた絶対的存在。

屋外の競技ではゴーグルで顔が隠れてしまうケースが多い冬季五輪だが、室内競技はその心配がない。“氷上のチェス”カーリングは、実は知る人ぞ知る美女出現度の高い競技として知られる。カナダのスキップ、レイチェル・ホーマンと、前述の問題で出場は微妙だがロシアのアンナ・シドロワがそのカーリング美女の双璧とされるが、個人的にはスウェーデンのスキップ、アナ・ハッセルボリを推したい。カーリング以外では、忘れてならないのがスノーボード・ハーフ・パイプのノルウェー代表でその見目麗しい美貌と実力で人気のシリエ・ノレンダル。20歳で臨んだソチ大会で注目され、その後も確実に成長を見せてきただけに実力でも観客を沸かせそうだ。

今回の平昌大会は、開幕までに確かにさまざまな問題が発生した。しかし、一度幕が開けば、世界の選りすぐりの選手によるレベルの高い戦いで数多くのドラマが生まれることだろう。一回でも多く日の丸とオーストラリア国旗が掲揚され、『君が代』と『アドバンス・オーストラリア・フェア』が響き渡ることを期待したい。

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