2020年3月 ニュース/総合

2月初旬に降った大雨に歓喜する女性消防隊員(NSW州地方消防隊のツイッターの投稿より)
2月初旬に降った大雨に歓喜する女性消防隊員(NSW州地方消防隊のツイッターの投稿より)

森林火災、ようやく制圧

東部で待望の大雨

NSW州地方消防隊(NSWRFS)は2月13日、同州内の森林火災が制圧されたと宣言した。同消防隊はツイッターに投稿した動画で「すばらしいニュースだ。州南部でまだ火はくすぶっているが、全ての火災は抑えられた」と述べた。

昨年末からNSW州を中心に豪東部の広い地域で多発した今回の火災では、全国で33人が死亡し、2,800棟以上の住宅が失われた。英紙「ガーディアン」豪州版(電子版)によると、焼失した森林の面積(火災が普段から頻繁に発生する遠隔地の草原地帯を除く)は770万ヘクタールに達した。最大の被害を受けたNSW州では25人が死亡し、490万ヘクタールの森林を焼失した。

2月に入り、ようやく恵みの雨が降った。シドニー市内の観測所で2月7日~10日の4日間に391.6ミリの雨量を記録するなど東部一帯で記録的な集中豪雨があり、各地の火災が一気に沈静化した。NSWRFSによると、20日の時点で州南部を中心に依然として20カ所以上で火災が発生しているものの、いずれも火の勢いは抑えられており、差し迫った脅威はないという。

自衛隊も援助活動終結

2月7日、シドニー近郊リッチモンド空軍基地で行われた送別会で、航空自衛隊の太田将史1等空佐(右)に記念品を手渡す豪空軍のカール・ニューマン准将(Photo: Commonwealth of Australia, Department of Defence)
2月7日、シドニー近郊リッチモンド空軍基地で行われた送別会で、航空自衛隊の太田将史1等空佐(右)に記念品を手渡す豪空軍のカール・ニューマン准将(Photo: Commonwealth of Australia, Department of Defence)

今回の大規模火災では、海外の消防や軍なども支援に駆けつけた。日本の自衛隊も1月15日から、C-130H輸送機2機と自衛官をシドニー近郊のリッチモンド空軍基地に派遣し、国際緊急援助活動を行った。防衛省によると、自衛隊の輸送機は車両・消火関連機材延べ約11トン、豪国防軍の兵士や消防士、被災者ら延べ約600人を空輸した。火災が収束に向かったことから、2月8日に現地での活動を終了した。

今後は、家を失った被災者や、甚大な被害を受けた農業、旅行者の減少に悩む観光業の支援など復興が焦点となる。NSWRFSは制圧宣言の中で「我々は被災者の復興支援に集中する」と述べた。連邦政府は17日、復興に向けて不足している労働力を補うため、被災地で活動するワーキング・ホリデー・ビザ保持者が、同一雇用主の下で働ける期間の上限を半年から1年に延長すると発表した。

一方、16日には、シドニー市内のスタジアムで被災地支援のチャリティー・コンサートが開かれ、約7万人の観客を集めた。23日には、シドニー五輪公園で州政府主催の犠牲者追悼式典が行われた。

シドニーでは水不足も解消しつつある。同都市圏の水源の貯水率は合計で80.2%(20日時点)まで回復した。シドニー水道局によると、水道使用制限措置は3月1日以降、現行の「レベル2」から「レベル1」に緩和される見通しだ。例えば、洗車時に使用できる水道水の量は現在、バケツ1杯しか認められていないが、緩和後は散水ノズル付きのホースを使えるようになる。


国民的な人気を集めた大型セダン「VBコモドア」の初期型(1978年式=右)と、豪州国内の現地生産車としては最後の世代となった「VFコモドア」(2016年式)
国民的な人気を集めた大型セダン「VBコモドア」の初期型(1978年式=右)と、豪州国内の現地生産車としては最後の世代となった「VFコモドア」(2016年式)

21年までに「ホールデン」廃止へ

米GM、豪NZの車販売撤退

馬車の時代から160年以上の歴史を持つ豪州の老舗自動車ブランド「ホールデン」が、2021年までに廃止されることが決まった。ホールデンに100パーセント出資する親会社の米ゼネラル・モーターズ(GM)が2月17日、豪州とニュージーランド(NZ)での乗用車販売から撤退すると発表したためだ。GMは2017年に豪州での現地生産を終了していたが、販売からも手を引く。豪自動車文化のアイコン(象徴)は名実ともに消滅する。

「160年間の誇るべき歴史において、ホールデンは単に自動車を製造しただけではなく、豪州とNZの産業の発展を力強くけん引してきた」。GMのジュリアン・ブリセット副社長(海外事業担当)は会見でこう述べた上で、撤退の理由について「非常に不安定な右ハンドル市場において、ブランドへの支援によって得られる収益が追加投資に見合わない」と説明した。

GMは同時にタイ市場からの「シボレー」ブランド撤退も発表した。世界の自動車業界が再編の波に飲み込まれる中で、世界的には少数派の右ハンドル市場で、しかも市場規模が小さいオセアニアでブランドを維持するのは持続不可能と判断したという。

VIC州のデザイン・開発拠点も今年中頃に閉鎖する。現在約800人いる社員のうち約600人は失職し、残る200人が修理・点検事業に従事する。同副社長は、豪NZ市場では今後「特殊車両」に特化すると表明したが、詳細は不透明だ。国内に185ある販売店に対しては「適正な支援」を行っていくとしている。

GMの発表に対しては、連邦政府から批判の声が相次いでいる。スコット・モリソン首相は「(GMが現地生産を維持するための補助金として)国民は巨額の税金をつぎ込んできた。にもかかわらず、(17年の現地生産撤退後)ブランド価値が衰えていくのをただ指をくわえて見ているだけだった。そして今になって見捨てるのか」と憤りをあらわにした。

カレン・アンドリューズ連邦産業相も「このような重要な発表を行うのであれば、事前に政府に電話を掛けるなど良識を示すべきだ」とGMの対応に苦言を呈した。同産業相が撤退の話を耳にしたのは、発表のわずか数時間前だったという。

国民車、名実ともに終止符

19世紀に馬具のメーカーとして産声を上げたホールデンは、20世紀初頭のモータリゼーション初期に、米国車の車体に取り付ける外装を手掛けた。第2次世界大戦前に既にGMの傘下に入っていたが、ホールデンのブランド名は残し、豪州の自動車文化を象徴する存在となった。戦後間もない1948年に乗用車の生産を開始。70年代の「HQ」や78年から17年まで生産した「コモドア」などのヒット商品を生んだ。ホールデンはモーター・スポーツでも活躍し、フォードの国産セダン「ファルコン」と共に国民の人気を二分した。

しかし、関税の引き下げや豪ドル高、人件費高騰などを背景に、豪国産車は輸入車に対して次第に競争力を失い、国内生産の採算は悪化した。加えて、近年は消費者の嗜好が変化し、新車需要の中心がスポーツ多目的車(SUV)や小型トラックにシフトしたため、セダン中心の国産車の販売は落ち込んだ。

自動車産業の雇用維持を重視する歴代の連邦政権は、現地生産を続けていたトヨタ自動車、GM、米フォードの3社に多額の補助金を投入し、「つなぎ止め」を図ってきた。一方、自由主義的な観点から「特定の産業の保護に血税を投入するべきではない」との声もあり、13年に政権に就いたトニー・アボット元首相は自動車製造業への財政支援をやめる方針を打ち出した。これを受けて、フォードは16年、GMとトヨタは17年に豪工場を閉鎖。少量生産の一部の特殊車両を除き、自動車製造業は豪州から消えてなくなった。

3社は新車の全量を輸入車に切り替えたが、明暗は別れた。トヨタは順調にシェア首位を続け、フォードも小型トラックが好調で一定の存在感を維持した。一方、ホールデンは海外から輸入した新型コモドアの販売がつまづくなど、ブランド価値の低下とセールス低迷に歯止めがかからなかった。

現在、豪州国内を走るホールデン車の数は約160万台(公共放送ABC)とされる。GMは修理・点検を今後最低10年間は継続するとしている。今ホールデンに乗っている人が困ることは、当面なさそうだ。


「富獄三十六景」の中でも代表的な作品として海外でも知られている「神奈川沖浪裏」。新型パスポートにも採用された
「富獄三十六景」の中でも代表的な作品として海外でも知られている「神奈川沖浪裏」。新型パスポートにも採用された

より安全な新型旅券の発給開始

デザインに「冨嶽三十六景」採用

日本の外務省は2月4日、安全性を高めた新型のパスポート(2020年旅券)の発給を開始した。同日以降に在外公館で発給申請を行う在留邦人にも、新型旅券が交付される。豪州国内での申請手続きの詳細については、最寄りの在外公館のウェブサイトを参照する。

新しいパスポートは、内蔵されているICチップの個人情報の不正読み取りなどを防ぐ機能を強化した。また、偽造防止効果を高めるため、江戸後期の浮世絵師・葛飾北斎の代表作「富嶽三十六景」の図柄を査証欄など(裏表紙、人定事項ページ、ICページなどを除く)に採用した。

10年旅券では、全56ページのうち48ページに「富嶽三十六景」の24作品を見開きで1作品ずつ使用。5年旅券では、32ページに16作品を選んだ。

外務省はホームページで「『冨嶽三十六景』は世界的にも広く知られ、世界遺産でもある富士山をメイン・モチーフとし,まさに日本を代表する浮世絵の1つであることから採用しました」と説明している。


ニュース解説

新型ウイルス、豪経済に追い討ち

中国人のインバウンド・教育市場に打撃

中国・武漢市から中国本土を中心に感染が広がっている新型コロナウイルス(COVID-19)は、森林火災で疲弊した豪州に追い討ちをかけている。連邦保健省によると、2月23日時点で豪州国内で感染が確認された患者数は22人にとどまるが、集団感染が起きた米クルーズ会社の客船「ダイヤモンド・プリンセス号」(横浜港に停泊中)では豪州人乗客に感染が広がった。中国人に頼る観光業や教育産業を中心に、豪州の経済や雇用への打撃も心配される。

横浜港に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」。陰性が確認された豪州人乗客170人は2月19日、連邦政府が手配したカンタス航空のチャーター機で帰国の途に就いた(Photo: Behrouz MEHRI / AFP)
横浜港に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」。陰性が確認された豪州人乗客170人は2月19日、連邦政府が手配したカンタス航空のチャーター機で帰国の途に就いた(Photo: Behrouz MEHRI / AFP)

新型コロナウイルスの豪州国内の感染者数は2月23日午前時点で、QLD州8人、NSW州4人、VIC州6人、SA州3人、WA州1人の合計22人(帰国後に感染が確認されたダイヤモンド・プリンセス号の乗客7人を含む)。豪州国内では人から人への感染は起きていない。同省によると、同日時点の全世界の感染者数は7万7,934人、死亡者数は2,360人に達した。

一方、同省によると、ダイヤモンド・プリンセス号の乗客ら「豪州人47人の感染が日本で確認された」という。感染者は日本国内の病院で治療を受けている。スコット・モリソン首相は17日、陰性が確認された豪州人乗客200人以上をカンタス航空のチャーター機で帰国させると発表した。感染した家族の看病などを理由に搭乗を辞退した一部の乗客を除く170人が19日、ダイヤモンド・プリンセス号を下船して羽田空港でチャーター機に乗り込んだ。ニュージーランド国籍の6人を除く164人が20日、ダーウィンに到着した後、隔離施設に収容された。健康であれば14日後に解放されるが、日本で感染が確認されて治療を受けている47人とは別に、帰国後の検査で新たに7人の陽性が確認された。7人は隔離施設から各州の病院に移送された。

一方、船内での感染の疑いがあるため日本などで入国を拒否され、カンボジアに寄港したクルーズ船「ウエステルダム号」には、豪州人79人と永住権保持者1人が乗船していた。19日時点で、このうち38人がカンボジアを出国し、32人が豪州に帰国した。32人がカンボジア国内に滞在中。乗員4人を含む10人は船内に残っているという。

中国滞在者の入国制限

連邦政府は2月1日、感染を水際で食い止めるため、中国本土で滞在または乗り継ぎで通過した外国人について、中国本土を離れてから14日間、豪州への入国を許可しないと発表した。豪州の市民権と永住権の保持者とその家族は対象外。豪州人の中国への渡航についても、同日、危険度が最も高いレベル4の渡航中止勧告に引き上げた。13日には入国制限措置の延長を発表、23日時点で継続中だ。

また、カンタス航空は1日、中国本土と豪州を結ぶ直行便2便を2月9日から運休すると発表した。航空業界にも影響が広がる中で、豪州にとって最大のインバウンド観光市場である中国からの旅行者急減は避けられない。豪政府観光局(TA)によると、2019年12月までの1年間に豪州を訪れた中国人短期渡航者数は144万2,200人と外国人全体(944万6,500人)の15.3%を占め、渡航者の支出額は123億ドルに達した。森林火災によるイメージ低下で既に打撃を受けている観光業は、新型コロナウイルスの感染拡大でダブル・パンチを受けている。

留学産業への打撃も深刻だ。1月28日付の日刊紙「シドニー・モーニング・ヘラルド」によると豪州の大学に通う中国人留学生は20万人以上とされるが、中国滞在歴のある外国人の入国が制限されたことで、旧正月を中国で過ごした留学生が新学期に豪州に戻れなくなった。2月12日付の英紙「ガーディアン」豪州版(電子版)によると、豪州の学生ビザを保有している中国人留学生約10万人が海外にとどまっていたという。

GDP23億ドル減の試算も

「シドニー・モーニング・ヘラルド」が報じた大手会計事務所プライスウォーターハウスクーパースの試算によると、中国人の観光客と留学生が1年間に豪州に投じる92億ドルの支出が大幅に減れば、豪州の国内総生産(GDP)は23億ドル縮小し、2万人のフルタイム雇用が失われる恐れがあるという。

現時点で新型コロナウイルスの終息時期は見通せない。中国の経済活動がまひすれば、観光業や教育産業などのサービス輸出だけではなく、資源・エネルギーやワイン、畜産物など物の対中輸出も打撃を受け、経済や雇用へのマイナスの影響がさらに深刻化する可能性がある。既に減速基調が続いている経済成長を更に下振れさせることになりそうだ。

11日付の英紙「フィナンシャル・タイムズ」によると、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行による豪GDPへの影響は「マイナス0.1~0.2ポイント程度」にとどまった。だが、当時と比較すると豪州と中国の経済的な結び付きは大幅に強まっている。今回の新型コロナウイルスは「今年第1四半期(1月~3月)のGDPを0.5ポイント程度引き下げる可能性がある」(同紙)という。

感染予防策の徹底呼び掛け

急速に感染が拡大している新型コロナウイルスだが、致死率は過去に流行したSARSや中東呼吸器症候群(MERS)より低いとされる。連邦保健省によると、23日時点で新型コロナウイルスによる中国本土の致死率は約3パーセントだが、中国本土以外では0.9パーセントにとどまる。豪州国内の感染者17人のうち10人の症状は既に回復し、残る7人の様態も安定しているという。

ただ、ワクチンの開発などによって流行が終息するまでには時間が掛かる。現時点の対応策としては、1人ひとりが手洗いやうがいなどの基本的な衛生管理を徹底するしかなさそうだ。

連邦保健省は感染予防策として、①石鹸と水で頻繁に手洗いすること、②せきやくしゃみをする時はティッシュ・ペーパーで口を覆うこと、③他人の体に直に接触しないこと、を挙げている。日本などアジア諸国で一般的なサージカル・マスク(医療用マスク)の着用については、既に感染している人から他人への感染を予防する措置としては有効であるものの、「ウイルスの感染から自分の身を守ることはない」と説明している。

万が一、発熱、せきやのどの痛み、倦怠感などの風邪の症状、息切れなど感染が疑われる症状を自覚した場合、病院で診察を受ける前に必ず電話を掛け、詳しい症状と最近の旅行履歴を医師に伝えるよう呼び掛けている。

症状が深刻な場合の救急電話番号:000
連邦保健省【コロナウイルスに関する問い合わせ電話番号】:1800-020-080
連邦保健省【コロナウィルスに関する注意喚起Web】:health.gov.au/news/health-alerts/novel-coronavirus-2019-ncov-health-alert


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