教育特集2021 オーストラリアと日本の教育の違い─子どもをバイリンガルに育てるには

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異なる文化・言語を持つ人びとが多く暮らす多民族国家・オーストラリアでは、幼いころから個性や自主性を尊重する教育が主流となり、教育制度の面でも多くの選択肢がある。子どもの成長に合わせた最適な「学び」を選ぶためにも、事前に選択肢を知っておくことは非常に重要だ。本記事では、日本の教育制度との比較を交えながらオーストラリアの教育制度について紹介し、併せて子どものバイリンガル教育について解説していく。(監修:内野尚子)

オーストラリアと日本の学校制度の大きな違い

連邦国家であるオーストラリアでは、教育制度は州ごとに異なります。NSW州の大学入学までの教育制度は、就学前教育、準備教育(キンダーガーテン:通称キンディー)、初等教育(プライマリー・スクール)、中等教育(ハイ・スクール)に分かれ、就学前教育は日本の幼稚園や保育園、プライマリー・スクールは日本の小学校、ハイ・スクールは日本の中学校及び高等学校に相当。オーストラリアでは日本のように学年が小学校、中学校、高等学校で区切られておらず、初等教育のイヤー(Year)1から中等教育のイヤー12までの12年間を通して「イヤー○」という呼び方をします(義務教育期間はイヤー1からイヤー10)。

法律では6歳になるまでに小学校に入学しなければなりませんが、キンディーは必ずしも行かなければならないわけではありません。日本は4月から始まり、3月までの3学期制ですが、オーストラリアは、新学期は1月末(または2月初め)から12月までの4学期制。各学期9~10週に当たる期間に2週間のスクール・ホリデーがあります。オーストラリアでは、小学校入学の時期を保護者が選べるので、同じ学年でも2歳近く年齢の違う生徒がいます。

日本のような入学式、始業式、終業式はありませんが、学年の終わりに生徒を表彰する日(プレゼンテーション・ナイト)があります。また、アカデミックに秀でている子どもたちのために、初等教育にはOCクラス(Opportunity Class)、中等教育ではセレクティブ・ハイスクールがあります。

オーストラリアの教育では、統合教育として各教科で学んだことを深めるために、いくつかの教科を関連させた学びの機会を多く設けます。課題を調べてまとめ、発表するというアクティブ・ラーニング形式が多く、グループごとに机を配置し自由に発言できるリラックスした雰囲気が特徴です。

日本は先生が教えるというスタイルが主流で机の並びも全員が前を向くスタイルが多いですが、2020年からの新しい教育要領では小学校で英語とプログラミングが取り入れられ、各教科でアクティブ・ラーニングも取り入れられるようになりました。

長所と短所

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オーストラリアの教育の長所は、課題を自分で調べ、アウトプットするアクティブ・ラーニングによって勉強した分野について、深く理解すると共に自分の考えを持ち、相手に伝わるように発言する力を養える点です。幼稚園から人前で話す機会があるため、自信を持って発言できるようになる子どもが多いです。

実践的な課題も多いので、社会で役立つような学びができるでしょう。小学校3年生ぐらいからパワーポイントを使う、各学校にコンピューター・ルームがあるなど、テクノロジーを利用した授業も日本より多いでしょう。日本の長所は、全生徒に配布される教科書に沿って勉強することで、学童期に必要とする基礎知識を広く満遍なく学べる点です。

特に算数は積み上げ式で学ぶので四則計算など基礎がしっかり身に付き、海外だと算数は良い成績が取れるということをよく聞きます。記憶力が必要な学びも多く、覚える分野の勉強が得意になる傾向があります。

オーストラリアの教育の短所は、先生の得意・不得意、アプローチの仕方によって学びの内容、質にばらつきが出てきやすい点でしょう。小学校のうちは教科書がなく、クラスによって学ぶ時期や速度が違うため今何を習っているのか、これからどんなことをいつ学ぶのか、日本で教育を受けた保護者には分かりにくくサポートしにくいでしょう。

特に算数に関しては、いろいろな要素を混ぜながら(例えば、1、2年生でも掛け算や割り算の要素が出てくる)教えていくので生徒の理解度に差が出やすいようです。

日本の教育の短所は、教科書に沿って内容を全て網羅しなければならないため、生徒の個性や得意分野を伸ばす、深く追及するという学び方をするのが難しい点です。また、インターネットやコンピューターを使ったレッスンがあまり進んでいないため、コロナ禍では教師たちも大変苦労しているようです。

子どもをバイリンガルに育てることは難しい?

どのレベルを求めるかにもよりますが、日常会話をこなせるレベルではなく、きちんと文化も理解し、ビジネス・シーンなどでも違和感のない日本語を話せるバイリンガルに育てることは自然には難しいことです。自然にバイリンガルになれたとおっしゃる方もいらっしゃいますが、保護者がそうなれる環境を作ってあげていたというのが実際のところだと思います。

補習校に通わせる、日本語での習い事をする、家で日本語を使って遊ぶ、日本語の絵本を毎日読み聞かせる、日本への一時帰国、日本の大学に行かせるなど、保護者がそのような環境を作ってサポートしてきたからこそ実現できるものです。

日本にいたら多くのお子さんは日本の学校に行き、四六時中、日本語や日本文化に触れています。だからこそ、日本文化への理解を深めながら、日本語能力を伸ばしていけます。しかし、オーストラリアに暮らしていると、日本語や日本文化に触れる機会は圧倒的に少なく、たとえインターネットで情報を得たとしても、実際に触れて実感することとはずいぶん違います。

どれだけ日本語や日本文化に触れるか、どれだけ興味を持つ機会を与えられるかが鍵になるでしょう。

セミリンガルに陥らないために

セミリンガルという言葉がありますが、これは母語も第2言語も中途半端な状態になることを指します。単純に言語力の問題ではなく、どの言語でも年齢相応の理解力がないという状態になるため、非常に深刻な状態です。

年齢相応の理解力がないと社会に出た時、例えば家を借りる時の書類が読めない、契約内容を理解できないというようなことも起きて社会生活が難しくなります。

以前、日本の国立国語研究所のセミナーで興味深い話を聞きました。日本に移住したブラジル移民の2つの家族の事例に関する内容で、どちらの家族にも日本の小学校に通う男の子がいました。

一方の家庭は学校の宿題をポルトガル語(ブラジルの母語、両親の母国語)で教え、もう一方の家庭は両親がおぼつかない日本語で教えました。しばらくすると、2人の男の子に学力の差が出てきたそうです。

ポルトガル語で教わった子は日本語で学校の勉強を理解し、家ではポルトガル語で両親と会話。もう1人の子は日本語での学校の勉強についていけなくなり、ポルトガル語もできなくなって両親との意思疎通もできなくなったのです。つまり家庭では、保護者が自信のある言語で接するのが大切だということです。

バイリンガルに育てるのはとても素晴らしいことですが、言語が両方中途半端になるくらいであれば、年齢相応の国語の力をつけること、1つの言語で1本の柱をしっかり作ることの方が大事です。

バイリンガル教育、3つのポイント

バイリンガル教育で重要なことは大きく3つあると思います。

1つ目は、保護者の方が将来自分の子どもにどうなっていて欲しいのかを考えることです。言葉の問題だけではなく、将来どこに住むことを想定しているのか、大学、そして仕事はどの国ですることになりそうか、日常会話・ビジネス会話など、どのレベルでのバイリンガルを求めるかなど、子どもの将来像を想像してみると、逆算してどのような準備をしたら良いか見えてくると思います。

2つ目は保護者がバイリンガルに育てたいという意識を持ち続けることです。そうすることで、子どもとどう接するか、どのようにアプローチしたらいいかなどを日々考えることになり、毎日の行動にも現れます。

3つ目は、2言語、またはそれ以上の言語がある環境を「当たり前」にすることです。バイリンガルの環境を当たり前にできれば、親子ともに精神的負担が少なくなるでしょう。

まとめ

オーストラリアで生まれ育った子どもや、小さいころにオーストラリアに移住した子どもは、言語だけではなく「日本人として」「日本人だから」「日本では」と、日本で育った大人たちが当たり前に分かっている日本の価値観も全く分かりません。分かって欲しい、知って欲しいことは、保護者が積極的に見せて、触れる機会を作ってあげましょう。

生まれ育った国ではない場所に来た時にご自身が感じた違和感やカルチャーショックを思い出すと参考になると思います。

海外で育った子どもたちのことを日本で育った保護者が理解できないケースもたくさんあります。それらのギャップを埋めるのは対話です。お子さんが小さいころから家族で対話できる雰囲気や時間を作っておくようにしましょう。

オーストラリアの現地校の代表的な行事

■アスレチックカーニバル

日本の行事にあえて当てはめれば運動会でしょうが、日本のものとはずいぶん違い、色々なスポーツにチャレンジするスポーツ大会のようなものです。

■ハーモニー・デー

国や人種など違いを超えてみんなで楽しむ日です。オレンジ色の服や民族衣装を着て学校に行きます。

■イースター・パレード

キリスト教に基づいた行事ですが、主に小学校低学年の子どもたちが「イースター・ボンネット」と呼ばれる帽子をつくって学校内や近所の広場などをパレードして歩きます。

■スクールフェイト

日本でいう学園祭のようなもの。小学校のうちは保護者が中心になって、ハイスクールでは生徒が自主的に、主にファンド・レイジングを目的に屋台などを出して楽しみます。

■アッセンブリー

週に1回、学年ごと、またはクラスごとに集まり、スクール・ホールで歌やダンスなどのパフォーマンスをしたり、発表をしたりなどさまざまです。

プロフィール

うちのなおこ

うちのなおこ

香港駐在6年半を経て、1996年よりシドニー在住。現地デイケアとプリスクールで12年間教師、4年間はAuthorised supervisorを兼務。2003年より8年間日本語補習校にて代表兼教師。2007年、日本語教室Universal KIDSを設立、現在に至る。2019年オンラインスクールJapan World Academy共同設立、保護者向け家庭教育講座を開講

Universal KIDS / Japan World Academy

Tel:0408-002-501
Web:universalkids.com.au1x4jwa.com
Email:info@universalkids.com.au、japan.world.academy@gmail.com

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