日豪プレス・メディア体験プログラム2019近畿大学生編①

日豪プレス・メディア体験プログラム2019
近畿大学生がシドニーで記者体験

9月末から11月上旬の6週間にわたって、近畿大学の学生6人が日豪プレスの「メディア体験プログラム」に参加した。同プログラムは学生たちに実際に編集部の一員として取材活動を行ってもらい、それを記事に仕上げるところまで指導するというもので、将来のキャリアに向けて貴重な経験を積めるということで好評を博している。今回、学生たちは日本政府観光局シドニー事務所、国際交流基金シドニー事務所、NSW大学の3カ所を取材。本特集では学生たちが完成させた記事をプログラムの成果物として掲載していく。

日本政府観光局シドニー事務所インタビュー

シドニーを拠点に日本の魅力を豪州へ

 2018年には年間5万52,440人ものオーストラリア人が訪日するなど、海外旅行先としてオーストラリア国内で7番目に人気のある日本。最近では2019年ラグビー・ワールド・カップの開催国として世界の注目を集めた。そんな日本の魅力を紹介し、外国人・旅行者の誘致活動を実施している日本政府観光局(JNTO)シドニー事務所の田中陽子氏と田中麻里香氏に業務内容やオーストラリア人に人気の観光地などについて話を伺った。(取材・文:宮城究、草刈郁美、久保美友季、髙松優里)

オーストラリア人を日本へ向かわせる窓口に

――主な業務内容を教えてください。

田中陽子(以下、陽子):オーストラリアの方を日本に誘致するようなプロモーション活動などをしています。例えば、オーストラリアを拠点とするインフルエンサーにインスタグラムを通して日本の良さを伝えて頂いたり、商談会などを企画しています。商談会では日本の自治体やホテルなど民間の方々とオーストラリアの旅行代理店の方々をマッチングさせることで、旅行会社が作るツアーを行う際の新たな旅先に入れてもらうなどといった成果を期待しています。更には教育旅行で訪日していただけるような事業展開も行っています。

――インスタグラムをどのように活用されるのですか。また、どのような反響がありますか。

陽子:インスタグラムを利用する場合には事前にインフルエンサーと話し合いをした上で私たちがターゲットとしている場所に行って頂きます。そこで彼らの視点から、良いと感じたシーンやものを撮影し、インスタグラムに投稿してもらいます。写真を我々のものとして活用させて頂く場合もあります。投稿後はこんなものが日本にあったのか、ぜひ行ってみたい、など大きな反響がありますね。

――JNTOの事務所は世界中にいくつあるのでしょうか。

陽子:ここオーストラリア以外に韓国や中国、アメリカ、フランス、イギリスなど世界21カ所に事務所があります。私たちの担当地域はオセアニアで、オーストラリア国内ではシドニーの他にメルボルンやブリスベンなどでも活動しておりますし、ニュージーランドも担当エリアに含まれます。引き続きオセアニア・エリアの訪日プロモーション活動の支援拠点として頼りにして頂ければうれしく思います。

オーストラリア人の日本での過ごし方

――訪日オーストラリア人の数が最も多い時期はいつですか。

陽子:日本を訪れるオーストラリア人の数が増えるのは12月(6万3,608人)、1月(8万1,063人)といった雪の降るシーズンで、特に1月が多いです。オーストラリアではスクール・ホリデーと重なる時期になりますので、上質な雪を求めて家族で日本に訪れる方が多くいます。

田中麻里香(以下、麻里香):約半数以上が初訪日という統計も出ていますが、中にはリピーターもいらっしゃいます。初めて日本を訪れた方の満足度が非常に高いという統計も出ているので、今後リピーターになってくださる可能性も高いのではないかと思います。

――逆に訪日オーストラリア人の数が減少する時期はいつですか。

陽子:7月(3万4,873人)や8月(2万7,000人)の夏のシーズンは訪日オーストラリア人の数が落ち込んでいます。7月はオーストラリアの学校も休みなので、本来はもう少し訪日者数が増えてもいいと思いますが、この時期はヨーロッパのベスト・シーズンでもあるので、日本よりもヨーロッパ各国に訪れる人が多い傾向にあります。また、日本の「夏」に対するイメージがまだオーストラリアの方には定着していないという点も影響していると思います。この点は今後の我々の課題ですね。

――オーストラリアの方は平均どのくらいの期間日本に滞在されますか。

陽子:統計上での滞在日数の平均は13.3日です。しかし、統計にはトランジットの方も数字に含まれているので、観光客の実際の滞在日数は2週間以上だと思います。オーストラリアは日本に比べて比較的長期間の休みが取りやすく、皆さん2週間から1カ月間のまとまった休暇を取られます。オーストラリア人は、休暇はしっかり取るものという意識を持っているため、比較的長期間の滞在が可能になるのです。

――現在、日本旅行がオーストラリア人の中でトレンドになってきていると感じますか。

麻里香:日本に行かれる方は毎年増えています。オーストラリアにはない、“日本ならではのもの”に惹かれる方が多いようです。日本ブームが起き始めている背景には、航空路線が増えて交通の利便性が高まっているという航空業界の影響も見受けられます。日本人気も後押しし、今年はANAのパース便、そして来年にはヴァージン・オーストラリアのブリスベンの就航など新たな路線も増便されます。

――オーストラリア人から見ると日本人はどのように映るのでしょうか。

麻里香:私たちからすると、オーストラリア人も本当に親切だなと思いますけど、オーストラリア人も「日本人は本当に優しい」と言ってくれますね。

――平均滞在日数に加え、日本での平均消費額も高いと聞いています。

陽子:日本国内での1人当たりの消費単価が世界で一番高いのがオーストラリア人で、航空券を除く、滞在のみで平均23万円ほど消費しています。中国人の爆買いとはまた違う消費の仕方で、バランス良く食事や宿泊、交通などにお金を使われる方が多いですね。

――日本で人気のエリアはどこにありますか。また、その理由は何でしょうか。

陽子:初めて日本に来る方がまだ多いこともあって、いわゆる“ゴールデン・ルート”と呼ばれる「東京」から入って、東海道新幹線沿いに「京都」「大阪」「広島」と巡るルートが一番人気があります。他の国から来る観光客と違うのは、長野や北海道などスノー・スポーツで行くようなエリアにもよく行く点です。

――外国人の方にプロモーションするエリアはどのように決めているのですか。

陽子:私たちは地方プロモーションというやり方を採用しています。「大阪」だけとか、「東京」だけとか、個別の都道府県を勧めるよりも、近畿地方、関東地方などと、エリアを巡るルートをお勧めしています。また、バランスを見て時期に応じて推していく地域を変えたりもします。一方、外国人の方にあまり知られていない日本の良い場所を見てもらいたいという気持ちもあります。しかし、この事務所を訪れるお客様の要望をまず第一に、現地の方々の目線でプロモーションを展開することを大切にしていますので、常に調査を続け、それぞれの市場にあったやり方に合わせるようにしています。そして、新しい提案を混ぜながら人気ルートの提案を始め、多くのルートの候補を出すようにしています。

日本で行われるイベントに向けたプロモーション

――日本ではラグビー・ワールド・カップが盛り上がりましたが、オーストラリアから訪れた観戦者はやはり多かったのでしょうか。

陽子:訪日者数は前年度の同月に比べて、通常10パーセント、プラスで推移している流れの中で、先月は22パーセントと大幅に伸びているため、ワールドカップの影響は大きかったと考えられます。

――2020年に東京オリンピックが開催されますがそれに向けて何かプロモーションはされているのですか。

陽子:東京オリンピックに特化した特別なプロモーションというよりは、東京オリンピックで東京や日本への関心が高まりますので、その機会を活かしたプロモーションを考えています。観光客が集中し過ぎないよう、地域、季節の分散化を目指し、日本全国の魅力を広めていこうと考えています。実際に東京オリンピックに行くという方も見受けられますが、具体的な人数はオリンピックが終わらないと分からないですね。

――最後に、読者にひと言お願いします。

陽子:オーストラリアの方に新しい日本の魅力を知って頂けることをとてもうれしく感じています。また、日本の自治体の方々がオーストラリアに目を向けて下さることで、オーストラリアの魅力もまた知って頂けるので、それもうれしく思っています。私たちは政府機関ではありますが、今後もいろいろな企業や自治体との関わりを大切にしていきたいです。また現地に住んでいる日本人1人ひとりが日本のプロモーションができるという意味では私たちJNTOも仲間だと思います。“チームJAPAN”という気持ちで一緒に日本の魅力を伝えて頂けると非常にうれしく思います。

田中陽子(たなかようこ)
プロフィル◎アメリカの大学で観光学を学んだ後、JNTOに入構。2017年までシンガポール事務所勤務。その後、東京の人事グループ・マネージャーを経て、2019年7月からシドニー事務所所長に就任。

田中麻里香(たなかまりか)
プロフィル◎立命館アジア太平洋大学卒業。高校生の時にニュージーランド、大学生の時にスウェーデンに留学し日本の良さに気付き、それを海外の人に知ってもらいたいという思いからインバウンド業界を目指した。シドニー事務所次長

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