Japan Foundation Sydney ジャパンファウンデーション・シドニー

企業研究

多文化共生の国で
新たな日豪交流を創造する

1972年に外務省所轄の特殊法人として発足した国際交流基金(ジャパンファウンデーション)は、国際文化交流の公的専門機関だ。同組織は2003年10月に独立行政法人化し、現在、東京本部と京都支部、2つの附属機関(日本語国際センター、関西国際センター)、海外19カ国・20都市・21の海外拠点をベースに活動している。シドニー市内のオフィスに、今年5月に就任したばかりの竹本千春所長を訪ね、豪州での事業指針について伺った。
写真:シドニー事務所が入るチフリー・タワー


「豪州は2006年の調査で日本語学習者の数が36万7,000人。この数は世界第3位ですが、2,200万人という全人口の中での割合で言えば、実に50人に1人が日本語を学んでいることになる。この割合は堂々の世界第1位なんです」。1977年に開設し、豪州での日豪の文化芸術交流、日本語教育の推進、日本研究・知的交流の3分野を主な事業とするジャパンファウンデーション・シドニーの竹本所長は、この日本に対する関心の高さがオーストラリアの大きな特徴と言う。
 同事務所はシドニー市内中心部、ハンター・ストリートとフィリップ・ストリートが交差するコーナーにあるチフリー・タワーに、日本語図書館やギャラリーを有するオフィスを構え、約20人のスタッフが上記3事業を展開している。

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「ワンダーバス・ジャパン」のクルーたち


文化芸術交流

 世界各地で日本の漫画、アニメ、Jポップ、現代文化、若者文化に対する関心が高まりつつある中、それに伴って背景にある伝統文化についても関心を持つ人が増えている。また、文化芸術を通して日本の「こころ」に興味を抱く人も増えている。それらの人々の欲求に応えるためのジャパンファウンデーションの主力事業が、文化芸術交流事業だ。  文化人や芸術家にとどまらない市民レベルを含めた人物交流、造形美術・舞台芸術・映像メディア・出版など幅広いジャンル、また伝統芸術から現代アートまで多岐にわたる分野の日本文化の紹介活動が、国境を越えた深い文化理解や真の国際交流として結実している。
「日本文化、豪州文化に触れることをきっかけに、互いに相手の国の人について知りたい、理解したいという気持ちが生まれ、育つことが重要」と竹本氏。ジャパンファウンデーション・シドニーは、今年6月に開催された「シドニー映画祭」への日本映画の出品や監督招聘のための助成、隔年開催の一大現代アート展「シドニー・ビエンナーレ」への日本人アーティスト招聘といった国際交流基金本部が行う事業への協力のほか、現在開催中の若手豪州人芸術家育成のための企画展「facetnate!」、今年で12回目を数える「日本映画祭」など独自の文化芸術交流事業を通して、豪州人のさらなる日本理解に努めている。

日本語教育
 また、同機関は「日本語」を日本文化の枠としてとらえ、その国際化を推進している。  竹本所長は、「幼少から日本のアニメや漫画に親しむことで日本語に興味を持つ人もいれば、学校で日本語を勉強させられて日本の文化や社会に興味を持つ人もいる」と説明。文化芸術交流と日本語教育は車の両輪に例えることができ、真の国際交流には日本語教育の推進は欠かせないと語る。
 同事務所の活動としては、日本語を教える豪州人教師がためになる楽しい授業を行い、生徒が日本語や日本文化にもっと関心を持つように支援することが主。教師に対する研修、教材制作の支援、日本語能力試験や日本語弁論大会の実施など多岐にわたる。  また、05年からは日本語教育のモデル講座として社会人や主婦などを対象に日本語講座を開設しているほか、今後のプロジェクトとして、日本語を学習する高校生に日本人や日本文化に触れる機会を提供するための「在豪日本人宅へのホームステイ・プログラム」といったユニークな企画も進めている。

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「ワンダーバス・ジャパン」のイベントの様子

日本研究・知的交流
「海外で行われる日本研究は、日本人や日本社会への理解を深めるだけでなく、それぞれの国と日本との良好な関係を維持・発展させるもの」との考えから、同機関は、海外の日本研究者に対する奨学金供与など、研究機関への支援を行っている。それと同時に、「安全保障」「環境」「移民」「女性」など世界に共通する課題への理解を深めながらこれらを解決するための研究への助成といった、「知的交流」の企画・実施・支援をしている。
 ジャパンファウンデーション・シドニーは、オーストラリア国立大学、シドニー大学、NSW大学など、在豪大学にある約30の日本研究機関が計画する、会議や研究事業に資金的助成をし、共同事業も行うほか、日本研究の学者や博士課程の学生に対する、日本での研究活動のための日本招致支援を行っている。また、反対に日本の学者や研究者が豪州に来て行う講演会などの活動も支援しており、「人物交流のプログラムが核」(竹本所長)と言う。
2006日豪交流年の実績
 日豪友好協力基本条約の締結30周年を記念して2006年に実施された日豪交流年では、年間を通じ日豪両国で1,000を数える記念交流事業が行われ、国際交流基金は両国大使館や領事館ととともにこれら事業実施に主導的な役割を果たした。
 その中でジャパンファウンデーション・シドニーは、和太鼓や津軽三味線などの音楽公演、日豪両国の国際協力の可能性を検討した学術フォーラム、日本現代美術展「Rapt!」、豪州地方を巡回する総合的日本文化紹介キャラバン「ワンダーバス・ジャパン」など、数多くの事業を豪州で実施、好評を博した。
 “現在の日本文化の特徴をどう捉え、豪州でどう提示するか”をテーマに企画された現代アート展「Rapt ! 」は、日豪の若手キュレーター同士が交流しながら展覧会を企画するという、プロセスそのものを重視した野心的な美術交流事業だった。この事業を通じて生まれた日豪のキュレーターやアーティストのネットワークは、その後に企画された新たな展覧会やコラボレーションに生かされている。
 また、「ワンダーバス・ジャパン」は、日ごろ日本文化に接する機会が少ない地方都市の子どもたちと直接交流することを目的に、日本文化を紹介するためのクルーがキャラバンに乗り込み、QLD州の田舎町を2週間にわたって巡回した。ボランティアのクルーによって企画された和太鼓、踊り、折り紙、書道、茶道などのワークショップやクイズ大会などは、参加者が合計9,000人にも上り、こちらも大きな成功を収めた。
 豪州の各地で日本語を教える日本語教師を支援するために企画された「Learn And Teach Japan」では、日豪交流年実行委員会の一員として協力。オーストラリア人の日本語教師48人を日本に招いて行われた日本語研修や各種の文化体験プログラムをコーディネートして、参加者に日本文化に直接触れる機会を提供した。

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企画展「Facetnate!」に参加した若手豪州人アーティストら

今後の展開
 そして、日豪交流年で大きく打ち上げられたこれらの花火の勢いは、現在でも衰えていない。中でも今年11月に開催する「第12回日本映画祭」は、日本で公開されたばかりの人気映画十数本を公開予定で、今年はシドニーだけでなくメルボルンでも規模を大幅に拡大し大々的に開催する。また、キャンベラのクエスタコン国立科学技術センター設立20周年記念を祝して行われるプログラムの1つとして、からくり人形師・9代目玉屋庄兵衛氏を日本から招き、ワークショップや公演を通し、伝統的なからくり人形のメカニズムと現代ロボット工学との関係を考察するプロジェクトも進行中だ。
 竹本所長はオーストラリアで予定されているこれら諸活動に意欲的だ。
「来年は現代美術のオリンピックとも言えるベネチア・ビエンナーレがありますが、その4人の豪州代表のうちの1人は日本人。この国の寛容さ、多文化共生の土壌に、さまざまな可能性を感じます。
 この国で活動する日本人芸術家は多く、また日本に何らかの影響を受け活動している豪州人芸術家も少なくない。つまり、豪州における両国関係は、ただ単に自国文化を相手に紹介するという“互いの自己紹介”の段階を既に超えているんです。
 両方が混ざり合うことでよりおもしろいものができたり、何かを一緒に創ったりという、世界の文化をより豊かにするためのきっかけになるような活動を、語学、文化芸術、日本研究などさまざまな分野で支援していき、国籍や分野を越えて新しいものが創造されていく。交流基金はそのお役に立てればと願っています」


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竹本千春所長

1982年国際基督教大学卒。同年、国際交流基金に入所。93年ローマ日本文化会館の副館長、97年アジア・センター知的交流課長、映像出版課長、情報センター部長を経て、2008年5月より現職
<竹本所長に聞く10の質問>
①座右の銘:一期一会
②現在読んでいる本:『カラマーゾフの兄弟』フョードル・ドストエフスキー著、亀山郁夫訳
③オーストラリアの好きなところ:多文化共生、オーストラリアに何かを求めてきた人々に平等なチャンスを与えてくれる点
④外から見た日本の印象:日本もまだまだ可能性がある。特に女性と熟年をもっと活用して、外国人が訪れたい、住みたいと思うような魅力ある国を目指すことでもっと良くなるのでは。
⑤好きな音楽:モーツァルト、ヴェルディ、ピンクフロイド
⑥尊敬する人:クオパオクン(シンガポールの劇作家)
⑦有名人を3人夕食に招待するなら:宮崎あおい、オダギリジョー、浅野忠信
⑧趣味:演劇、映画、旅行
⑨将来の夢:エミリー・ウングワレーを育んだアボリジニの大地「ユートピア」に行ってみたい。
⑩カラオケの十八番:歌えません!

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